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今日は大劇場公演「誰がために鐘は鳴る」初日ですね。
残念ながら日程の都合がつかないため遠征はしませんので、丁度1年前になった「カサブランカ」の感想の続きを進めたいと思います。

【1幕第10場 カフェ外(B)】
ラズロとイルザがカフェを立ち去る。ラズロはレジスタンスと接触し、彼等の集会に出掛けることになる。

再会後から見送りのシーンまで、ずっとイルザはリックを視ているんですね。
一方、あんなに未練がましい事を言っているのに、リックの方はまったくイルザを見ていないところが面白いです。
帽子を交換して入れ替わるラズロとレジスタンスですが、ラズロが持っていた帽子の色って、元々本人のスーツと合っていなくて、入れ替わる男のスーツと同色だよな、と思います。

【1幕第11場 カフェ(E)】
閉店後、一人酒を煽るリックの脳裏にパリの思い出が蘇る。

飲んだくれリック。端から観てる分にはそんな悪酔いぶりすら格好良いですが、身近にいたら面倒な人ですよね。彼を決して見捨てないサムは面倒見が良い男だなと感心します。
「彼女はきっと来る」と言う台詞、観劇中もどこからその自信が出てくるのか不思議でしたが、DVDを観て改めてリックは本当にそう信じているのだろうか、と疑問に思いました。単に意固地になって、帰らない理由を捻り出してるだけのような気がしてきました。

【1幕第12場 ラ・ベル・オーロール(パリA)】
パリのミュージックホールで、リックは失神したイルザを介抱して知り合った。

マドレーヌの踊りは東京で振り付けが変わったのかな。お尻ではなく身体の前に羽根扇を持ってきて、スカートのように見せる所があったように記憶しています。
さて、このシーンで注文する飲み物は、乾杯シーン演出のため、本物のグラスに飲料を入れて持って来ていると知られていますが、もしかして背後の群衆もグラスは本物でしょうか。リックのカフェで使っているプラスチックグラスとは、質感が少し違うような気がします。少し透明度が弱いと言われればそんな気もするので、そこまで自信はないのですが……。
セザールの眼帯は、良く観ると奥の目が透けて見えているんですね。舞台では気付きませんでした。眼帯をして演技するのは難しいそうですが、この透けた眼帯だとどうなのかしら。
イルザは、この時の鬘と帽子は似合っていて可愛いと思います。
CAN-CANには、やっぱり初期は全然揃ってなかったんだなぁと(苦笑)。東京でも決して褒められる出来じゃなかったですけれどね。

今回は1場だけですが、密度が濃いです。

【1幕第9場 カフェ(D)】
カフェに、ラズロと連れの女性イルザが現れる。イルザとリックはパリでの知人だった。二人は再会に動揺する。

4回目の更新でようやくヒロインと二番手が登場。DVDの再生時間だと、開演後28分での登場ですね。特別待たされた感じがしないのは、キャストでなく舞台自体が魅力を放っていると言う事を示しているのかなと思います。
実は観劇するまで、演じる蘭寿とむの持ち味からラズロは武闘派寄りになるかも知れないと思っていました。しかし極限まで抑えた佇まいで、映画同様、知的な紳士になっていると思います。時々仕草(傷のシーンなど)がキザになるのはご愛嬌。
イルザの方も、演者の持ち味とは離れた役ですね。ビジュアルの説得力が欲しいところですが、このシーンでの鬘と帽子の相性があまり合ってないと思います。登場した瞬間眼を惹く美貌、とはいかないのが残念。

大尉からリックの名を聞いて動揺を見せるイルザですが、ラズロと少佐の会話が始まると、直ぐそちらに意識を切り替えて、以後台詞の上では動揺を見せないし、サムには「昔は嘘をつくのが巧かった」なんて言い返すくらいなので、随分強い女性だと感じていました。でもDVDで観ると、サムから牽制されて泣き出しそうになっているのですね。
リックといつ鉢合わせするか分からない場所で、思い出の歌をリクエストするのだから、多少覚悟はあったのでしょうに、リックと再会した瞬間、動揺をまったく隠せていないところに、女を感じます。
一方リックは、DVDで観るとイルザとの再会に茫然とした感じ。東京公演時の印象だと、もっと眉間の皺が凄く険しい表情だった気がします。
イルザは少し戸惑いを見せつつ笑顔を繕うのですが、その後リックが卑屈な対抗意識で際どい発言をするので、表情が完全に抜け落ちちゃうんですね。時々リックを伺うのと、自分の中に沈んでいくのとを繰り返しているのが僅かな視線の動きで現されていて、これはDVDのアップでないと観えない繊細な演技だなと感心しました。
また、リックが座る席の周辺だけ、どんよりした暗いオーラが漂っていて、照明も暗いように感じるのが面白いです。
群衆劇が面白過ぎて、舞台観劇時の後半はメインでないところを観ていたため、改めて真ん中の芝居を観ると気付きが沢山ありますね。

今更気付いた細かいこと。
サムの移動ピアノを準備するのは、ビゴーの役目だったんですね。いつの間にか用意されているので、舞台では気付きませんでした。彼はカフェ一番の働き者だと思います。彼が主役のSSも考えてあるんですけれど、形になる日は来るでしょうか。

「カサブランカ」DVD感想の続き。

【1幕第6場 カフェ外(A)】
ルノーが犯人逮捕のためカフェに現れ、リックに協力を求める。

洗熊と狸が腹の探り合い(笑)をしているシーンですが、話し掛けられた時のリックが笑顔に見えるので、どこか「なぁなぁ」な緩い印象も受けます。「裏から行こう」と言われてルノーが応じる軽さにも、こんな雰囲気がいつもの事なのだと思わされます。
もっとも、大空アングルで見ると、イヴォンヌを見送った後に口笛を吹きそうな様子が分かりますので、表情が柔らかいのは単にその名残かも知れません。
祖国への思いと、カサブランカに来た理由を問われた時にだけ、リックの瞬きが多いような気がします。細かい所だけれど、他の台詞を言う時はそんな仕草をしないので、意図的な演技なのか、考え過ぎかな。
エミールの「プロとして恥ずかしい」は、東京公演だと矜持がありつつ恥じてる感じでしたが、DVDだと少し気弱な感じを受けました。

【1幕第7場 オフィス〜カジノ(B)】
レジスタンスの英雄ラズロが渡米の為カサブランカに到着したことをルノーから知らされ、リックは脱出の成功に一万フランを賭ける。

賭けの話までは、前場に引き続き丁々発止のやりとりですが、ルノーから素性を調べたことを明かされた瞬間、表情から親しみが消えて硬質の表情のまま動かなくなるのが好きです。
「今にこのカサブランカは」に続く言葉として、大尉は何を言おうとしていたのでしょう。ナチスの占拠下に置かれる、でしょうか。でも大尉のような面従腹背のフランス人がいる限り、彼等が本当にカサブランカを支配する事はないと思うのですけれどね。

【1幕第8場 カジノ(C)とカフェ(C)】
外交官殺害の容疑でウガーテが逮捕された後、リックはシュトラッサー少佐らから詰問される。彼は過去レジスタンスに参加していたのだ。

ウガーテが警官に囲まれた際、隣の席でヤンが「ぽかーん」としているのが可愛いです。
それにしても、ジャンはリックと親しいとも思えないのに何故「俺の時は助けろよ」と言うのでしょうか。蝙蝠的な彼の立ち位置としては、リックの本心を探っているのかも知れませんが、断られて目を剥くのは演技でない感じがします。
ジャンの本心を読み解くのは、この場に限らずかなり難しそうです。
DVDでは映っていませんが、初めてカフェのセットが登場するとき二階から早めに内部を覗くと、給仕中のカールが横を通り過ぎたジャンに気付いてジャケットの中を確かめる、と言う演技をしていました。つまり、リックのカフェの従業員は、ジャンがスリであることを知っているのですよね。その割に堂々としているのは、リックが突き出す訳がないと思っているのか、最終的にルノー大尉に何とかしてもらえると思っているのか。
ただし私は、ジャンはリックの店で仕事をした事はない、と考えています。
理屈は明言し難いけれど、ウガーテがそうであったように、ジャンもリックに憧れている面があるのでないかと感じるのです。自分でも、三人が白系スーツジャケットに蝶ネクタイと言う衣装であることに意味を求め過ぎかと思うのですが……。

リックが少佐から詰問される間、逐一ルノーがフォローを入れたり慌てるのが面白いですが、この時のリックは大尉も含めた制服組全員に対して心を閉ざしている様子。
少佐が飲み干したシャンパングラスを机に叩き付けた瞬間、プラスチックの音がするのが残念です。
それにしてもこの4人のテーブル席、3種類の軍服+リックと言う夢のような席ですね! 絵にしたいくらい。
大尉はヴーヴ・クリコを注文するときに年数を指定するけれど、シャンパンにもワインのようなビンテージがあるのでしょうか。

「カサブランカ」DVD感想の続き。

【1幕第3場 Rick's Café Américain】
リックのカフェは、亡命者たちと彼等を幇助する闇の売人たちで賑わっていた。

物語の大部分が展開されるカフェのセットが登場。座席によっては、ドアマンが明けた扉から客として中へ入っていくようにも見えたので、DVDのアングルに期待していたのですが、残念ながら歌が始まっているので、店内にカメラが移動しちゃってますね。
舞台上に乗っている生徒が多いと楽しいですね。ソロパートがない客でも、地味に良いお芝居をしていて素敵です。
突き飛ばされたアブドゥルが、椅子に座ったまま痛みと怒りを浮かべるのがギリギリ見えて嬉しくなりました。リックが名刺を破ってみせた瞬間、白い歯を見せて嬉しそうにして、直ぐその表情を引っ込めるところや、当局に通報すると言う脅しに少し困った顔をするところなど、表情豊かで可愛いです。
カーテンの向こうから手を振って合図するコマが挿入されていますが、態々スポットライトも入れていたから、重要な演出と言う判断なんだろうなぁ。アブドゥルの勝手な判断ではなく、リックの指示だと言う事を明確にしているのでしょうが、それなら最初にヘルムの入室を拒否するタイミングでも手を振っているので、そちらを入れるべきでは、と思います。
リックのトレードマークとも言える白いスーツジャケットに蝶ネクタイの衣装は、実は余り私の好みでないのですが、3ピース揃えて膨張色の白を着ているのに着膨れたところがないスタイルは感嘆。
ところで、喧嘩を売っておきながら薦められるとバーで一杯飲み、サービスと言われているのに小切手を置いていくドイツ人ヘルムって、美形だけどアホの子なのでは……?

【1幕第4場 カジノ(A)】
闇ビザの売人ウガーテは、信頼するリックに今夜の取引相手に売る特別通行証を預ける。

以後、こんな感じの場面名ばかりが続くので、基本的にリックのカフェ内で起こる小さな出来事のお話であることが良く分かります。
「君を見直した」と言う台詞に対するウガーテの反応が、舞台ではイマイチ掴めなかったのですが、映像で観ると喜んでると言うのが正解みたいですね。外交官殺害に関して、ウガーテ自身が殺人を犯したのか、死体漁りをしたのか謎ですが、リックの台詞自体は皮肉だと思っていたので、どちらにせよ後ろめたい気持ちを刺激されるのではと思っていました。
皮肉に気付いていないのか、皮肉でも嬉しいくらいリックに心酔してると言うことかな。

【1幕第5場 カフェ(B)】
闇市のボス・フェラーリからカフェを譲るよう頼まれるが、リックは断る。

サムの歌は、東京公演とメロディが違いますよね? DVDで初めて聞いた時は違和感があったのに、何度もリピートしてると東京ではどうだったか忘れてしまいました。
「此処が気に入ってるんで」と言う台詞に、密かに嬉しそうな顔を見せるリックは、本当にサムが好きですね。
フェラーリと話している間、数回上手を向くのはイヴォンヌの様子を伺っているのかな?
リックがイヴォンヌにどんな仕打ちをしたのかは、映画版から続く永遠の疑問です。リックは他人に興味のない男だから、期待も持たせないし、特別悪意ある行動もしないと思うのですが、イヴォンヌが一人で盛り上がって裏切られたつもりでいるほど頭のおかしな女だとも思えないんですよね。
ところでこの辺、盆が右へ左へ回って大活躍ですけれど、自分が盆回しの担当だったらと想像すると責任重大で怖いです。

公演から約1年。今この時期に改めて観直す「カサブランカ」DVD感想を始めたいと思います。

【序】
1940年、アメリカ人の男リックがフランス領カサブランカに流れ着き、カフェの経営を始める。

得意のトレンチコートを羽織った背中でのセリ上がりは、最高のお披露目だったと思います。在団歴が生む男役芸と言うものを、確かに証明しています。この時リックはかなり痩せていたと思うのですが、ダブルのスーツの御陰か、身体に厚みがあるように見える気がします。
ふ、と吐き出す紫煙にもくらくらします。実生活では麻生は煙草が嫌いなのですが、リックが煙草を吸う仕草は格好良いので許すと言う、所詮現金なファンです。
どこか空虚な歌声に併せて、映像が動き群衆が登場してカサブランカの町が出来上がる様は、モロッコの乾いた風が吹いているような空気を感じます。
「世界初ミュージカル化」「スポンサー付きの1本物大作」と鳴り物入りだった反面、静かに開始するプロローグが、独自の作品色で面白いです。

【1幕第1場 裁判所前広場】
1941年12月1日、カサブランカはナチスから逃れようとリスボン行きのビザを求める亡命者で溢れている。この日は特に、ドイツ外交官が殺され特別通行証を盗まれた事件で、街中がごった返していた。

亡命者によるコーラスが2曲続く、聞き応えのあるシーン。特に1曲目の「ヴィザを私に」の緊迫感が大好きです。
多数登場している下級生探しをするのも楽しいですね。蒼羽りく&天玲美音の映り込み率が高い気がするけれど、単に私が確実に見分けられるキャストだからそう感じるのでしょうか。
今頃気付いたこととして面白いのは、亡命者の衣装の色です。グレーとか褪せた色なのですが、全体を観ると青系(一部緑)なんですね。赤色は皆無。この辺は、何かを暗示しているのかな。この舞台全体も、赤い色を避けた色使いですよね。モノクロ映画のイメージを壊さない為でしょうか。

【1幕第2場 空港】
ドイツ軍シュトラッサー少佐がカサブランカに着任する。フランス警視総監のルノーは、外交官殺害の犯人は今夜リックのカフェに現れると報告する。

シュトラッサー少佐は、登場シーンのスマートさに、ただの悪役でない矜持を感じます。同じ悠未ひろが演じた氷(シャングリラ)も悪ではない敵役でしたが、少佐くらい抑えた演技の方が個人的に好きです。
久し振りに観ると、ルノー大尉の肉布団の厚さに改めて感心します。手足が長いため、ちょっと体全体のバランスが劇画的なのはご愛嬌。本人は動き難くないのかな?
軽々と演じているので忘れがちですが、幕前に一人で、背後の盆は回っているので立ち位置に注意が必要、且つ小物の扱いもある、難しいシーンですよね。しかしこの余裕があるように見える所が、実に大尉らしくて良いと思います。