道尾秀介著「カササギたちの四季」

【あらすじ】
リサイクルショップで働く日暮の職場では、季節が一巡りする度に、小さな事件が起こる。その都度、店長・華沙々木が披露する迷推理に合わせ、密かに証拠を仕込み、日暮は華沙々木に憧れる少女の菜美のため、ちょっと真実を作り替えるのだった。

ポンコツなホームズ役の為に、ワトソン役が頑張るお話。
同作者の「月と蟹」(2016年10月25日記事参照)が、凄く上手い作品だけれど重過ぎて合わないと思ったのに対し、これは軽い読み物なので気楽に読めました。

最初のうちは、華沙々木のデタラメな推理を「真実」とすべく偽装工作する主人公に苛立ったのですが、3話あたりから、これは「様式美」だなと理解しました。
毎回、和尚に廃品を買い取らされ、戻ったところで事件が起きて、日暮が密かに仕込んだ証拠品で華沙々木が出鱈目な推理をし、最後に日暮がこっそり真犯人と会って真相を読者に知らせる、という展開がされるのです。
そして毎回こういう構造なのだと思わせておいた上で、四話で、この様式美を少しずつズラす構造にしているのが上手いな、と思いました。

しかし、仲間内での話題の為に偽装するだけならともかく、犯罪行為も犯しているので、主人公の行動はあまり納得いきません。
しかし事件の発端はどれも「誰かを思いやっての嘘」だという、優しい物語なので、意外と読了感は良かったです。

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