石和仙衣著「ユニコーンの恋文(ラブレター)」
【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
魔法の世界で、現実世界に連れ出してくれる花婿を待つ最後の乙女カタリアは、迷い込んだ青年エルダーに拒絶されたことを切っ掛けに、魔法の世界を飛び出し、自分で自分の物語を紡ぎ、幸せを見付けて行く。
カタリアとエルダーの恋物語であることは間違いないだろうと最初から確信していたものの、どうやってその結末に持ち込むのか、序章とどう繋がるのかと考えながら、最後まで読まされました。
おとぎ話風の魔法世界「夢の平原」に対し、現実世界は、意外と近代的な社会だったのが面白かったです。もっとも、悪意ある人物がいないので、実際にはおとぎ話の続きのような感じでした。
恋愛小説の面白さは、障害をいかに美味く設定するかだと思います。
一人は魔法の世界の住人、一人は現実世界の住人で、心を失っているという設定はそれなりに良かったと思うけど、エルダーが心を取り戻した中盤以降は、単なるすれ違いと2人の自己評価の低さに、もどかしさよりイライラを感じた面が大きいです。
エルダーの性格自体、心を取り戻す前のツンデレ的な方が好きでした(笑)。
いささか展開のためのご都合設定に感じる箇所や、ユニコーン自身に自分の正体を語らせてしまうなど、見せかたが弱いと感じる箇所もありましたが、いい「少女小説」だったと思います。