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宝塚宙組「クラシコ・イタリアーノ/NICE GUY!!」11:00回を観劇。
レニーの冒頭アドリブは「石田三成」でした。台詞物真似はなし。
まだ1週間ですし、土日なので初見のお客様が多いのか、ミーナの客席登場などに新鮮な反応がありました。

観劇3回目。通常公演日のつもりが、前日に公式サイトで全組に渡る大異動が発表されたため、劇場前や幕間に興奮気味の話が聞こえる状態でした。
また、観る側としても演出に色々な意図を勘繰ってしまって、マリオ@北翔海莉の銀橋ソロや、サルヴァトーレとの別れの抱擁シーンへは拍手が厚かったと感じました。
その他メンバーの入れ替えも色々衝撃的でしたが、今は現宙組スター布陣を最後までしっかり楽しみたいと思います。
参照:宝塚歌劇 新着情報2011/12/02「組替えについて」

個人的に、芝居は必ず2ヵ所で泣いてます。
1つ目は、少年サルヴァトーレがアレッサンドロ親方に引き取られて大泣きするシーン。
2つ目は、ポケットの縫い付けをしている職人ニーノ@月映樹茉の台詞です。
あの台詞だけなのに、彼の背景を凄く感じます。
落ちこぼれのニーノでも可能な仕事は「ポケット付け」だけ。それは他の職人から蔑まれ馬鹿にされる仕事だけれど、でもサルヴァトーレは彼に働く場を与える為にその仕事を命じた。そして、ニーノ自身もその仕事に自分で意味や誇りを見出して全力を投じている……。
ルッカやミゲルの方が、サルヴァトーレが彼等にとってどれほど大きな存在か分かりやすく語ってくれているけれど、たぶん彼等は他のテーラーでも働けるんじゃないかな、と想像しています。
それだけに、ニーノのような人を雇って一流の仕事をさせてやったということが、サルヴァトーレの最大の功績のように思うのです。

今日は、グランチェロの本公演で退団するメンバーの1人、ミゲル@光海舞人を中心に追って観ました。
小道具が充実しているので、仕事場の作業はしっかり芝居が出来て楽しそうですね。
マリオのストライキ時は、マリオの意見に揺らぐ気持ちもあるけれど、基本的にはサルヴァトーレ支持でマリオを説得しようと考えている側、という雰囲気を感じました。

アメリカ撮影チームではマシュー@蒼羽りくを中心にチェック。
かなり軽薄ですが、ミーナを連れて来た本人なので、他のメンバーのように頭から非難せず、なんとか雰囲気を盛り上げようとしているのが優しい奴なんだと思います。彼女を見つめる目の感じからして、性格的にも優しいんでしょうね。
ただ、職人たちのプライドやサルヴァトーレの拘りは理解できなくて、そういう部分は大量生産の国アメリカっ子。イタリアはあまり好きではなさそう。その辺はプロデューサーであるフランク寄りで、レニーがイタリアに残ると主張した時は理解できないという顔でした。
逆に、同じアシスタントでもポール@星吹彩翔は、レニーを置いて行くことを最後まで心配してる様子だったので、レニーとの仕事が好きだったのかもしれませんね。

あとは、花売りと靴磨きの兄弟が、旅芸人の一座の出し物が始まる時からいて、靴磨きを失敗して客を怒らせる小芝居をしていることに気付きました。
弟が失敗を取り戻そうと必死に力を入れて、兄の方は客の目を逸らそうとして必死に花を売りつけようとしているのが、なんとも言えず可愛いけれど、貧しく教育も受けていない子供たちなんだと言うことも一層強く感じました。

芝居が色々と行間を読む方面で刺激してくる分、ショーの語りが少ないですね。
客席降りの時に、大空氏が1列31番の客と超接近していたのですが、OGか他組子が来ていたのでしょうか? 遠くから思わず「羨ましい……」と歯軋りしました。
また、今日は下手寄りだったので、通路に来るセクシャル9の顔触れがこれまでと違って楽しかったです。
オペラ越しですが、恒例である鳳翔大のウィンクも確認しました(笑)。
でも今公演からはウィンク連発を止めて、流し目路線に変えて来たように感じます。芝居の雰囲気のまま、ノーブルな感じを維持しているのでしょうか。
百千糸のエトワールは、実は期待値が高かった分、宝塚大劇場で聞いた時は少し期待外れに感じていました。恐らく前回エトワールの七瀬りりこが超絶歌い上げ系だったので、その差に戸惑ったのでしょう。その先入観を外して聞くと、可憐で可愛い、少女そのもののような雰囲気で、歌詞と合わせて聞くと非常に良いエトワールだなと思うようになって来ました。

宝塚宙組「クラシコ・イタリアーノ/NICE GUY!!」15:30回(東京公演初日)を観劇。
初日とは言え、既に本拠地で完成できたものをそのまま持って来た感じで、危なげのない滑り出し。
これから1ヶ月、週末は基本的に通う予定です。

芝居の演出変更は1ヵ所。
ミーナが祖母に電話するシーンが1回増えて、サルヴァトーレの番組撮影の前に報告電話をする形になっていました。「クラーク・ゲーブルと共演なんてまだまだ」と笑う台詞を此処で言ってしまったので、その次のCMガール起用を報告する時はどうするのかと思ったら「ハンフリー・ボガートと共演」になっていました。
こちらの方が受けていたのは、「カサブランカ」効果でしょうか?

レニーは冒頭のアドリブを封印したのか、「ルドルフ・ヴァレンチノに似てるけれど」だけでした。その代わり、冒頭の「皆さんごきげんよう」に「初日にようこそ」が付け加えられていました。

ということで、まず「クラシコ・イタリアーノ」。
宝塚大劇場での初見時は、サルヴァトーレとマリオの別れに物語のカタルシスを感じたのですが、今日はアレッサンドロとの和解部分がちゃんと物語の盛り上がりになってると思いました。
ここで演じられる職人のインタビュー風景も凄く好きです。
今公演で退団するミゲル@光海舞人が大トリなのも嬉しいけれど、内容としてはサルヴァトーレのやり方(職人作業の分業)を肯定するニーノ@月映樹茉の台詞が好きですね。
喋っている以外の子たちも、仕事を和気藹々とこなしてる感があって、「グランチェロ」が良い職場だと分かるのが嬉しいです。

今日は9場を観て、マリオが辞職した理由は、ジュリアーノの圧力やグランチェロの路線変更より、ベッピーノの「お金は大切だ」発言が痛かったためかもしれない、と感じました。
弟の家族に良い暮らしをさせたいという希望を聞いている間の表情が、とても辛そうだったのです。そして、その言葉にはまったく返答しなかったことも、気になりました。
サルヴァトーレとの別れで告げる「一番大変な時にすまないと思っている」が本当の気持ちなのだとすれば、機械化とサルヴァトーレの本心は違う、とマリオは分かっていて、彼を助けるつもりで米国側に抵抗していた、という考え方もできますよね。
彼の職人意識が強いのは確かですが、元々、大衆向けに既製服を作るという夢に乗ってローマまで出て来て、ずっとグランチェロにいたのだから、分業制には反対ではなかった筈です。「アメリカ進出に無理をしている」のが彼から観てネックだったんじゃないでしょうか。
もう一つ、別の考えとして、マリオは「アレッサンドロになりたかった」のかな、とも思うのですが……その解釈はまた次回観直してからにします。

今日はいきなり泣いてしまったのが、子供時代のサルヴァトーレがアレッサンドロに引き取られるシーン。
施設の職員から目の前で人として否定された少年が、居場所を貰った瞬間の感情の爆発が、非常に心に押し迫って来ました。
今からこんな地味なシーンで泣いて、私の涙腺は大丈夫でしょうか。

細かい所では、仮面劇の間、後ろでピザを食べているサルヴァトーレの芝居に瞠目しました。
勿論本物ではなく、作り物のピザ。それをちゃんと咀嚼して飲み込み、店主に「美味い」と伝えている細かさが好きです。当たり前の演技だけれど、ほとんど客の目が向いてなさそうな時に、こんな動作をしている「自然さ」の作り込みが好きです。
DVDに映るでしょうか。ちょっとだけ映り込みを期待します。

その他、一部キャスト評。
ジャコモ@十輝いりすが、ライバルとして成長してきていました。
身長の大きさも生きて、出番は少なくても強烈に印象づけできていたと思います。
ジョルジオ@凪七瑠海は、線の細さで若く見えるのがマイナス要因ですが、時折クールなジャーナリストの視線で周囲を俯瞰しているのが、役を巧くモノにしてるなと感じました。
ロレンツォ公爵@鳳翔大は、貴族的な品の良さ、鷹揚な感じ、色気、の3種が巧く合っていて、出番や台詞は少なくてもちゃんと存在できていました。
ロナルド@鳳樹いちの足を組んで座る姿だけで、やり手だけど厭な奴という雰囲気が滲み出ていて最高でした。
オープニングナンバーで、スーツの星吹彩翔が素直に格好良くて思わず注目しました。

今日は結局真ん中周辺を観てしまったので、次回以降はパーティの客などに注目していきたいです。

続くショー「NICE GUY!!」は、開幕が少し遅れたのか、ちょっと早巻きで、その分テンポが良くなっていたかも知れません。
一番不満だった「Young Blood(イケメンオークション)」は、完全にギャグで勝負するように変えたようで、笑って過ごせるようになったので私としてはOKになりました。
ノリはとにかく最高の状態で来ているので、ガンガン手拍子を入れて、客席が盛り上がっていく方向で楽しむべきですね!

あ、あと私は藤井先生の衣装センスと合わないと明言していますが、馬2人は結構好きです。

宙組公演「シャングリラ」ED後


 あの旅の記録を物語にしたい。
 ――と思い付いたのは今日のことでない。渇き苦しんだ日々、一杯の水を巡って争った人々、そして払われた犠牲を後の世にも伝えることが、ルイの「水を守る」行為だった。
 作品はできている。出版の目処も立っている。あとは彼の同意を得るだけだ。
「断る」
 世捨て人の返答にルイは慌てた。
「ミウや子供たちに迷惑をかけたくない」
 どうして迷惑になるというのだろう。水を人々に解放した見知らぬ英雄に、誰もが感謝しているのに。
 しかし、彼は静かにルイの物忘れを指摘した。
「怨んでいる奴もいる。シャングリラの王を」
 そうだった。
 彼は解放者である、だがその抑圧された世界の主でもあった。
 突き詰めれば彼の行動は水を守り平和を得るためだったけれど、結果として多くの人々が死に、世界を渇した。
「報いを受けるのは当然だ。だが、俺のせいでミウや子供たちが傷付けられるかも知れない」
 ルイはその可能性を否定できなかった。
 無論、もう充分過ぎるほど彼は償った。けれど人の痛みや哀しみは理屈で片付けられるものでなく、時として陰惨な形で爆発する。
 彼が愛する人は、ルイの愛する人でもある。何事にも真っ向から立ち向かう彼女を愛おしく思うからこそ、降り掛かる危険を避けてやりたいと思う。
 だが、書き上げた物語をこのまま葬ることもルイにはできない。物語の作り手となるのは長年の夢だ。どんな物語でも良いわけではない。自身が一生をかけて語り継いでいきたいと思う一編があれば、それで良かった。
 それがこの本である。
 諦められない。
 ルイは持参した原稿に手を置くと、彼に提案した。


……こうして空は海に、海は空に名前を入れ替えたのだとしたら、さて我々が観た芝居の空は、空自身であったのでしょうか。

涙だって水源の村に住んでいたのだから、襲撃の夜に家族を失ったのだと思いますが、そういう重さがなくて、普通に弟分の顔で空や美雨のところに顔を出すんだろうなぁと思わされます。
そんな彼の軽さが、好きです。

「ヴァレンチノ」DVD感想の最終回です。
リミットにしていた宙組東京公演までは約1ヶ月。そろそろ生舞台が観たい症候群が出て来ました。

【2幕10場 ジューンの幻想】
帰宅したジューンは、ラジオでルディが緊急入院したことを知る。病院へ行こうと立ち上がったところに一本の電話が鳴り響き、知らせを受けたジューンは声もなく立ち尽くす。

電話の音を聞いて立ち止まるジューンは、まるで人形のようにギクシャクとした動きで、まるで「その電話を取ってはいけない」と知っているように思います。いや、作家である彼女なら、このタイミングで掛かってくる自分宛の電話に悪い予感を刺激されても奇怪しくはないですよね。
茫然とタイプライターの前に座り指を動かそうとした彼女は、けれど結局言葉を紡ぐことができなかった。この時、ルディの死によって脚本家ジューンの心も死んだのかも知れません。

8場でルディが告白した通り、彼は「現実の恋人としては失格」でしたね。だって、生きて結ばれることができなかったのだから。
幻のルディたちと共に去っていくジューンが、涙に濡れた顔だけれど微かに微笑んでいたことが救いです。

【2幕11場 再生〜ジューンのバンガロー】
ルディの葬儀から1年後、ジューンも急死。ジョージは遺品のタイプライターで2人の回想録を書くことにする。
幻想の中、オレンジの枝を手折った移民の青年が、飛び出してきた女性にオレンジを手渡す──

家具に白い布が掛けられたバンガローをゆっくりと見渡すジョージの背から、懐かしむような、慈しむような想いが滲み出ています。
きっと友人として招かれたこともあるだろう見知った家が、こんな風に閑散としてしまったことで、改めて喪失感を感じているのでしょう。

ルディとジューンの幸せな出逢いを、私は幻想だと解釈しました。プログラムの言葉から考えるに、演出家も「天国の光景」と思って創作したようです。一緒に観劇した友人は、ジョージの回想録で描かれる2人の出逢いだと思ったそうです。
どう解釈するにせよ、最後に笑顔で終わって幸せです。

【アンコール】
此処からフィナーレに突入。なお、実際の舞台では、ここでかなり長い暗転があったのですが、DVDでは短縮されています。直ぐ幕が開き直すのは嬉しいけれど、もう少し余韻があっても良いと思うのは贅沢でしょうか。
「アストロリコ」演奏の痺れるタンゴに乗って、まずは悠未ひろをセンターとした男役群舞。
前場に出ていた春風が、衣装をシャツ含む上から下まで着替えた上で口紅をショー仕様の色に塗り直している早業に驚きます。
東京公演では男役群舞の星吹彩翔が良いポジションにいて目に留まったのですが、DVDを観てあれは天羽珠紀の代役だったのだと気付きました! 天羽も好きですが、芝居と歌の人と言う印象が強いので、星吹の入ったバージョンも観られて良かったです。
途中から娘役の群舞に代わり、ここでセンターを務めるのは七海ひろき。上半身は文句なしに美しいのですが、さすがに男役がロングドレスで踊るのは難そうですね。同時に、この激しい振りを美しい裾捌きで対処する娘役たちは、さすがに「娘役」だと感心しました。
主演コンビが登場後、4組のデュエットダンスになるメンバー構成にさり気なく寿つかさが入っているのが嬉しいです。
また、ラストのポージングで、蒼羽りくが抱きかかえた娘役に非常に優しい顔で笑いかけている姿が映り込んでいて、思わずトキメキました。

最後に挨拶まで含まれて、DVD本編は終了。
収録日は、東京公演中止発表があった3月17日だったのですね。 東京公演が実現して、本当に良かったと改めてあの日の感動を思い出しました。

さて、ショー「Apasionado!!II」には、奇しくもヴァレンチノをモチーフにしたシーン「熱視線」があります。来年2月の再演での「熱視線」は、この公演を経てどんな風に変わるのか、そんなところも楽しみです。

【2幕8場 パーティー会場】
試写会は成功。怪我をおして壇上に上がったルディは会衆に“ルドルフ・ヴァレンチノ”がジューンの創作した人物であることと、彼女への想いを告白する。ジューンもまた、どの役よりもルディ自身が好きだと応え、2人は祝福される。

まず、口々に試写の感想を語る客たちが登場しますが、星吹彩翔が言う「クラブ21でマフィアとやり合って」云々の台詞、DVDだと、彼が数分前は悪い笑顔を浮かべてリンチに加わっていた姿を観ているので、別の役と分かっていても笑ってしまいました。

このシーンを観ていると、アリスとジューンも単なる仕事上の知人ではなく、ジョージも含めて3人で友人関係にあったのではないかと想像させられます。
ジューンと、彼女の夫と、ジョージと、アリス。この4人が恐らく大学時代の友人だったのではないでしょうか。
少なくとも、ジョージはジューンの結婚と別れから知っていて、ずっと彼女を愛し続けていたのだと私は思います。女性としても、友人としても。だからこそ、このシーンで壇上のルディが彼女について話す間、斜め後ろから優しく推移を見つめているのだと思うし、そんなジョージが映り込んでいるのが嬉しいです。

そしてルディの方は、ジューンを取り戻すことで「ヴァレンチノ」である自分を受け入れられたのですね。
ジューンこそが「ルドルフ・ヴァレンチノ」という虚像を作り上げた張本人なのですが、それは青年ルディを愛するからこその二次創作なものだったのだよな、と想います。
二次創作と言うのは、オリジナルが好きだからこその妄想炸裂ですから。

あ、後ろにある食事は普通に美味しそうでした!

【2幕9場 パーティー会場のロビー】
記者会見のため、ルディはジューンを先に帰す。「チャオ」と笑顔の一言を残して。

観劇時は、大体次のシーンになってから泣かされていたのですが、DVDでは「チャオ」の瞬間に涙が込み上げてしまいました。
ルディの満面の笑みと、ジューンの瞳から零れる幸せの涙。
この一瞬だけにしか存在しない、幻の時間。その儚さに泣かされました。