• 2008年登録記事

今日書いた部分。


 傾いだ柱の足下に僅かな影がある。子供たちと竜はその影に身を寄せて陽から隠れ、水の入った革袋に口を寄せた。
 まずコレットが一口、続いてジーニアスが頬張るようにして水を飲み込む。ロイドに渡った頃には、水袋は既に握った拳ほどの大きさになっていた。それを少しずつ口に含み、ゆっくりと嚥下する。心地よい冷たさなどない。代わりに、身の隅々まで染み渡るような感覚がロイドを満たし、疲れは長い息となって抜けていった。


はて、このペースで更新が間に合うのか?

今更ですが、砂漠の描写がちょっとウェットになっているなと反省しています。
私はエジプト系の砂漠に行った事がないので、遺跡のイメージと併せてカンボジアで過ごした時を思い出しながら書いているのですが、あそこは乾季と雨季があるので、ちょっとトリエットの気候とは違う筈。
でも私は知識だけでは小説に出来ないんですよねー、と開き直ったり。

最終封印35話の変化話3回目。
長々続けてきましたが、今回で終わりです。

まず、なかなか決まらなかったのが戦闘シーン。と言っても、アクション自体は二刀装備を生かしたものにしようと言う事がまず決まっていました。
問題は敵でした。トリエット付近に出る敵と言う事で、当初は蛇(サイドワインダー)のつもりだったのですが、本当にトリエット付近で出現したのか心配になってしまい、また蛇の動き自体あまり見栄えのするものが思い浮かばなかったので、取り敢えず置き換えることにしました。
シンフォニア攻略本はPS2版も含めて全部持っているのですから、確認すれば良かったのですけれどね。出すのを面倒がった為に、この後苦労する事になったのでした。
置き換えて書き出したのは、狼(ウルフ)。四つ足は犬の連想でアクションを組み立てやすいですし、実際スルスルと書き出せたので、一旦これで決着をつけたつもりでした。既にこの時点で、アップしたものとほとんど同じ文章が書けています。
が、不意に「ウルフはトリエット付近に出現したか?」と気になり思い返すと、ウルフと戦った記憶はイセリア付近か、次のオサ山道ではないかと心配に。それに、読み切り小説「海まであと」でもウルフとロイドは交戦している事を思い出し、ワンパターンに過ぎるので、一旦これを止めることにしました。
次に候補に上がったのは蠍(スコルピオン)。砂漠に出現した明確な記憶がありますので、今度こそ変えないぞ、と思って書き出したところ……なんと、ウルフ戦でしっかり頭に出来上がってしまったアクション動作が蠍に影響。うまい動きを見つけ出せず苦悩する事に。
色々パターンは変えて考えたものの、どれもウルフ戦と言う大元があってのアレンジにしかならず、それくらいなら思い切って砂漠でも狼で良いじゃないか、と思い切ってウルフに戻したのでした。

さて、コレットは自主的に動いてノイシュに乗ってくれた御陰で、35話の中に登場する事が出来ましたが、ここまででまったく文中に出て来ないキャラクターが一人いました。リフィル先生です。
実は、麻生はリフィルを動かすのが大の苦手。最大の理由は、彼女が知的なキャラクターであることです。
いくら地の文で「彼女は聡明である」と描写しても、誤ってアホな言動をさせてしまったら台無しです。書き手である自分に彼女のような知性がない以上、オリジナル展開でのリフィルの言動は最大限の気を遣う必要があるのです。
そんな訳ですから、リフィルをどう組み込むかは悩みどころで、竜を登場させることにしなかったら、最後の台詞しか出番がない所でした。

こんな形で、変化しながらなんとか出来上がったのが、皆さまにご覧頂いた35話となるわけです。
気になる次回の執筆状況は、本日更新致しました次回予告にてご確認下さい……今のところ、アップした部分しか書けてませんよ。

最終封印35話の変化話2回目。
昨日の日誌段階でも相当ですが、今日お話しする変化具合を読まれると「なんて適当な書き方をしているんだ」と呆れ果てられているのではないでしょうか。私もそう思います。

さて、まだ細かい所が詰まってませんが、話プロットが上がったこの時点で取り敢えず書き出します。
冒頭のロイドが暑くて眠くてたまらないと言う辺りは、比較的スムーズに早い段階で出来上がった下りです。書いている内に、眠りでこけそうなロイドを見かねて、コレットがプロットと無関係に自発的に声を掛けました。


「ね、ロイド。やっぱり交代しよ?」
もう一つの声は、まるで旅人を労る小雨のように頭上から聞こえた。


動いてしまったものは、取り敢えずプロットから大幅に外れない限り許容するつもりなので、なんとなく状況を考えていきます。ちなみに最初に書いたのはこんな感じでした。


振り仰いだコレットは、ノイシュの背に身体を預け白い靴を揺らしていた。
「平気だって。コレットこそ、まだ足痛むんじゃないのか」
それは旅立ちの為に揃えた靴であったが、長い道程を歩く若き神子に合わせて踵を低く誂えている。当初一行と共に砂上を歩いていたコレットだが、足裏を焼かれた彼女の異変は大人達に気付かれ、


と、ここまで書いてアウト。そんな装備ではこの前後の旅路に問題が有るだろう、と言う事で、体力のない子供たち(コレットとジーニアス)が交代でノイシュに乗っていることに変更しました。

ロイドが鼻水を付けられて服で拭い、ジーニアスに突っ込まれると言うエピソードは当初ノイシュで考えていました。が、個人的にノイシュが鼻水や涎を垂らしてるのはどうかなと躊躇ったのと、ロイドは共に育っているのだから、もしその危険性があるなら最初から鼻付近は避けるのでないかな、と予想。一旦白紙に戻しました。

その後、トリエットから旧トリエット跡までの距離の表現として、今回登場したオリジナル要素「竜」が小道具として浮かび上がりました。
ノイシュが5人同時に背に乗せられるなら、移動距離の問題は解決するのですが、それではギャグになってしまうので、乗り物として竜が候補にあがりました。

  • トリエットにはノイシュが泊まれる大きさの舎がある。
    TOSでは馬を見掛けない為、竜舎だと考えられる。
  • ノヴァの竜車は世界中を周っていて、図鑑イベントの事からトリエット付近を通った事もあると考えられる。
    つまり竜は砂漠の上を歩ける。

上記の点から、砂漠の移動で竜を使ってもおかしくない、と考え、この時点で一旦冒頭部分を竜を入れた文章に変更。更に、前述のエピソードも、竜に置き換えて取り入れ直しました。
……がしかし、この時点では巧く竜が物語の展開に溶け込みませんでした。そこで、竜を出すのは大型動物が好きな自己満足にしかならないのでは、と考え直し。なんと、一回また竜が出て来ないバージョンに書き直したのでした。

竜が再度登場したのは、実に更新3日前の事です。
勿論、一度取り止めた竜の存在を復活させたのには理由があります。前回よりも、「竜」と言う小道具を使ったエピソードを思い付いたためでした。
……と言うのは、36話前半に関する事なので、詳しい事は36話が出来上がってから是非ご確認下さい。
一応、35話だけでも、竜がいることで戦闘から逃げ出すノイシュと自然な対比になる、と言う効果も狙っています。狙いだけなら他にもありますが、細かいので割愛します。
とにかく色々思惑だけはあり、竜は無事、最終封印に登場することが出来たのでした。

前半が二転三転している内に、後半の戦闘以降のやり取りもごっそり変わってます。長くなったので、後半の変化具合はまた明日お話し致しましょう。

予告通り、本日は35話の展開変化についてお話しします。
まず、最終封印の場合は、最終話までの各話でなにが起こるか決まっている「全体展開プロット」があります。これは非常に簡素に各話でこなす内容をメモしただけの物です。実際の指示をここにコピーしてみると、


【35話 砂漠の旅→遺跡発見】


と、これだけです。こんな感じのメモが取り敢えず最終話まで続いてます。

実際の執筆に取りかかると、この「全体展開プロット」から、その話の展開を決める「話プロット」を作成します。
原作に存在するイベントの場合は、区切りの良い所まで台詞を写せば、後は細々したキャラの動きを付けるだけで大体決まってしまいます。しかし35話の場合、原作にイベントとして存在しない、フィールドを歩いているだけのお話ですから、所謂オリジナル話と言う事になり、自分で考える事になります。
今回はここに、34話トリエットの夜イベントで盛り込めなかったクラトスとの会話を入れる事にしました。
と言う事で、まずこの台詞が書き足されました。


「お前は太刀筋が粗い。もう少し隙をなくすよう心掛けるのだな」


さて、原作イベントで「太刀筋が粗い」と言い出すのは、ロイドを凝視していた事を指摘されたクラトスの照れ隠しでしょうから、唐突でも良いのですが、道を歩く間、突然そんな事を口走るのもおかしい話です。ついでに言うと、クラトスとロイドがレネゲード基地で再会した時点で、ロイドは剣を振るっていません。聖堂後のロイドの太刀筋を実際にクラトスが見てから言い出す方が自然な感じだな、と此処まで纏まり、35話にはフィールドを徘徊している敵との戦闘を盛り込む事にしました。

なお、戦闘の話にまつわる要素ですが、前話までのオリジナル要素として、ロイドは基地で剣を回収しませんでしたので、これを手に入れるエピソードを入れようと予定していました。
これは、財布を握っているリフィルに剣を買うお金を出してもらおうとした所、無駄遣いを許さないリフィルが、2本分のお金を出してくれない。どうしても必要なら理由を作文にしなさいと難題を付け、ロイドが困っていた所にクラトスがお金を出してくれると言う展開でした。子供に物を買い与えると言う行為を、是非はどうあれクラトスにさせて上げたいなぁと思ったものですから……。
上記含めた出立前後のエピソードは、後の展開との兼ね合いやテンポの都合からカットされ、地の文に回想として盛り込まれています。

戦闘自体は、ロイド的にはそんなに問題のない物だった方が、クラトスの台詞がムッと来ますので、あくまで相手は雑魚。さほど描写を割かず勝てることにしておこうと決定。
そうすると、戦闘して遺跡を見付けるだけの話では潤いが足りないので、もう少しなにか盛り込みたくなります。そこで、この先のイベントでのノイシュに関する会話を一部前倒しする事にしました。

ここまでで、35話のプロットはこんな感じになりました。


【一行は砂漠の道を行く。ロイドの腰には朝購入した剣がさがっている。
蛇が現れて戦闘。快勝。華麗な勝利、とポーズを決めてみせる。戦闘の立ち回りの瞬間だけは暑さを忘れているロイドだが、直ぐに倍になってのしかかってくる。
戦闘が始まった途端、ノイシュは一目散に逃げていた。
「また逃げ出しやがったな」
揶揄する子供たち。
「魔物に敏感なのだろう」
なんだ優しいな、と思いきや自分には
「お前は太刀筋が粗い。もう少し隙をなくすよう心掛けるのだな」
ちょっと俺より腕が立つと思ってえらそうに。…だいぶかな。
小言までもらって暑さだけでなく疲れる環境だ。砂漠は飽き飽きだぜ。
遺跡を進路に発見し、一行は向かう。】


この時点で、まだ竜は登場していません。その上、せっかく大人数の旅になったのに、コレットとリフィルが描写不足です。まぁ、リフィル先生は結局仕上がりでも出番がありませんが、その分、次話で弾けてくれる筈です。

ここから更に変化していく様子は、また明日の日誌にてご紹介します。

お待たせ致しました「最終封印強化月間」開始です。そして、初日と言う事で頑張って35話を更新しました。
前話までの展開なんて忘れちゃったよという方、ごめんなさい。まだトリエット地方です。それと、今回次話が全く書けていないので、次回予告を出してません。近日中に、こっそり上げておきます。

35話にはウルフ戦を入れてみましたが、今回も突き技でフィニッシュしてしまいました。
斬るより、突く方が実戦的だよなぁと思っているので、どうしても序盤は同じ戦法になります。その内、ロイドが扱える技の種類が増えたらもう少しファンタジー戦闘っぽくしていきたいです。次に戦闘描写があるのはクトゥグハ戦の予定。最終封印的には、ロイドがパーティとして挑む初めてのボス戦ですので、気合い入れていきたいと思います。
ちなみに、自分で告白しておきますが、ウルフが出現するのはトリエットでなくイセリア付近ですよね。序盤の雑魚イメージと言う事で、目溢し頂ければ幸いです。

戦いはあっさり快勝でロイドに久し振りの綺麗な白星ですが、戦闘が終了してからノイシュとコレットの不在に気付く辺り、雑魚戦中でも、まだロイドには周りを見ているゆとりがありません。……周りの動きを描写しなくて済むので、書き手としては有り難いです。

以前に日誌で触れていた通り、35話は執筆途中に色々な変化が有りましたので、明日の日誌では35話がどう変わっていったか、最終封印の書き方と共にお送りしたいと思います。