季節は早くも夏の兆しを見せていた。
 息苦しく感じる暑さだった。景星大学一年生の島崎めぐみは閑散とした校舎を出ると、大きく息を吐き出した。ぎらぎらとした光を発して、太陽が嘲笑っている。入学前に思い描いていたキャンパスライフとはまるで違う静けさの中で、気の早いセミが鳴き声を響かせていた。
 校内の人影が少ないことには理由がある。ひとつは、めぐみの受けている授業がいくぶん早く終わったこと。もうひとつは、そもそも学生が少ないと言うこと。
 景星大学は今年開校されたばかりの新設大学だった。即ち、めぐみは一年生でありながら同時に唯一にして最高の学年に所属している。福祉学部福祉学科百二十人、同学部児童学科百三十人、そして起業学部起業学科二百人。五百人にも満たない人数で、郊外ならではの規模で作られた、五棟の校舎とグラウンドを抱える敷地を使っている――


「学園祭のつくりかた」は、学園祭を作ろうぜ!の掛け声のもと集まった新設大学1年生たちの、汗と涙にまみれた奮闘を描く青春ストーリー。学園祭のレシピ・本編4章・エピローグで構成。
視点は、島崎めぐみ(役職なし。福祉学部児童学科所属)で固定。
第1章タイトルは「名前がない」。
内容は、委員たちの簡単なキャラ紹介と、学園祭名を決定するまでのエピソードとなります。

なお、登場人物・出来事・大学・学部はフィクションです。

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