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大空祐飛さよなら特集7日目。
来週には本拠地での退団公演が始まりますね。今回は遠征しない事にしたので、いまいち実感がありません……。

5作目、全国ツアー公演「銀ちゃんの恋」
→公演詳細

まさかの再演!
花組版のテンポ、台詞回し、頭の中に出来上がっているため、宙組版観劇1回目は変な気がしました。正直、今でも北翔海莉が演じたヤスには、本人の巧さとは別の次元で違和感を持っています。
花組でヤスを演じた華形ひかるは、決して巧くはなかったけれど、銀ちゃんを愛する舎弟であり、同時にそんな自分が好きだと感じられる役作りでした。
けれど、宙組版のヤスは銀ちゃんの舎弟では収まらない、スターになりたい夢を諦め切っていないヤスだったと思います。
それだけに、銀ちゃんの孤独は一層強まっていたのかもしれません。

孤独

この企画は「2人で組んでるシーンを描く」ことを秘かなルールにしていたのですが、宙組版銀ちゃんは独りが相応しいと思います。

一日遅れてしまいましたが、宝塚宙組全国ツアー公演「銀ちゃんの恋」@相模大野の25日18:00回を観劇。
最後に関東圏に戻って来るツアー日程だったのに、千秋楽(26日)チケットが取れず残念でしたが、2週間前の川口から大きくパワーアップした舞台を観る事ができて良かったです。

グリーンホール相模大野は、予想外に大きなホールでした。
夜公演のためか、川口と違い音響がクリアで安心しました。
ぎっしりの観客が、笑うところは笑い、時に息を詰めて芝居を追う感覚、面白かったです。1幕からハンカチのお世話になって、頭が痛くなりましたが。
しんどいお芝居なので何度も観たいとは言わないのですが、それでもやっぱり銀ちゃんは好きだな、と思いました。後は演出とそれに伴う構成が、何点か良くなればなぁと強く願います……。

以下、深化していたり、成程と考え直した部分について。

まず、前回私の中でしっくりこなかった橘@春風弥里が変わっていました。
花組版橘とはまったく違う性格だったんですね。
花組版橘は、気質が銀ちゃんに似ていて、シンパシーも感じていた部分があるのに対し、宙組版橘は、銀ちゃんとは違う映画観を持ち、銀ちゃんとその周辺の関係性を嫌悪しているのだと思います。
作品を壊さず全く違うキャラクターに仕上がった橘に感服します。

ヤス@北翔海莉の例の台詞は、今度はちゃんと「(才能が)ありません」に聞こえました。けれど、銀ちゃんへの反抗心はやはり根底にあると感じます。
小夏への暴力シーンではこたつを引っくり返す熱演で、ぞっとするモノがありました。
しかし私はどうしても、階段落ち当日の殴られた瞬間と、落ちた後のヤスの台詞は、花組版のイントネーションがしっかり脳裏に焼き付いているのですね。二人の関係性が変わった結果、芝居の方向性も変わったように思います。

人吉の会長@寿つかさは、更に面白くなっていました! 階段を登り降りするだけで笑わせるコメディセンスは素晴らしいと思います。
前回印象が薄かったマコト@七海ひろきは、橘の挑発に対し激昂するシーンで、いつも気弱そうに子分をしてるマコトの本質が見えて格好良かったです。
スポンサー@風羽玲亜は、嫌味っぷりや小物っぷりが凄く凝縮されていて面白かったです。

また、改めて、朋子@すみれ乃麗が良かったです。
正直な気持ち、すみれ乃麗の演技に感心する日が来るなんて思ってもいなかったので、心底仰天しました。もしかして、演技ではなく素かも?と疑っていますが(笑)。
宙組版朋子は、銀ちゃんに恋したことが一度もなさそうです。
花組版の朋子は、読者モデルか何かで撮影現場で見掛けた銀ちゃんのファンになって、自分からアタックした印象でした。一方の宙組版は、銀ちゃんがきっと頑張って口説き落としたんですね。ちやほやされるのも、振り回すのは楽しいから。彼女は銀ちゃんの映画を一本も観ていないと断言できます。
私の周辺ではシャングリラのソラ等で見る大空氏のビジュアルを「同じ三次元の人間じゃない」と表現するのですが、朋子はまったく違う意味で地球人じゃないと思います。

なお、初見の友人と蒲田行進曲を観ている友人を連れて行ったところ、二人ともオチが理解できていませんでした。ヤスがフィナーレ衣装に着替え済なので、ヤスが生きていることが巧く分からなかったようです。この事から、「棺桶から出て来る」「ヤスがヤスの格好で現れる」と言う2点の演出は残すべきだったと思います。
でも今回追加されたフィナーレはとても良かったので、難しいですね。
それと、2階から観ると客席降りや客席登場がまったく観えず閉口したので、多用は勘弁して頂きたいなと思いました。

後は、多少時間が掛かっても良いのでDVDが出ることを祈って終わりたいと思います。

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銘打った題名に反して、イラストは変わらないもの。

今更ですが、宙組全国ツアー版「銀ちゃんの恋」DVDが発売されないらしいと知って、打ち拉がれています。発売リストに出て来ないと思ったら、そういうことか!
舞台は一期一会、生を脳裏に焼き付けろと言うことなのでしょうか。

正直な気持ちとしては、宙組版を音響の悪い川口で1回観ただけの現時点では、花組版の方が好みです。どちらが良い悪いではなくて、敢えて言うならばエンターテイメントと小劇場的な濃い芝居の差でしょうか。
でも、宙組版には宙組版の良さがあり、更にこれから公演を重ねていくことによって花組版とは違う魅力を開花させる期待があります。
また、純粋に役解釈として比べたいところも出て来てます。例えば、橘の「銀の野郎、いい子分持ってますね」のシーンは、宙組版の台詞はアリだと思いました。花組版の橘とは、何かが違っていたからです。でもその「何か」が具体的に何なのか、1回では見抜けなかったので、DVDで見比べたいと思っていました。
返す返す残念……。

宝塚宙組全国ツアー公演「銀ちゃんの恋」@川口の14:00回を観劇。

ちなみに、2年前の花組公演「銀ちゃんの恋」の感想およびDVD感想はタグをご利用ください。
前回の公演時の印象が強く残っているため、比較は出てしまうと思いますが、あしからずご了承ください。

全国ツアー公演は初めての観劇。
平日昼の部なのに、開場すると入場口に長蛇の列が出来る人の多さに吃驚しました。お手洗いも凄く混んで、二幕に間に合わない人が続出して大変でした。
座席も含めて、ホールは結構広いんですね。こんな大きな舞台で「銀ちゃん」をやるなんて大丈夫か、と幕が開くまでは心配になりました。実際に開幕したらあまり気になりませんでしたが、やはり濃密な関係のお話だけに、狭い劇場で演じる方が合ってると思います。
音響は、とにかく難しい事が判明。1幕はマイクなしかと思うくらい効いておらず、初見では聞き取れなかったのでは。余程クレームがあったのか、逆に2幕はマイクが入り過ぎでエコーが掛かっているレベルでした。どちらにせよ聞き辛いけれど、明日はまた別の会場だから、調整とか出来ないんでしょうね。
お客さんは、全体にホットでした。笑いがもの凄く色々な場所で発生して、例えば人吉のヤス母との会話シーンなど、そこで笑うのか?と思うような場面もかなりウケていました。手拍子も熱く、パレードでは表打と裏打が入り乱れてもの凄いテンポになってました。
正直なところ、全国ツアーで「銀ちゃん」を演じることへの不安・不満もありましたが、客席の反応を見ている限りは“アリ”でした。

銀ちゃんこと倉丘銀四郎@大空祐飛は、台詞トチりや腕時計と思われる小道具を落とすなどのトラブルもありましたが、どこまでも「大空祐飛」ではなく「銀ちゃん」で、今見ているのは誰なのだろうと真剣に思いました。
ところで、羽根を背負って登場した瞬間、客席から大笑いされたトップスターってこれまでにいたでしょうか(笑)。電飾衣装のウケが凄く良くて、最後の大爆笑ポイントになっていました。

小夏@野々すみ花は、本当に当たり役。
前半は花組版よりぐっと大人っぽい小夏で、お腹が大きくなってからの方が少し若く感じました。
強いて苦言を呈すと、いつもこの身体の細さと美しさを保って欲しいのですが……。

実質的な主人公・ヤスこと平岡安次@北翔海莉。
「お前に才能があるのか!?」と怒鳴られたヤスが「ありません」と答えるシーン、前述通りマイクの調子が悪かったためか、何故か「あります」に聞こえました。
ただの空耳ですが、その空耳によって、なぜヤスは家庭内暴力に及ぶのか分かったように思います。
華形ヤスは、銀ちゃんとの依存関係を壊すことを考えていない。銀ちゃんが最優先で、純粋に階段落ちが巧くいかないかもしれない焦りと恐怖で、弱者たる小夏に八つ当たりをしていたと思います。つまり、ヤスも子供だった。
けれど北翔ヤスは、「銀ちゃんがなんだ」「俺はスターになりたい」と言う気持ちが根底にあるような感で、より原作のヤスに近いのではないかと思いました。
ところで、相当背中を丸めているのか、ヒールの差なのか、銀ちゃんより小さく視えて吃驚しました。

数少ない花組公演からの変更点である専務@悠未ひろのキャラ付けは、失敗してしまった気がします。ソロも追加されたので目立ちはするけれど、ラストで見せる思い切った行動の格好良さは減少して、結果、本作に沢山居るただの変人になってしまった気がします。
悠未ひろの使い方としても、勿体なかったですね。
逆に、朋子@すみれ乃麗と、女秘書@愛花ちさきは、二人の正しい使い方を見たように思います。女秘書は、ししとうのスナックから銀ちゃんがソロを歌い始めたとき、後ろでバタバタ動くのを控えて貰えれば、後は文句ありません。

橘@春風弥里は、ちょっと期待値を高くし過ぎていたでしょうか……。
花組版で演じていた真野すがたについて率直な感想を述べると、これと言って何が出来るわけでもない役者だと思うのですが、本人の「キャラ」で良い味を出していたことがよくわかりました。

監督@寿つかさは、過不足ない仕事ぶり。それより、バイトでこなしている人吉の会長が凄い良い味を出していました。立ち去る姿に、拍手が発生したくらいです。
トメ@風莉じんは、「ジャンピング土下座」を魅せてくれたので大満足。全体の雰囲気も壊さない、流石の芝居巧者でした。
残る子分のジミー@愛月ひかるは、空気が読めなくてちょっと美味しい奴だと判明。マコト@七海ひろきは、べったりした七三みたいな髪の毛でかなり挑戦していましたが、あまり印象に残りませんでした。保険屋との眼鏡対決くらいかな。
玉美@妃宮さくらは吃驚しました。オペラグラスを忘れたので顔をちゃんと確認できなかったけれど、かなり思い切ったメイクですね。感服します。
チーママ@花露すみかは、花組版の月野姫花の浮き世離れ感に対して、普通にいそうな地に足着いたママさん。どちらもアリだと思います。

階段落ちの演出は、少しずつヤスが階段を落ちてポーズを取ったところを、照明が当てて行くと言う形に変わっていました。前回のは眼がチカチカしたし、充分落ちている事が分かるので良いと思います。
今回新たに付けられたフィナーレへの繋ぎのため、ヤスの葬式で棺桶から出て来る銀ちゃんはカット。ちょっとオチが分かり難くなっちゃった気がします。
でも黒燕尾の男役によるダンスと、ちょっと吃驚するような接触があるデュエットダンスは良かったので、まぁフィナーレなしよりは良いでしょう。
ちなみに、男役ダンスで最初に悠未と春風がツートップで踊っていた際、長身の春風ですら小さく見える悠未の存在感に戦きました。あと、春風は凄く指先まで真剣に気合を入れて格好よく踊っているのに対し、悠未は経験値分余裕があるように見えたのも、面白かったです。

結局のところ、現時点では思い出補正もあって花組版の方が面白かったように思いますが、宙組版はまだ深化の余地があるとも思いましたので、全国でどう熟成されるか楽しみにしています。
と言いつつ、全国回った後の月末(相模大野公演)まで、残念ながらお預けです。

銀ちゃんの恋の感想では、毎回取り上げる場の粗筋をまとめて書いていましたが、今回の部分だけは敢えて前半後半に分けます。

【18〜19場】
階段落ち当日、横柄に振る舞うヤスを、遂に激怒した銀ちゃんが殴りつけると、ヤスの蟠りが氷解する。
遂に「池田屋階段落ち」が撮影がされ、階段から落ちたヤスは絶命する――

銀ちゃんがトメたちを抑えると、橘も子分を下がらせる二人の関係が好きです。「銀ちゃんが、ゆく」で敢えて銀ちゃんが自分の死を橘にだけ知らせた事からしても、最大のライバルは最大の友人なんですね。ヤスを追い掛けようとする銀ちゃんを止めるのも、橘にしか出来ない事でした。結局、この映画に橘が配されていたことは、銀ちゃんにとって複雑な反面、楽しく嬉しい事だったろうなぁ。
スポンサー@紫峰七海の「チョイ悪親父」扮装がハマっていて、花組ヒゲ部の人材豊富さにトキメキを覚えます。カメラマン役と同じ人とは思えませんね。しかし、写真撮影の瞬間に橘チームの意地悪(ワザと変なポーズを決める・後ろを向く等)がなくて、とても残念でした。
ライターの火は本物ですね。そう言えばドラマシティは火気OKの劇場でした。でも煙草の火はどう処理したんでしょう。殴られた後、ヤスは手に持ってないですよね。

当たり前のことですけれど、本当は、ヤスだって落ちる事が怖かったはず。蹲るような寝方は、その恐れを凄く現していると思います。
「晩飯の後にしてください」は、理屈付けてるけれど、死にたくない、と思う本音が出たのではないかな。
でも十年間銀ちゃんに付いてきて、その集大成として落ちる覚悟を決めたんでしょうね。ずっと銀ちゃんの付き人をしていた自分の価値を認めるために。
階段落ち撮影開始直前、銀ちゃんとヤスはお互いを見合って、でも何も語らなかった。ヤスは、銀ちゃんの言葉を待っているような様子が見えたけれど、何と言って欲しかったのだろう。結局、何を言われてもヤスの覚悟はブレたかも知れないですね。

小説版では生き残った事でヤスは逆に人生に失敗してしまったけれど、ここで銀ちゃんに同格と認められて、その腕の中で死ねた舞台版ヤスは、幸せだったんだなと思います。

【20場】
ヤスの葬式が行われている。と突然、銀ちゃんが棺桶から飛び出し、死んだ筈のヤスも現れる。その場に響く監督の「カット」の声。
なんと此処までが映画「蒲田行進曲」の撮影だったのだ。大団円――

粗筋の締め方はちょっと悩みました。私はこう解釈している、と言う事でお願いします。要は映画版準拠ですけどね。
フィナーレでとても可愛い笑顔の日向燦を見て、とても切なくなりました。その他のメンバーも全員笑顔全開で、良いカンパニーだったなぁと改めてこの公演に参加できた奇跡に感謝です。
DVDには終演後挨拶まで入ってるんですね。危ない遊び(降りかけの緞帳前に人を押し出す)をしてるあたりに、学年の遠慮がなくて驚きました。でも華形は裏で土下座していそうなイメージがあります。

「太王四神記」→「銀ちゃんの恋」と来たら、段々過去に遡ってますので、次は「HOLLYWOOD LOVER」でしょうか。
あの公演は、主催イベントと日程が被ってるのに危うく見に行こうとした魔力ある作品なので、買おうかなと思うだけでドキドキします。