モーム著 土屋政雄訳「月と六ペンス」
【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
チャールズ・ストリックランドは、突然妻と子供を捨てパリへ出奔した。才能のない画家として貧乏暮らしをした末、タヒチまで流れて死んだ。後に天才画家と評されるようになった彼の足跡と作品について、作家である「私」が見聞きした限りの事実を書き残す。
小説ではなくルポルタージュだったのか、と誤解するくらい「人間」が描かれている作品。
ストリックランドの絵が観たくなります。中盤にあるストリックランドの絵に関する断片的な情報を繋ぎ合わせて、なんとなくゴーギャンの絵をイメージしたのですが、実際、株式仲買人から画家への転身という設定はゴーギャンをモデルにしているようですね。
しかし、面白かったかと問われると、なんとも不明瞭で悩ましい作品でした。
語り手である「私」が、ストリックランドを追いながら、まったく彼のことが分からないままである、というストーリーテーリングには脱帽しました。
なお、訳は過不足なく、皮肉っぽい台詞もちゃんと読み取れる良訳だと思いました。