畠中恵著「ちょちょら」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
新米江戸留守居役・間野新之介は、偶然次のお手伝い普請の計画を知る。任命されれば藩が潰れる普請を逃れようにも、藩には金もツテもなく、そうこうする内に他藩にも普請の噂が広がっていく。そこで間野は、すべての藩を巻き込んだ総抜けを企む。企ては老中の知るところとなるが、老中の心配事を取り除くことで、間野は総抜けを認めさせることに成功する。

「不忠臣蔵」で知った「江戸留守居役」のお役目にまつわる小説だということで読んでみました。

面白かったです。
時代小説というにはキャラクターは漫画的だし、同作家の「アコギなのか立派なのか」(2015年5月27日記事参照)と類型的なところも感じましたが、人間関係や個々のエピソードが無駄なく組まれていて、最後までどう結末が転ぶか分からない緊張感がありつつ、どこかおかしみもあって、楽しく読めました。
特に久居藩の岩崎がいい男です。この作品の半分以上は、新之介に鉄拳を加えつつ指導する彼の活躍で成立するといっても過言ではないでしょう。
もっとも、新之介の動機である「兄の死の真相を暴く」というミステリー要素が割とさらっと終わってしまう点は、少し拍子抜けしました。あくまで、話の主軸はお手伝い普請の総抜けになっているからですね。

謎のタイトルについては、折り返しに下記の用語説明があります。

『ちょちょら』
弁舌の立つお調子者。いい加減なお世辞。調子の良い言葉。
東京堂出版 江戸語辞典より

ということは、佐倉聖のような男が言葉一つで江戸城を渡り歩くお話かと思いきや、主人公・間野新之介はいきなり上役から「平々々凡々々」と評されていて、まったく「ちょちょら」ではないという最初の「ハズシ」は良かったのですが、ではなぜタイトルを「ちょちょら」にしたのか、という点は分からず仕舞いでした。

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