トム・マクナブ著 飯島宏訳「遙かなるセントラルパーク」

【あらすじ】
アメリカ大陸を横断するウルトラマラソン「トランス・アメリカ」が始まった。2000人を超すランナー達が、賞金や名誉を目的に走り出す。3か月に及ぶ大会は、途中様々な問題や妨害を迎えるが、関係者やランナー達の熱意と才覚で乗り越えて行く。

私が読んだのは2014年復刻版ですが、訳者後書きまで含めて、内容は1986年版と変わらない模様です。
訳は特別良くもないけれど、初版年代を考えれば悪くない感じ。序盤、人物の名前が頭に入っていないのに、ファーストネームで書かれたりファミリーネームで書かれたりしている表記の揺れは、地の文に関しては統一されていた方が読みやすかったかな、と思うけれど、これは好みもあると思います。

マラソンするだけではなく、様々な問題が起こって対処したり、後編では大会を維持する資金稼ぎのため途中途中で賭け事が行われ、馬と競争させられたりして、飽きさせません。
それでいて、本筋の「トランス・アメリカ」という芯はまったくブレることがなく、すべての要素が大会の進行に集約されています。

キャラクター達も非常に個性豊かで、こんな仲間と一緒に走りたくなってきます。
主人公格のドク・コールなどは、禿げた中年という外見設定でありながら、困難を乗り越え走り続ける姿勢が格好良い!
ランナー達だけでなく、周囲の人物も魅力的です。特に主催者であるフラナガンは、正に山師という感じで胡散臭い人物なのですが、貧民から巻き上げることはしないチャーミングな男で、次第に応援したくなるという凄い人物造形でした。

最後の方は、残りページ数が少ないのでゴールテープを切る人物はボカして終えてしまうのでないかと心配していましたが、ちゃんとゴールは描かれます。
ランナー達のその後が分かる「追記」という名のエピローグ章も含めて、ノンフィクション作品かと勘違いするほどの、虚構と現実感のマッチング具合に酔って、気持ち良く読了しました。

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