唐突に、リハビリ新作!
昨夜寝入り端にふと思いつき、朝になっても覚えていたら書こう、と誓ったところ、無事に書けました。
ここ数年、「小説らしい文章」が書けなくて苦しんでいたのですが、書けるときは書けるものですね。同時に、こういうストーリーのないお話を書くのが好きだ、と改めて思いました。
しいなは小さく息を吐くと、右手で左胸の襟を掴んだ。
迷いを訴える心臓の辺りを擦る内に、ふと、硬い感触に触れる。懐中に忍ばせていた「それ」の存在を思い出したしいなは、二度、親指で縁をなぞった。翼を広げたその意匠に触れていると、落ち着くというより、研ぎ澄まされていくような感覚がある。
心を決まるのに必要な時間は、それで終わった。
「戒めか?」
「うん」
おろちの問いにしいなは一度頷き、しかし、かぶりを振った。
それーーくちなわに渡された鶴のお守りを持ち歩くようにしたのは、確かに、自分の力不足を忘れず戒めるためだった。
けれど今となっては。
「むしろ、支えかもしれないね」
くちなわとは一騎打ち以来会っていない。兄のおろちも密かに探していたが、見付かっていないらしい。だが生きている筈だ。生きてさえいれば、あの男はしいなの生きる姿を見ている筈だ。ならば、恥じるところのない姿を見せねばならない。その義務感をしいなに与え、支えてくれているのがこのお守りだった。
お守りの中にくちなわの式神が残っているのかどうか、しいなには分からない。もし残っているならば、くちなわのお陰でしいなは自分の理想を守り続けられているのだと、感謝の気持ちも伝わっていれば良いと思う。
しいなはもう一度お守りに触れ、幼馴染みを強く想った。
オチはないまま寝落ちたので、最後は尻すぼみ(苦笑)。
このSSの出発点は「ED後も、しいなはくちなわのお守りを持ち続けているのだろうか」という疑問でした。それに対して、お守りはしいなにとって「支え」に変わっていくのでないかと解した形です。そもそも「戒め」は「支え」と近いと思います。
FF12のアーシェの台詞「危険な力だろうと、支えにはなるのよ」の影響を受けたかもしれません。当てはめたのが、本日のタイトル「発信機だろうと、支えにはなるのサ」ということですね。
ちなみに、「くちなわのお守り」の形は覚えていませんでした。さすがに15年近く経ちますからね。
くちなわだから蛇かな?と失礼なことを思ったのですが、攻略本を見たら鶴でした。なかなか凝ったお守りで驚きました。