• 2014年登録記事

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ゲームアーカイブス「黒の剣 Blade of the darkness」を始めました。
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現在地:首都バルクルーサ(カイエス編)

本作は「シナリオが良い」と局地的に絶賛されたPC-98用ゲーム、のPS移植版、のダウンロード配信版です。

スクリーンショットを見ると、一見、移植のためコンシューマー向けにしたアダルトゲーム作品に見えます。私も長年そう思っていたのですが、実はアダルトゲームメーカーが作った一般向けゲームなんですね。

今のところ、かなり面白いです。
シノブ編は、首都バルクルーサに到着した後、どう行動したら良いのかフラグ立てが分からず困る局面がありましたが、最後に不安と謎を掻き立てる展開が起こり、先が気になったところでカイエス視点に戻る展開が巧いですね。
更にその後、港町に着いて「ああ、ここに繋がっていたのか!」と気付いた瞬間から、すっかり物語に引き込まれてしまいました。
その後も、シノブ編を経ているために、カイエスとプレイヤーの当面の目的意識が合致している気がします。

1本道シナリオですが、道が繋がっている箇所はいつでも行けるようです。
シノブと合流してから行くと思われる温泉町も、この段階で通行証を取り替えれば行くことは可能でした。もっとも、町の入り口を兵士が封鎖中のため、中には入れないし、雑魚が強くて帰り道で全滅したのですが。

難易度は、理不尽とは言わないけれど、敵が強めの調整であることは確かです。
NEW GAMEすると始まるシノブ編では、町を出て最初に出会った雑魚戦でいきなり死亡して、オープニングからやり直しになりました。
移動中にHP・MPが回復するため、魔法やスキルを惜しみなく使っていくバランスになっているようです。
一応、自分は前知識を持って遊んでいることもあり、この辺の尖り方は、逆にレトロゲームを遊んでいるという実感で愉しみに変換可能でした。昨今のゲームは、多重の意味で「やさしい」ことも実感できました。

システム面や一枚絵以外のグラフィックは、スーパーファミコンの初期作品という印象。
TV画面でのプレイを想定しているためか、イベントシーンの字幕は小さいです。ただ、音声が意外と入っているので、音を出せる環境であれば、字幕は見なくても問題ないでしょう。
全滅頻度の高さを考えると、イベントスキップができないのは不便ですが、その代わりどこでもセーブが可能なので、ある程度許容できます。

物語は、難破船に乗っていた少女シノブが目覚めたところから開始。
背に負った黒鞘の剣を託す剣士を探して首都バルクルーサへ赴くも、遺跡から「発掘」された、自分と同じ黒髪の少女と対面し、ホルマリン漬けのような状態の彼女から「我が子孫よ、我に命を与えよ」と呼びかけられる。

——というシノブ編の展開は、カイエスが呪い師の魔鏡を通して見た光景だったようです。オープニングの後突然シノブ編が始まったことに疑問を抱いていたのですが、こういう構造だったんですね。
その後は、魔鏡に映った行くべき道=シノブを追って、カイエスも首都へ向かいます。……彼自身はなにも口にしないので分からないけれど、シノブの身になにが起きたのか知り、必要とあらば彼女を助けるためですよね。
少し遅れて追い掛けている図なので、そこかしこで、シノブの痕跡を感じるのが面白いです。
この国では、騎士団が腐敗している様子や、先住民を追い出したらしい過去などの暗さ、貴族は高いところに住みたがる(低い土地を嫌う)などの謎が満載で、かなり深い物語が期待できそうです。

全修練、全ランカー戦済み。闘技場の指名戦は行っていません。

一時期、ワゴンで投げ売りされていたり中古市場で値崩れしたりしていたようですが、一本道RPGとしては、ごく普通に面白い部類に入るRPGでした。
物語はサクサク進むし、読み込みが早くシステム面も気持ちのいい速度で、戦闘で負けてもその場からリトライできる、クリアまで25時間程度とライトに楽しめます。しかし内容もサックリしているかと言うと、状況変化に応じてかなり細かく町の人の台詞が変わる等、意外に世界は作り込んであります。
95000位から1位まで上っていくというランキング制も、あと少しランクアップしようという気持ちが掻き立てられて良かったです。

これがこのゲームの長所であり、短所でもありました。

結局、自由度がほとんどなく、物語の誘導に沿って遊ぶだけでほとんどの要素が出尽くし、ランク1位まで到達してしまうので、日頃ゲームを遊び込んでいるタイプのゲーマーには物足りません。
特に物語に関しては、サクサク感が中盤以降はいささか恨めしいというか、「これほど憎いと思ったことはない!」「殺します」なんて言っていた人たちが、禍根も遺恨もないかのように手を結ぶので、拍子抜けしました。
特にファズは、ジグに対してもう少し真摯に謝ってくれないと、彼ら自身は分かり合えるのかもしれないけれど、プレイヤーである私はモヤモヤしました。レンやイゴリダも、ちょっと身勝手感を感じたかなぁ。総じて、女性キャラクターの描きかたは下手な気がしました。アイリスは可愛かったのに、見事なフラグで死んじゃうし……。

ランキング戦は、ブレイクという戦略要素と、個性豊かなランカーとの戦いが楽しく、ランカーズファイルを埋めるというコレクション要素もあり楽しいです。
必殺技を打ち破るQTEだけ不要かなと思ったけれど、必殺技は魅せ技と思えば、まぁ許容範囲です。
が、一度戦ってランカーズファイルに記録したランカーとは二度戦えないという点が、非常に勿体ないと思いました。
例えば、弓使いに「ハガネソウル」を使わずに挑む、ガルガノと銃対決する、などプレイ方法を変えて挑みたくても、再戦できないのでは不可能です。

私の場合、結局下記の2スタイルだけで最後まで勝ち抜いてしまいました。
攻略の参考になるかは分かりませんが、記録として載せておきます。

アタックスタイル

Attack

ブレイクスタイル

Break

前述の通り、ランカーたちは面白いキャラクターが多く、非常に良かったです。
例えば、修練で出会った「上にいく力があるが、あえて適度なランクに止めている」ナタン@漆黒を纏う優男の生き方は、ジグと好対照で、とても良いキャラクターだったと思います。
個人的には、イザベラ@心に乙女を飼う獣も好きでした。凄く心優しい良い男——もとい女ですよね!
勿論、ポッドとトレンスはお世話になり具合が違うので別格です。

合鍵イベントは面白かったけれど、合鍵を渡す→自室に戻る→イベントを見る→合鍵を返してもらって別の人物に渡す(以下ループ)という流れが完全に作業化していて、少し面倒でした。移動はショートカット機能があるのだから、自室へのショートカットも付けてここもサクサク仕様にして欲しかったかな。
ちなみに、個室でないと鍵は無効だと思っていたので、大部屋に戻った後、鍵を渡せることに気付かず、その期間のイベントを見逃したのは痛恨でした。

廉価版が発売されているので、価格分は十分楽しめます。

藤本ひとみ著「ブルボンの封印」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
親を知らず育ったジェームズと捨て子のマリエールは、各々のルーツを探す旅に出る。マリエールはジェームズと瓜二つのフランス国王ルイと出会い、やがて彼の愛妾になる。一方、ルイの双子の兄だったジェームズは、弟から王位を奪取すべく動き出す。ジェームズはルイに捕らえられるが、誤って毒を飲んだルイは記憶を失ったため、ジェームズがルイ14世に成り代わる。

「鉄仮面伝説」を元にした作品——であることは、上巻の半ばで気付きました。その時点でジェームズの正体と物語のオチは予測可能です。それでも、キャラクターの魅力で最後まで引っ張られました。

残念ながら、読了感はあまり良くありません。これまでに読んだ藤本ひとみ作品の系統と同じく、途中までは面白く、最後で気が合わなくなりました。
今回の場合は、都合良く不要な人間を片付けてハッピーエンドに仕立てた印象を受けました。
兄であるジェームズが王位を継ぐのが正しいのかも知れないけれど、現代日本人の感性としては、それまで王として働いたルイの人生とは本当に何だったのかと思います。元々自分が兄を排除しようとしたわけでもないのに、愛妾からは混同された挙げ句冷められ、寵臣からは密かに天秤にかけられ、可哀想になってしまいました。
また、途中まではキャラクターが非常に魅力的だったのですが、終盤になると、主人公格のマリエールが「高潔なヒロイン」設定で酔っているように感じてしまいました。特に、妻ある人の愛妾という立場が嫌だったはずなのに、「ルイ」の中身が入れ替わったら、またやり直す気になる結末が、個人的に不満です。
もし、ジェームズとマリエールが駆け落ちするような終わりなら清々しかっただろうけれど、そうなると今度は「鉄仮面」が存在しなくなってしまうんですよね。

アドリアン・モーリスの切れ者っぷりは凄く好きですが、結末が彼にとって都合が良すぎて、少し収まりが悪い気がしました。
逆に、最初のうち嫌いだったマノンについては、中盤、ジェームズを手に入れる為にそこまで計略を仕掛けるかと感心させられました。
あとは、女誑しだけれど実直なフランソワ・ミッシェルが結局一番いい奴でしたね。
登場人物全員が利己的である、という意味ではとてもリアルな人間を描く作品だったと思います。

ジグとファズの関係を理解しようとしたら、こうなりました。
【注意!】終盤のネタバレを含みます。


「どんなに憎んでも、ジグなら許してくれるような気がしていた」
「……なめられたもんだ」

 どう反応したらいいか、ジグにはわからなかった。
 何者をも許すような聖人君子でないことは、ファズが一番よく知っている。鈍感だから傷付かないと馬鹿にされているのなら、今こそ怒るべきだろうか。
 ふざけるなよ、と心の中で呟き、腹に力を入れる。
 だが——

 ファズはいつでも正しい。

 確かに、ジグはファズから恨みをぶつけられ、戸惑いもしたし、苦しんだが、憎み返すことはできなかった。それどころか、自分を恨むことで頼っていたのだと、あのファズの甘えを知って、今は喜んですらいる。
 気を抜くと笑顔になってしまいそうな自分を叱咤し、ジグは瓦礫を持ち上げることに専念した。


ジグもファズもお互いを好きすぎる…。

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クリアしました。
プレイ時間は約26時間。ラスボス突入時のレベルはLv.37。
ユーリ撃破後は一気に展開が進むので、あまり寄り道せず一気に進行。終盤は少し演出が足りない気がしたけれど、ハッピーエンドで気持ちよく終わりました。

バザルタ本部に籠ったユーリを倒し、ミシーを救出。
これにより、ハースを除く全七騎士を倒したことで、元アンチのメンバーが入れ替わりで七騎士に就任。
戦っていないマキスが辞退するのは良かったけど、他の面々、特にファズ以下の面々がそのランクに見合う強さなのか疑念が残りました。
ファズはランクこそ高かったものの、ポッドたちに不正だと噂されていたことから、客観的に見てそこまで実力者に見えないということですよね。レンはファズと良い勝負だったので、実力伯仲。イゴリダはランクがなかったし、ジグと戦ったとき以降に強くなった描写もないので、この2人からもかなり劣る印象。
ランクは入れ替わり制なのだから、ロザを、前のランクから1つ下げて4位にする程度で良かったのでは、と思います。
この辺、新七騎士のランクの付けかたが不透明なので、私自身はハースの不満も理解できました。

で、ようやくカンタレラの末裔の協力を得ることができたものの、時既に遅く破砕の日が来てしまったので、ラ・キット遺跡の使いかたを調べることに。
実のところ、カンラレタの末裔の力って本当に必要だったんですかね?
逆に、もし「カンタレラの王」が言葉だけでなく文字通りカンタレラの子孫でないといけない場合、古代カンタレラ人というのも、結構嫌な勢力だと思います。
カンタレラ人は、ラ・キット遺跡の起動を“「カンタレラの王」が「ラストランカー」をイビノスの元に送り討伐させる”という形式にしたんですよね。一方、「ラストランカー」を作るのは戦侯機構バザルタです。つまり、破砕の日の決戦を利用して、カンタレラはバザルタより上位の存在になろうとしているように受け取れました。
少なくとも、バザルタ側はそう受け取ったから、カンタレラを敵視するようになったのでは?

破砕の日の元凶たるイビノスを倒す前に、真のランク1位になりたいハースが遂にジグと対決。傍迷惑ではあるけれど、彼がこういう人なのは分かっていたので、しょうがないですね。
ランク1位として君臨し、強さを求め続けた男という設定に恥じることない強さでした。
というか、1回負けてリトライしました。
終盤には放ってくる、時間経過でジグのブレイクゲージが自然減少する特殊スキルが反則的。そのため、前半はブレイクスタイルで削り、ハースがスキルを使って来たら、アタックスタイルの全スキルを叩き込むという形で、遂に撃破しました。

最後は、なんだかんだ言って良かったです。
個人的には、3Dモデルで笑うジグが見たかったけれど、たぶん表情パターンで笑顔がないんでしょうね。
マキスに「あの台詞」を言ってくれたのは嬉しかったけれど、完全にマキスがヒロインポジションで思わず苦笑。最終的に一緒に旅に出るのはファズだし、モテる割には最後まで女性と縁がない主人公でした。

クリアデータを呼び出すと、最終戦直前のタイミングに戻されました。
「強くてニューゲーム」に当たるものはなし。
最終戦直前に戻ってしまうと、人々の会話が「破砕の日」を前にした不安な台詞ばかりなので、ちょっと寂しいです。七騎士就任時に、早く会議室に行くよう追い立てられたせいで、あまり歩き回らなかったのが悔やまれます。
一応、見逃していた「討伐修練【高位2】」でベイガーに再会したり、ランク9位と戦ったりして、見逃していた要素はほぼ回収しました。
長くなったので、総評はまた次回とします。