斎藤惇夫著「冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」
【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
町ネズミのガンバは、イタチに襲われる島の仲間を助けようと立ち上がる。その勇気に心を動かされた15人が従い、彼らは夢見が島へ渡った。しかし島の仲間と合流したところをイタチに追い詰められ、海での玉砕を覚悟する。そこに海鳥の助力を求めにいったガンバが戻り、イタチを打ち倒すことに成功する。戦いの犠牲を胸に、今や冒険者となったガンバは島を旅立った。
テレビアニメ版のビジュアルはなんとなくイメージがあるのですが、内容はまったく記憶しておらず、こんな過酷で切ないお話だったのかと驚きました。
序盤はいかにも児童文学という感じだったのが、島に到着してしばらくする内に、島の高倉で比較的安全に暮らしていたネズミたちと衝突した辺りから緊張感が高まり、イタチに追い詰められていく様や、無情に犠牲者が出ていく戦いで手に汗握りました。
最大の戦いの場に主人公がいないというのも、思い切った構成ですよね。それまではガンバに焦点が当たっているけれど、この辺は群像劇のようにも見えました。
「ひとりとふたり」が死ぬ、というサイコロの警句の通りの終わりに、なるほどと唸りました。
仲間からの被害者がオイボレになることは予想していたけれど、もう一人がボーボというのは意外でした。だが、こういう足手まといのように思われている人物こそが、人間関係を円滑にする掛け替えのない存在だったりするんだと思います。その人物が生きている内には気付かなかったり、素直に認められないものですが……。