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宝塚雪組「ドン・カルロス/Shining Rhythm!」11:00回を観劇。

ミュージカル「ドン・カルロス」は、元ネタを爽やかなハッピーエンドに改変したif歴史物。
とても美しい作品でした。見た目も、作品の心も。
フェリペ二世の幻覚シーンの光と闇の美しさは、もう一度観たいシーンです。
机を叩いてタップ音のようなパフォーマンスを入れた楽しいナンバーや、アカペラで始まる群衆のコーラスなど、今回は音楽的にも良かったです。ただ、1曲ずつが少々長めなのが長谷川雅大先生の悪いところですかね。

ショー「Shining Rhythm!」は、中村一徳先生らしい群舞、群舞、群舞!のショー。
「Shining Cool Rhythm!」と「光と影」が断トツで好きですが、色使いなど全体的にお洒落で、番手にも配慮しつつもスターを満遍なく配置しているのも楽しくて良かったです。

華やかなコスチュームプレイと派手な群舞で、宝塚を観たという満足度が高い両作品でした。
あと、雪組娘役勢の細身具合に驚きました。

ざっとしたキャスト感想は下記の通り。
音月桂のカルロス王子は、心優しく、秘かに傷付いても表面上は穏やかで義務を第一に考える大人な少年。とても素敵でした。そして歌声に浸らさせて頂きました。
舞羽美海は歌ったり踊ったりする姿は今回が初認識。芝居のレオノールは、序盤は弱々しい楚々とした女性かと思いきや、しっかり者で好感が持てるヒロインでした。ほっそりとした細身のシルエットが美しく、振舞いもたおやか。歌うと声が細いのが少し気になりますが、昔ながらの寄り添い系の娘役で好感が持てました。
早霧せいなは、とにかく歌唱力が残念。芝居歌はまだ良かったのですが、問題はショー。男役を率いて踊っている間は格好よくてテンションが上がったのに、歌い出した途端に椅子から崩れ落ちました。
未涼亜希は、「まっつ無双」と言いたくなる活躍っぷり。フェリペ二世は、人としては非常に面倒くさい人ですね(笑)。しかしこの人のドラマを含んだ声音で語られると、納得させられます。歌って踊っての大活躍で、特に「光と影」での珍しく乱れた前髪姿の格好よさに痺れました。
異端審問長官@奏乃はるとは、まるでトート閣下のような白塗り化粧で、彼こそが異端な存在感を発していて印象的でした。
フアナ@涼花リサは、最後にいい役を当てられていて良かったと思います。不器用な家族たちへの深い愛情を感じました。
なお、私が秘かにご贔屓の沙央くらまは、芝居では休演しているのかと疑うほど出番がありませんでした。やっと登場した時に「あ、いた」と思ってしまったほど。正しい意味で役不足だったと思います。

宝塚雪組公演「ロジェ/ロックオン」16:00(VISA貸切)観劇。
久し振りの雪組です。初観劇がこの組だったことから愛着を感じていや私ですが、なんと雪組観劇は2009年1月の「カラマーゾフの兄弟」以来でした。
白羽ゆりの後にトップ娘役に就任した愛原実花は、今回初めて観るくらいの勢いなのに、これで退団。公演期間が1ヶ月になったことによるサイクルの早さを、こんなところでも感じます。
ついでに、下級生は全然分かりませんでした。登場人物が少ない正塚先生の芝居で、逆に助かった感じです……。

今日の貸切司会は、開演前、休憩の抽選会、終演後で3つの衣装に着替えて登場し、大変会場を沸かせました。
今まで、こんな面白い司会に当たったことはなかったので新鮮でした。
ちなみに、抽選会のお手伝い生徒が舞羽美海だったのも驚きでした。まったく初見の生徒が現れることが多いので、娘役とは言えスターとして既に活躍している生徒が出て来たことで、少し得した気分です。拍手も、いつもより大きかったような気がします。

本公演は、男役トップスター水夏希の退団公演。
宛書き作品による退団公演は、どのくらい「サヨナラ仕様」かと言う点が気になるものですが、身構えていたほどサヨナラ演出はありませんでした。逆に、特別視しない辺りが水らしい演出と言えるのかな、と思いつつ、それでも芝居ラストで、本舞台に集合した全組子を銀橋から見つめ、去って行くと言う演出には揺さぶられました。

全体に熱演で、涙混じりの台詞が多かった芝居「ロジェ」。席のせいか、全体に台詞が聞き取り難くて、台詞劇である正塚芝居なので少し苦戦しました。
大道具も工夫されていたし、ブエノスアイレスのシーンは照明を巧く絡めたタンゴシーンがスタイリッシュで、全体に「格好良い」印象でした。
ただ、ロジェ@水夏希は外見に対して中身がかなり若い人物。ヒロインに当たるシーン等リアリティあるキャラ作りだったけれど、人物像として格好良いか?と問うと難しいところに感じました。ラストシーンが、彼がこれから本当にちゃんと独りの人間として生き出すスタートラインですね。
レア@愛原実花は、ある意味ロジェの人間性の被害者。彼女の好意がきちんと見えるだけに、ロジェからの仕打ちがちょっと胸に痛かったです。良い台詞は大体彼女のもので、作中で一番大人な人物かも知れません。
ちなみに彼女は台詞がしっかり聞き取れたので、発声を相当鍛えているのかな。歌は、タカスペの時に比べると普通に聞ける程度だったので、努力の跡を感じました。
ヒロインではなかったレア同様、二番手の役にしては物足りなかったリオン@音月桂。ロジェとどういう関係か説明されず、利用されてるように見えたのが敗因かな。リオンがロジェに好意を持っているのはこれまた分かるだけに……と思うと、ロジェの側が人の機微に疎いのがすべての問題なのかなぁ。
バシュレ@未沙のえるは、演技巧者であることは分かっていても、最近少し使われ過ぎかなと思っていたので、今回くらい控えめな存在感は良かったです。
組長のカウフマン@飛鳥裕は、悪人役ですね。外から見てる限りでは人柄が温厚そうに見えるので、悪役は似合わない気がしますが、ラストの立ち姿も少し悪そうな顔だったりして、興味深かったです。
3番手格スターのクラウス@早霧せいなは、実はこれが初見。ちょうど私が宙組を見始める前に異動して、以来雪組大劇場を観ていないのですね。シャープで格好良い姿で、クールな印象でした。
逆に「マリポーサの花」に引き続きコメディ役で、そちらの方面に才があることが判明したマキシム@沙央くらま。私は、早霧のシャープさより、沙央の少し幼い丸い顔立ちが好きのようで、ショーでも良く眼につきました。
シュミット@緒月遠麻は、出番が少ないのでファンは消化不良を起こさないか心配ですが、ある意味美味しい役なので仕方ないか。根が善良なのが一目で分かる感じで、良い配役だったと思います。ただ、最近回って来る役に対して、未だ声が少し若いかなとも感じます。
話のスケールが大きい(ナチ戦犯やユダヤ絡み)割に、実はコアはとても小さい(ロジェが一歩大人になる)内容なので、収まりはあんまり良くないのですが、登場人物の誰かに感情移入して観ると、凄い緊張感があって面白い芝居だと思います。推測して追跡し、途中に得た情報でまた推測が変わっていくのも面白い。でも同じ正塚×水コンビなら「マリポーサの花」の方が、パッと見て格好良かったですかね。

ショー「ロックオン!」はとにかく会場全体からの熱い拍手で、観客が参加している感が強いショーでした。プロローグから大盛り上がり。
色々な展開があったけれど、私はゴシック調の「Labyrinth」の場面が一番好みでした。黒孔雀@美穂圭子の歌も相変わらず素晴らしかったし、扇の小道具や、娘役が活用されていたのも嬉しいところ。途中、上手の柱風の大道具が少し倒れて、孔雀の復活シーン辺りで持ち直しましたが、あれは事故ですか?
ちなみに、日替わり演出シーンはラテンだったようです。
黒燕尾はロック調で、前回の「ファンキーサンシャイン」とはまた違う新しい境地。しかし群舞の揃う雪組なので、ロックでも綺麗でした。
こういう盛りだくさんなショーを観ると、1回では足りないなぁと心底思います。

私にとって水は、お披露公演を見たトップスターの初退団だと言う事もあり、時代の移り変わりを感じます。
男役・水夏希がこの世からいなくなることが、退団公演を観てもまだ少し信じられない気分です。