M.C.ビートン著 桐谷知未訳「メイフェアの不運な花嫁 英国貴族の結婚騒動」

ジェイン・オースティンが描く英国貴族の世界を、使用人たちの視点から覗き見ているようなラブコメディシリーズの2編収録。
ジャンル的には「ヒストリカル・ロマンス」ですが、このジャンルによくあるエロ小説とは一線を画す、格調高く、でもシニカルな笑いに満ちている、純粋な「お屋敷もの」小説でした。

表題作「メイフェアの不運な花嫁」は、お馬鹿を装っている美女が、孤児院出身かつ文無しの身を隠して名士を掴まえる、計略に満ちた話。
2作目「メイフェア勇敢なシンデレラ」は、溌剌とした少女が好奇心から殺人事件に首を突っ込み、同じ謎を追う放蕩児と意気投合して駆け落ちする話。
若干、展開が急だ、と思うところはあったけれど、どちらも読み応えがありました。
ヒロインは屋敷の借り手なので社交シーズンことに変わり、使用人たちはレギュラーキャラクターという形式です。だから、実際に不運なのは、花嫁候補たちではなく、この屋敷に縛り付けられている使用人たちですね。

物語としても楽しんだけれど、階級社会のあり方や当時の英国の風俗が克明に描かれているので、大変勉強になりました。

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