犬村小六著「とある飛行士への追憶」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
敵地に残された都市の傭兵飛行士シャルルは、単機で中央海を翔破し、皇太子の許嫁ファナを本国まで送り届ける密命を受ける。敵中を飛ぶ複座偵察機の中で二人は心を交わすが、地上に戻れば身分の壁が二人を引き裂く。シャルルはファナを迎えの飛行艇に渡すと、一人都市へ戻っていった。

元はガガガ文庫ですが、加筆のある単行本版で読みました。
イラストがないお陰で、二人が飛ぶ空の美しさや、ファナの美貌を自分で想像できて良かったと、個人的には思います。

ノスタルジックな雰囲気の作品。
まとめてしまうと非常に単純な筋ですが、古式ゆかしい、結ばれない結末を守ったのが、ライトノベルというレーベルではなかなか偉い判断でないかと思います。
お姫様と身分違いの恋をして別れるという筋は、映画「ローマの休日」的と評されているようですね。それは確かにその通りなのですが、私自身はどちらかと言うと空戦の描写が熱く、そこに引き込まれて一気に読んだ感があります。
そしてゲーマーゆえに、シャルルと敵エース・千々石の一騎打ち、そして終章で生き延びた人の証言を拾っていく辺りに、ゲーム「エースコンバットZERO」を感じました。海猫作戦について、作中活躍していない波佐見真一なる編隊長ではなく、千々石が語っていたら完璧に「ZERO」だったのにと思うと悔しいくらいです。

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