前回から間があいてしまいましたが、DVD感想の続きです。

【第1幕2場】
少年時代、自分の才能を信じるスコットは、富と栄光とロマンスを求めて文壇を目指し、スクリブナーズ社に原稿を送る。非凡な物を感じた編集長マックスはスコットと契約する――

場面転換はなく、衣装もそのままですが、暗転後の娘役の第一声が明らかに子供の残酷さを含んだ声を発するので、先程までのパーティから時を遡ったのだとはっきり読み取れます。男役の三人は、娘役二人に比べるとあまり通常の芝居声と差がないかな。特にアンサンブルで参加している真野すがたが、どの役でどの台詞を言っても真野すがた以外の何者でもないことに、密かにウケます。
ベストを脱ぎサスペンダー姿になったスコットは如何にも少年。声もちょっと高く作ってるのでしょうか。最近の声とはだいぶ違いますね。
「自分には人とは違う秀でた何かがある」と信じるスコットは、若くて、ただ真っ直ぐで、眩しいです。物を作って公開しようという方は「才能」を多少自負してると思うのですが、これだけ確信してるのは凄いですよね。
マックスが、原稿を読んでる表情、社長へ直談判する決心、スコットと会った時、ゼルダの事を聞いた時など、本当に作品と、その書き手であるスコットを愛おしんでると感じられる表情で良いです。
「Life」を歌い初めるシーンで、とても余白のある撮り方をしていて、舞台のライブDVDとしてだけでなく、映像作品としてのレベルを持っていて嬉しいです。
マックスが一流の作家となるべくスコットに求める「仕事への忠誠」「不屈の精神」が台詞だけでなく深い意味を持つ事に、何度目かで気付きました。つまり、この期待を、彼は裏切ってしまうのですね……

【第1幕3場】
作家として成功したスコットはゼルダと結婚し、ニューヨークで暮らすようになる。奔放な“フラッパー”ゼルダは、常にスコットが書く小説のヒロインとなる――

幸せな二人。この1場しか、まったく不安のない幸福な時期ってないですよね。そんな幸せの絶頂の中で歌われる「You are me, I am you」は、はしゃぎ回る二人は楽しそうだけれど、デュエットすると何処か不安定で直ぐ壊れてしまう硝子細工のように感じるのが面白いですね(二人とも歌が得意分野じゃないから?)。
そして「背中に羽が生えてる」と言うゼルダのスコット評から考えると、大和版スコットも観てみたいなぁと思います。

【第1幕4場】
ハンサムな新進作家と南部一の美女の夫婦は、アメリカンドリームの体現者として一躍時の人になる。ジャーナリストの好奇の目、新作の酷評から逃れるため、スコットはゼルダを連れてアメリカを離れる――

ゼルダがフラッパーの条件に挙げる「自分の生きたいように生きる勇気、そしてそれを実行する無鉄砲さ」は、実はゼルダに備わっていない物だったのではないでしょうか。夫婦の時は世間の評判を気にしているし、いつもスコットの気持ちも推し量っている。ゼルダは本当の自分を隠して、フラッパーを気取ってるだけなのか。
最初気付いていなかったのですが、記者会見場にマックスもいるんですね。スコットへ向ける眼差しが、2場の愛情に満ちたものから痛みのあるものに変わっていて、少しドキッとします。
「君は俺の仕事か、プライベートか、どっちに興味があるのかね」
「貴方は、大衆の貴方への興味がどちらにあると?」
綾月せり演じる辛辣な記者とのやりとりは、追い回される著名人ならきっと自問する嫌な質問ですよね。
しかし、成功したと思ったら早くも酷評を受けているらしい展開の早さには少し驚きました。

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