百波秋丸著「三ツ星商事グルメ課のおいしい仕事」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
経理部の新人ひなのは、毎夜の飲食費を経費計上する「グルメ課」の実態を暴くため、スパイとして異動する。だが実はグルメ課は「食事の力を使って問題を抱えた社員に解決の手掛かりを与える」という目的で働いていた。その活動が会社の利益になっていると感じたひなのは、グルメ課存続のため働くことにする。そして、グルメ課の活動で生まれた新たな取引をグルメ課で受注するという荒技で、経費以上の利益を生む部署として認めさせる。

「総務部グループリソースメンテナンス課」で「グルメ課」という通称を思い付いた時点で、作者は「やった!」と思ったはず。
その上、グルメ課が行くお店は、実在するお店なのですね。料理のイラスト付きで紹介されているので、実際に食べに行きたくなりました。そう思わせる時点で、テーマに対して成功した作品だと思います。

しかし、続刊には手が出ません。
原因は、主人公にあります。
夕飯に食べ放題の店に行って、満足したので翌日寝過ごして11時出社だとか、取引先の重役に婚約者(偽装)として紹介されているときに、いきなり自分だけお菓子に手を付けるとか、食い気優先で知性が感じられません。入社半年の新社会人ならこんなもの、と思うにしても、端々で妙に新人らしからぬ図太さがあるのです。
そのため、魅力的に感じたり共感することができませんでした。

また、最後の逆転劇に至る設定が、「月菓」のエピソードだけで出来上がっていて、最初の2編は関係してこないのが残念でした。バラバラの要素だから、直接絡められないとは思うけれど、もしこれまでのエピソードがすべて逆転の中に組み込まれていたら、きっと大きな爽快感があったでしょう。

最後に、作中で紹介されているお店を覚え書き。

  • 燻製kitchen(大井町)
  • セルベッサジム カタラタス(渋谷)
  • さぼうる2(神保町)
  • 酒茶論(品川)
  • ゑんぞ RIZZERIA ENZO(浅草橋)

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