有間カオル著「魔法使いのハーブティー」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
親を亡くし、親戚をたらい回しにされている少女・勇希は、夏休みを会ったこともない伯父の家で、カフェの手伝いをして過ごすことになった。様々な客のトラブルを解決していく穏やかな伯父の元で、勇希は自分を肯定し、居場所を見出だしていく。

大人と子供の悩みを“少し”解決するハートフルな作品。そんなに数は読んでいないのに、「メディアワークス文庫らしい作品」という印象を受けました。
タイトルに反して、「魔法」は出てきません。店長が言う「読心魔法」も、実際にあるというより、単にそう感じ取ったというだけだと思います。でも、確かに「魔法」のような効果を生むハーブの知識の数々が面白いです。
実際にハーブティーを飲みたくなります。

勇希は時折卑屈過ぎて、読んでいて気落ちするときもありましたが、最後には自分の意志で自分の運命を決め、それをハッキリと口にできる少女に成長したので、ホッとしました。
店長はいい人だけど、40歳になる男が「ふにゃっ」と笑うのは想像すると結構しんどいですね。この表現に限らず、本作は勇希の視点で纏められているためか、全体的に描写は幼い印象です。
店を訪れるキャラクターは、マダム以外は全員最悪の印象からスタートして、次第に素顔が明らかになって受け入れていけるのが面白いです。

全体的には店長とハーブの優しさに包まれるお話なのですが、最終話に登場する伯父だけはまったく救いようのない人物に描かれていて、作品の味とそぐわない気がしました。

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