ベルンハルト・シュリンク著 松永美穂訳「朗読者」
【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
15歳の僕は、年上の女性ハンナと恋をした。ハンナは物語を朗読させることを好んでいた。数年後、僕は傍聴した裁判の被告人席にハンナを発見する。やがて僕はハンナが文盲を隠そうとするため、不要な罪を背負い込んでいることに気付き、彼女の自尊心を無視して告発すべきか悩まされる。終身刑となったハンナに、僕は物語を朗読しては録音テープを送る。出所が決まったハンナは、独房で命を絶つ。
タイトルが秀逸。
恋愛小説という触れ込みで読んだので、予想外の展開に驚きました。
どちらかと言えば、戦争犯罪に対してどう向き合うかを問う面の方が強い気がしました。でも、それは私が二人の間を恋愛という言葉で結び付けることに抵抗感があったからかもしれません。親子でもおかしくないような二人の性交渉が描かれていることが、私にはどうしても引っ掛かって、納得できませんでした。
第二次世界大戦で、同様に敗戦国となった日本とドイツですが、戦争責任に対する向き合いかたはだいぶ違いますね。
ナチを支えた親世代に対して、子供たちが「断罪しなければならない」と考えたことは、それ自体の善し悪しはともかく、問題意識を持って歴史を学ぶ動機になったわけで、それは近現代史にほとんど触れない日本とは対照的だなと思います。
ひたすらテープを送り続ける僕(ミヒャエル)の行動に対して、ドイツ人らしいと思ったのが、我ながら面白かったです。