宝塚宙組 ミュージカル「オーシャンズ11」18:30回(e+貸切)。
2012年星組版、2013年花組版に続く3度目の「オーシャンズ11」。
「ザ・エンターテイメント」としか言いようのない作品で、特別好きな演目ではないけれど、生徒さんを観る、という宝塚の醍醐味に沿った楽しい演目だとは思います。それ故、スターが多い組でないと成立しない作品と思っていましたが、今回は、もしかすると強制的にスターを増やす作品でもあるのかな、と思いました。
まず、オーシャンの仲間になるキャラクターは記号化されていて認識しやすいので、イエン@秋音光やリヴィングストン@瑠風輝など、名前は聞くけれど判別できていない生徒も認識できました。
そして、敵役ベネディクトは、スタートしての登竜門になりつつあります。今回の桜木みなと演じるベネディクトは、「可愛い弟」「手堅い優等生」の殻を破ったと感じました。黒塗りメイクのせいか、男役群舞でも群を抜いて男の色気がありました。
無論、若手枠のライナス@和希そらの美味しさは言うまでもありません。
しかしお話としては、作品的には、長時間かけて準備した「金庫破り」が実は舞台としてはクライマックスでなく、トントン拍子、かつ駆け足に終わってしまうのが少し物足りないですね。
尺がないとは言え、もう少し危機一髪な瞬間を作ってハラハラさせた方が締まるのでないでしょうか。要素は増やさないとしても、ソールの昔馴染みが出てくるところや、バシャーが新顔だと気付かれるシーンにあと一拍くらいベネディクトが考える間を入れ、前後のやりとりと緩急を付けるだけでも変わる気がします。
ーーなどと批評していますが、実際は今公演で退団する蒼羽りくばかり観ておりました。
実は、前回の博多座公演ライブビューイングを観た後、1週間ほど、私はりくを本気で応援するレベルで好きなのかもしれないと悩みました。そして、次作で決断しよう、と決めた数日後に退団の発表があり、博多座での輝きはそのためでもあったのか?と嘆息しつつチケット手配したのでした。
学年とポジションを考えれば、いつ退団してもおかしくないと理解はしていましたので、驚きはありません。ただ、真風がトップスターの間は在団するだろうという甘えもありましたし、ダンサーなのにレビューのない演目で終わることを残念だとも思っています。
まあ、仮に私が劇団の人事権を握っていても、りくはトップスターに推さない、と思います。ただし主観的には、そう思う評価部分も含めて好きでした。
バシャー役に関して、私は再演(春風弥里)のイメージが鮮烈です。正直、記憶の中の春風弥里は美化されていることもあって、観る前からりくでは技術も色気も足りないと思いましたし、実際に観たバシャーとしての演技も、手品や衣装変え等、やるべきことの多さに囚われているのでないか、と感じました。
しかし、りくが舞台にいるだけで心は満足だったので、負けたと思いました(なんの勝負かはわかりません)。
仲間たちやダイアナとの絡みは和気藹々楽しそうだし、楽曲は全撤廃も覚悟していたのに十分残して貰ったし、奇天烈な格好から格好いいスーツ、謎のフランス人やポーターへの変装など衣装バリエーションが多く、イレブンの中でも美味しい役だなと有難く思いました。今はそういう、花を持たされていることにただ感謝する気持ちでいっぱいです。
11日公演、千秋楽ライビュも観る予定なので、一旦ここまで。
なお、貸切ということで貸切会社のネタを入れたアドリブが多かったです。ジョンソン先生はまさかのロン毛カツラで、登場した瞬間から客席が笑っていました。キレ気味なベネディクトのキャラ維持っぷりには感心しました。
- ベネディクトのオフィスは「みんなでe+体操を考えているところ」。
- ソールの演技指導は、モーニングコール(朝だぞ、お寝坊さん)パターンに「今日もいいプラスな一日を」が追加。
- ジョンソン先生は、タンバリン芸人で、患者をタンバリンで元気付けつつ「ショーのチケットはe+で買ってね」。