テリー・ケイ著 兼武進訳「白い犬とワルツを」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
妻に先立たれた老人サムは、老人扱いする娘たちの世話焼きに苛立ちを感じつつ、どこからともなく現れた不思議な白い犬を友として余生を送る。そうして多くの友人を見送ったサムは、今度は子供たちに見守られ死ぬ。

死と愛を描いた物語。
ミステリアスなところと共に、「古き良き」と冠するような時代のアメリカの田舎感があります。

冒頭の、妻が死んで家族が集まり、子供たちが自分のことを相談しているの分かっていて眠ったフリをしているサムの描写時点では、凄く素敵な雰囲気だと思ったのですが……
残念ながら、その後の展開にまったく惹かれませんでした。
特に、不思議な白い犬が一体なにを象徴しているのか、ということが伝わって来ず、本作のテーマが汲み取れないまま終わってしまったのが残念です。
もう少し大人になって、自分の家族を持ち、死を身近に感じてから評価すべき作品かと思われます。

率直にいうと、主人公サムは、耄碌しているように見えます。
世界の終末が1979年3月10日に来るという牧師に、3月11日の日付で小切手を送ろうと書いたり、本質的にはウィットに富んで面白い人物なのですが、そういった人格面と、老人として我執に囚われることは同時に存在しうると思うのです。
世代的な理由もあって、私は介護する娘たちの方に共感しました。そのため、白い犬のことで幻覚を見ているかのような嘘をついて娘を揶揄う下りなどは、非常に腹立たしかったです。
そういう感想になってしまうあたり、私はまだまだ人間的に成長できていないのでしょうね。

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