花組「ファントム」15:30回(VISA貸切)観劇。
宙組2番手でお世話になった蘭寿とむのお披露目と言うことで駆け付けました。
VISA貸切では、最初に司会者が観劇会の案内をします。
その際に、貸切公演を「三井住友VISAカード観劇会」と言っていたのが、今回は「VJAグループ観劇会」に変更されていて、関連VISAカード会社の名前を延々列挙されたので仰け反りました。
先日、星組と宙組の貸切公演では「三井住友VISAカード観劇会」でしたが、調べてみたところ雪組「ロミオとジュリエット」も「VJAグループ観劇会」だったようです。VISAがスポンサーの公演だと「VJAグループ」になるのかな?
少し気になったので、最初に触れてみました。
あと、抽選会の景品としていつもの次回貸切公演チケットやサイン色紙の他に、文具などもありました。同行の友人が当てた公演ボールペンセットは、ファントムのロゴ入りフリクション2本+替芯付のセットと、意外に実用度が高く、今後も用意されたら嬉しい景品でした。
開演前の組長挨拶では細々と協賛の御礼を述べていて、これも珍しいなと思いました。
「ファントム」はこれまで宝塚で2度、外部で2度上演されていますが、私は初めての観劇。
ガストン・ルルー原作の「オペラ座の怪人」を原作にしながらも、劇団四季や映画で有名なアンドリュー・ロイド・ウェバー版と異なる展開、楽曲を使用していることや、代表的な曲などは把握しているので、あまり初めてと言う気はしません。
私個人としては、ロック調「オペラ座の怪人」より、優しく分かりやすいメロディラインの「ファントム」が好きです。新曲はあまり印象に残らなかったけれど。
演出は、中村一徳。
花組ショー「ラブ・シンフォニー」で苦手意識を持った演出家ですが、良かったです。
回転扉から従者たちが登場するシーンや、エリックがクリスティーヌに声を掛けて姿を消すシーン、渡せなかった白い花束など、お約束的だけれど外さない演出でした。また、群舞の使い方が巧く「The Story of Eric」の人の動かし方は好みでした。振付のKAZUMI-BOY先生の功績かも知れませんけれどね!
小舟は盆を回して動かしているのかと思いきや、自在な動きを見せたので、単体で動くみたいですね。不思議な大道具でした。
ただ、1幕5場リハーサルや同9場のクリスティーヌ誘拐は構図がゴチャゴチャしたドタバタ劇で、何が起きているのか分かり難かったです。
海外ミュージカルらしく、先ずはオーバーチュアから開始。
その瞬間、オーケストラに安心しました。クラシック調は弾きやすいと聞いた事がありますが、先月とは比べ物にならない安定感。いつもこういうメンバーで構成して頂きたいものです。
指揮の塩田明弘先生の指導があったと言うコーラスは、迫力に溢れていて花組の底力を感じました。
と言う事で、土台は文句なし。後はメインキャスト……と言うことで各人評です。
ファントム(エリック)@蘭寿とむ
お披露目演目が発表されたとき、正直「芸風に合っていない」と思いました。が、それは私の早計でした。
蘭寿エリックは、「少年のまま成長した無垢なエリック」でした。
彼は仮面を付けて外界から隔絶された9歳の子供のまま、身体が大きくなっただけなのだ、と思います。エリックは脚本上、傲慢、優しさ、残酷さ、無邪気さ、と一瞬ごとに見せる面が変わる不安定な人なのですが、これが子供と思うと自然でした。
それは、猟奇路線や耽美路線から外れた、新しいエリック像でした。舞台で白く発光し、地下に引き籠ることなく、ダンスナンバーが増えて活動的ですらあります。
ただ、この演技論は、エリックの狂気が現れる「森のピクニック」シーンには合わない気がしました。今回は新曲が追加されているのですし、カットされていても良かったのでは。
歌は、特徴的な癖を封印して、伸びやかに聞かせてくれました。
クリスティーヌ@蘭乃はな
クリスティーヌは、難役。私ならオファーが来ても断ります(笑)。
蘭乃はなはどうだったかと言えば、まず「天使の歌声」と絶賛を浴びる役と言う時点で、ハードルがあったと思います。本人比では上達していたので、敢闘賞は進呈したいかな。
主演娘役になって3回目の観劇ですが、どうも台詞が上擦る感じなので、台詞回しをもう少し研究して欲しいですね。
良かった点は、芝居の表情。森を演出する舞台道具を広げ「僕の領地」とご満悦のエリックに戦いていて、「天使の歌声」だとしても、中身は「天使」じゃないんだと伝わってきました。
だから、エリックの素顔を見て逃げ出してしまう展開に、説得力がありました。
クリスティーヌは、確かにエリックを愛していました。ただ、二人ともが幼い故に、母親の愛と、恋人の愛が同じものだと勘違いし、失敗したのだと思います。
キャリエール@壮一帆
壮は軽妙な芸風の持ち主ですが、今回は老け役、しかも主演(同期生)の父親役と言うことを意識してか、非常に押さえた演技で重みを出そうとしていました。
芝居のピースとしては正しい選択だったと思いますが、持ち味の封印により、魅力に欠けてしまっていたのでは、と感じます。宝塚の楽しみには「スターを観る」と言う面があるので、少々欲求不満。
シャンドン伯爵で見たかったです。
シャンドン伯爵@愛音羽麗
育ちの良さがあって、いかにもな貴族のボン。
小柄な人ですが、スターオーラで強そうに見えるので、従者に囲まれても1人切り抜けてしまう辺りは説得力がありました。蘭寿エリックも強いので、対決する2人のパワーバランスが対等で良かったです。
カルロッタ@桜一花
どう演じるか楽しみにしていましたが、さすがに芸達者。好演でした。しかし2階席Bから見ていると、小柄なので埋没する局面があったな、と思います。
ショレ@華形ひかる
意外と出番があって驚きました。
小物感漂う中年の男。脇を締める役が定着してきたことに、ちょっと寂しさも感じつつ……。
若き日のキャリエール@朝夏まなと
「The Story of Erick」で明らかになるキャリエールの所業は、ちょっと突っ込みたいものです。しかし、キャリエールに若さがあると、説得力があるんだな、と感じました。ベラドーヴァへの愛と秘密を抱えてどこかおどおどした雰囲気、「やめろ!」の絶叫、赤ん坊の顔に対する戦きが、リアルな「弱い男」でした。
その他、従者たちがイケ面揃い。
文化大臣@紫峰七海も良い色悪。かなり凝った小芝居をしていたので、もう少ししっかり見たかったです。
フィナーレは舞台上も客席も激しく盛り上がり、やはり花組にはショーが必要だと思いました!
なお、男役歌い継ぎの望海風斗中心のトリオで上手側にいた男役が、好みの顔だったので、情報をお待ちしております。