土橋章宏著「幕末まらそん侍」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
全藩士に、安中城から熊野神社まで中山道を走る「遠足」が命じられた。ライバルとの対決、遠足に乗じた脱藩の企て、賭など、様々な事情の元に七里強を走る藩士たち。遠足を通じて仲間や家族との絆を得た藩士たちは、謀反を疑う幕府の密偵たちを退治する。

「安政の遠足(とおあし)」という史実を使い、遠足に参加する藩士たちの諸事情や、走る行程は面白かったです。
殿様・板倉勝明が、名君だけれどどこかトボケた味わいがあるのは、「超高速!参勤交代」の作者らしい、と思いました。
ちなみに勝明は、浅田次郎著「一路」(2016年10月16日記事参照)にて、やはり遠足ネタで登場する、やや脳筋な安中の殿様・板倉主計頭(板倉勝殷)の兄なのですね。なんとなく、血の繋がりを感じて面白かったです。

複数のエピソードが語られますが、敢えて時系列ではなく個別のエピソードでまとめられているため、時間軸で疑問を抱く箇所もありましたが、話の筋は追いやすかったです。
ただ、最後の乱闘は必要があったのでしょうか。映画化が進行中だそうですが、時代劇を撮るならやはり殺陣があった方が盛り上がるから、こういう展開にしたのかしら。他にも、最初から映像化を念頭に置いていそう、と感じる面がありました。

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