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最近観たもので色々後から思い付いた事など。

花組「虞美人」の項羽。
真飛聖は熱演していたし、脚本上も「高潔過ぎて他人が付いて来られないタイプ」に変えられていて、主人公として成り立っていたと思います。そんな信念ある男が、その信念故に自滅すると言う筋書きは、私好みでもある筈。
その上で、でも項羽が格好良いとは思えなかったとつくづく感じます。
その原因を考えるに、恐らく、戦場で鬼神の如く強いと言う項羽の姿が、舞台上で示されなかったからではないでしょうか。何度も言葉では言われていたけれど、直接剣を抜いて人を斬るシーンは2回とも不意打ちだったし、後は見得を切る程度で、剣舞ダンスがあるわけでもなく、本当に強いと言う印象を受けなかったように思います。
このことは、「強いと何度書いても、描写でそれを見せないと本当に強くは感じてもらえない」と言う教訓として自作に生かしていきたいです。

「スカーレットピンパーネル」の役替わり。
龍真咲のショーヴランも、明日海りおのショーヴランも、それぞれの面白さがあったけれど、千秋楽を迎えた今思うのは、柚希礼音ショーヴラン(初演)と龍真咲アルマンの組み合わせが観てみたい、と言うことだったりします。
面白い取り合わせになるんじゃないでしょうか。

明日は宙組「トラファルガー/ファンキーサンシャイン」東京公演の初日。
残念ながら今仕事が忙しくなってしまい、観劇数は手持ちの土日チケット分以上増やせそうにありません。当然、初日も行けず。My初日はなんと10日後の19日です。
初見の時はショーに「通えないかも」と思ったけれど、しばらく離れて、公演写真などを観ていたらもの凄くリピートしたい気がしてきました。早く見にいける日がきて欲しい!
ライブ感を大切に、これから1ヶ月の公演を楽しみたいと思います。

宝塚花組「虞美人」11:30回観劇。
東京宝塚劇場の公演開始時間が遅くなってから、初めての観劇。朝はゆっくり出来て良いですが、夕方の回だと終わりが遅くなってしまうのが悩みどころですね。

項羽@真飛聖は、ずっと熱を発する役で大変そうでしたが、さすがの熱演。
個人的に、史実上の項羽と言う人物自体は如何なものか、と思うのですが、トップの役としては一本気の曲がれない男として巧くまとめていたと思います。
虞に惚れ込んでるのが可愛くて、「がおー」のシーンは笑っちゃいました。

虞美人@桜乃彩音は、とにかく夢々しい美しさ。天女のようでした。これが退団オーラと俗に言われている輝き?
声も、いつもよりまろやかに感じました。時々キンと響くのが苦手だったので、これは嬉しい最後の変化でした。

劉邦@壮一帆は、キャラが馬鹿過ぎるのでは……と最初戸惑いましたが、威と出会って以降は苦悩があり良かったです。
威との歌で、最後のフレーズがマイク切れちゃうミスがありましたが、二階でも無事聞き取れました。あの台詞があるとないとでは、印象が違いますよね。

韓信@愛音羽麗は、久し振りに男役を見ましたが、凄く格好よかったです。骨太な役が似合いますね。
私的に、今回のビジュアル大賞です。

軍師は二人とも素晴らしい演技でした。
まず、范増@夏美ようの老軍師っぷり。最期のシーンは、メイクを変えているのでしょうか? どっと老け込んで疲れ果てた様子で、涙を誘いました。
そして、張良@未涼亜紀。軍師らしい醒めた瞳で最高でした。役としても非常に美味しいですね。史記だと、反間の計は陳平が出すようですが、舞台では張良が范増を陥れ、その策に自身も痛みを感じている様子が良かったです。もう少し(脚本が)二人の関係を深く描いてくれたら、ここは名シーンになっていたかも知れません。

呂妃@花野じゅりあは、この手の役は最早お手のものでしょうか。虞を嘲笑いながら、同時に泣いているような芝居に震撼。ただし、太王四神記での役と同じ系統過ぎて、本人的には損してるかも知れませんね。
プロローグの恨み言シーンは、丸々割愛しても良いと思います。

不安だった桃娘@望海風斗は、意外に可愛くて「アリ」だと思いました。声がしっかり娘役声になっている上、男役に合わせて身長を調整する膝折も習得済みで、凄い技術力でした。

と、上げてきましたが、結局良かった所が、これらキャストの熱演しか思い付きません……。
以下、辛口です。

全体にエピソードが継ぎ接ぎ状態だと思います。群像劇にしても散漫。話や人の繋がりが分かれば、もっと面白かったはず。
「項羽と劉邦」は読んでおくべきだったかなと反省。たぶん、予習をもう少ししていれば、脳内補完で楽しめたのでしょう。でもそれって、観客がわざわざ行うことでなく、脚本・演出で明確にすべき点ですよね?
鴻門の会や広武の戦いはちゃんと盛り上がったのですが、それでもどこか物足りないのは、幾度かある戦いのシーンが斥候の報告ばかりで、まともに戦闘描写していないからだと思います。
広武ですら、やっと戦いの踊りだと思ったら、音楽が典雅な曲調に変わってしまって、勇猛さが欠けるように感じました。
全体に深刻さが薄いのかも知れません。
例えば、項梁、懐王の死がどちらも台詞で消化されたこと。そして項羽の最期のシーン、襲いかかろうとして退いてしまう兵たちのやり取り。ここはコメディ?と思うくらい演出が軽くてがっくりしました。
演出の穴を熱演が埋めるのは常とは言え、それなら「シャングリラ」の方がキャラの見せ場はあるし、盛り上がるダンスシーンが複数あって、面白い作品だったと言えます。
役名が付いているだけ、正塚先生作品よりキャラが多いと思いましたが、衛布以下は影が薄く印象に残らないので、結果は同じことでした。
(連れのライトファンは、注目してる中堅生徒の出番の少なさに凹んでました)

あとは細かい事を思い付いただけ。
群衆のシーン、コーラス揃っていて歌としては綺麗でしたが、もっと群衆らしいごちゃごちゃ感があっても良いなぁと、欲張りな事を感じました。
宋義の稚児・紅林と、男児のふりをしている桃娘が同じような格好で、連れは同一人物だと思っていました。私が脚本を書いたら、紅林は存在ごと割愛するかも。張良の童歌の策は、紅林がいなくても示せますよね。
懐王を殺せと言う范増先生の名を騙った策、張良にはめられた事が分かりにくいのですが、そういう解釈で良かったですよね?
短いフィナーレには不足感を感じたのは、本気でショーが好きになった証拠と見て、私も一人前の宝塚ファンを名乗って良いでしょうか。
でも男役による群舞は良かったですね。チケット代分の価値を見出しました。
娘役が一人で踊り出すデュエットは初めて見ました。さよなら仕様? リフトが豪快で、迫力がありました。
パレードの羽は、写真で可笑しいと思っていましたが、実物を見ても微妙でした。雉羽の生え方がアンバランスですよね。

前述の軍師シーンや、四面楚歌で虞美人に嘘を吐く項羽とか、要素では純粋に好きな点もあるのですが。
項羽と劉邦のスペクタクルだと期待していたから、拍子抜け、が正しいかも知れません。どちらかと言うと、たおやかな作品なんですね。
「赤いけしの花」は、単体で聞いた時は良さが分かりませんでしたが、シーンと合わせて聞くと良い曲であることがよく分かりました。

宝塚花組「外伝 ベルサイユのばら −アンドレ編−/EXCITER!!-」11月1日11:00回観劇。

感想の前に……
花組 東京宝塚劇場公演 休演者のお知らせ(2009/11/03)
今日から、大量休演。
フルメンバーが揃った状態で観る事が出来たのは幸いでした。元気に復帰することと、他の生徒への飛び火がないことを祈ります。

スパークリング・ショー「EXCITER!!」は、藤井先生演出なので、展開に勢いがあり、生徒を沢山使うので上手下手まで行き届く眼が欲しい!と思う、楽しいショーでした。
「これがタカラヅカだ!」とパンチを繰り出して来る、圧倒的なゴージャス感。
宙組「Apasionado!! II」を何度もリピート再生した後だと、やや既視感を覚える構成もありましたが、それだけ盛り上がる演出と言う事なので、不満はございません。

第1章の大階段で、まず一気に盛り上がり。
その後の桜乃彩音ソロ(6場)には、こんな歌い方が出来たのか、と驚かされました。初花組だった「ラブ・シンフォニー」の時は、失礼ながらこんな歌下手なトップ娘役が存在して良いのか?と真剣に悩んだのですが、キハ以降、見直させられています。
各年代のファッションに身を包んで男女ペアが銀橋を渡る第2章では、花組の娘役が如何に可愛い子揃いか、よく分かりました。

本公演で最も話題をさらったと思われる第3章。
友人は、冴えないMr.YUを、邦なつき(マロン・グラッセ役で芝居だけ出演)が演じていると思っていたようで、後で真飛本人だと教えたところ驚いていました。確かに、ショーであんな完全三枚目を演じてしまうトップスターは、珍しいのでは。
個人的には、Mr.SOの前髪が、クルリと円を描く“花輪君@ちびまる子ちゃん状態”になっていたことに密かにウケました。
ただ、ドジで駄目な主人公が、努力でなくアイテムで格好良い男に変身して解決、と言うオチは良いのかな?

第4章では、エロティックな雰囲気。スミレコード!と心の中で叫びつつ、思わず明後日の方向に眼を向けました。あと、彩音の鬘があまり私好みでなく、男前な顔が強調されているように見えたのが少々残念でした。
男三人によるダンス……と言うより銀橋キザり対決(笑)。ここは「花組を観た!」と言う気分で最高に盛り上がりました。

第5章バハナのシーンは、
・演じている本人達の体力が辛い時間
・事前に盛り上がり過ぎ
・男2人と女1人のいつか何処かで観た展開
なので、朝が早かった事もあり、少しダレてしまいましたが、総踊りは見応えがありました。

で、最後の第6章。
デュエットダンスがトップコンビのみでなく、3組によるダンスだった事に驚きました。フィナーレ前のデュエットダンスは、トップコンビの特権だと信じていたのに、違うんですね。
また、毎回言っていることですが、リフトがなかったのは残念。真飛はダンサーなので、リフトが巧いだろうと想定しているのですが、生ではまだ観ることが出来ません。
芽吹幸奈によるカゲソロは、歌声を聞いた瞬間、高音が良く伸びる!と感心しました。

……いきなり、ショーから語り出しましたが、一幕も勿論観劇しました。
「文句は観てから言おう。観たら楽しむ可能性大ですし。」等と言っていた「ベルサイユのばら」。
宝塚には2〜3回目の友人たちを連れていたのですが、一人は原作も名前くらいしか知らず、アンドレが死んでしまう事にショックを受けて涙ぐむほど入り込んでいて、私も偶にはこのくらい純粋な気持ちで観ないと……と思いました。
尚、もう一人は普通の芝居ファンのため、「説明台詞の嵐」「カーテン前芝居を多用」「一人ずつ順番に台詞を言う」「説明台詞以外はポエム5割」と言う、現代では斬新とも言える演出に驚いていました。
私も、すべてに同意見とだけ申し上げておきます。
それと、登場人物のほぼ全員に共感出来ないのは、致命的だと思います。

銀ちゃんの恋の感想では、毎回取り上げる場の粗筋をまとめて書いていましたが、今回の部分だけは敢えて前半後半に分けます。

【18〜19場】
階段落ち当日、横柄に振る舞うヤスを、遂に激怒した銀ちゃんが殴りつけると、ヤスの蟠りが氷解する。
遂に「池田屋階段落ち」が撮影がされ、階段から落ちたヤスは絶命する――

銀ちゃんがトメたちを抑えると、橘も子分を下がらせる二人の関係が好きです。「銀ちゃんが、ゆく」で敢えて銀ちゃんが自分の死を橘にだけ知らせた事からしても、最大のライバルは最大の友人なんですね。ヤスを追い掛けようとする銀ちゃんを止めるのも、橘にしか出来ない事でした。結局、この映画に橘が配されていたことは、銀ちゃんにとって複雑な反面、楽しく嬉しい事だったろうなぁ。
スポンサー@紫峰七海の「チョイ悪親父」扮装がハマっていて、花組ヒゲ部の人材豊富さにトキメキを覚えます。カメラマン役と同じ人とは思えませんね。しかし、写真撮影の瞬間に橘チームの意地悪(ワザと変なポーズを決める・後ろを向く等)がなくて、とても残念でした。
ライターの火は本物ですね。そう言えばドラマシティは火気OKの劇場でした。でも煙草の火はどう処理したんでしょう。殴られた後、ヤスは手に持ってないですよね。

当たり前のことですけれど、本当は、ヤスだって落ちる事が怖かったはず。蹲るような寝方は、その恐れを凄く現していると思います。
「晩飯の後にしてください」は、理屈付けてるけれど、死にたくない、と思う本音が出たのではないかな。
でも十年間銀ちゃんに付いてきて、その集大成として落ちる覚悟を決めたんでしょうね。ずっと銀ちゃんの付き人をしていた自分の価値を認めるために。
階段落ち撮影開始直前、銀ちゃんとヤスはお互いを見合って、でも何も語らなかった。ヤスは、銀ちゃんの言葉を待っているような様子が見えたけれど、何と言って欲しかったのだろう。結局、何を言われてもヤスの覚悟はブレたかも知れないですね。

小説版では生き残った事でヤスは逆に人生に失敗してしまったけれど、ここで銀ちゃんに同格と認められて、その腕の中で死ねた舞台版ヤスは、幸せだったんだなと思います。

【20場】
ヤスの葬式が行われている。と突然、銀ちゃんが棺桶から飛び出し、死んだ筈のヤスも現れる。その場に響く監督の「カット」の声。
なんと此処までが映画「蒲田行進曲」の撮影だったのだ。大団円――

粗筋の締め方はちょっと悩みました。私はこう解釈している、と言う事でお願いします。要は映画版準拠ですけどね。
フィナーレでとても可愛い笑顔の日向燦を見て、とても切なくなりました。その他のメンバーも全員笑顔全開で、良いカンパニーだったなぁと改めてこの公演に参加できた奇跡に感謝です。
DVDには終演後挨拶まで入ってるんですね。危ない遊び(降りかけの緞帳前に人を押し出す)をしてるあたりに、学年の遠慮がなくて驚きました。でも華形は裏で土下座していそうなイメージがあります。

「太王四神記」→「銀ちゃんの恋」と来たら、段々過去に遡ってますので、次は「HOLLYWOOD LOVER」でしょうか。
あの公演は、主催イベントと日程が被ってるのに危うく見に行こうとした魔力ある作品なので、買おうかなと思うだけでドキドキします。

DVD感想の前ですが、本日の花組集合日で、退団者が下記の通り発表されました。

日向 燦
紫陽レネ
聖花まい
嶺乃一真
2009年11月22日(花組東京宝塚劇場公演千秋楽)付で退団

全員、「銀ちゃんの恋」出演メンバーではありませんか! 何より「太王四神記」のイルス役でときめいた日向燦の名前があることに号泣です。
専科に異動して末永く脇を支えてくれる未来を疑いもしなかったと言うのに、なんてことでしょう。どうせならヤスを、パーチェスターを演らせてあげたかったです。

前回は12場の話に終始したのにかなり長くなったので、2幕も二回に分ける事にしました。

【13場〜17場】
銀ちゃんの為に階段落ちを引き受けたヤスだったが、孤独を恐れる銀ちゃんはヤスが死ぬ可能性に怯えていた。
どう接して良いか分からずヤスを殴る事もなくなった銀ちゃんと気持ちが擦れ違い、鬱屈したヤスは小夏にも暴力を振るってしまう――

結婚式は、曲が差し変わってるのですが、舞台で掛かっていた曲を忘れてしまったので、そこまで違和感は感じませんでした。
小説版によると、銀ちゃんは結婚式に間に合わなかったらしいので、当然これはヤスの悪夢と言う事になりますが、ヤスの母の眼が死んでいて、ギョッとします。

ヤスと銀ちゃんの関係って、不思議です。何度も見れば分かるかと思っていたのですが、見る程わからなくなりました。
殴り、殴られることを、ヤスは「遠慮のない特別な関係」だと信じていたのかな……。

出逢いシーンの銀ちゃんが、しっかり若く見えるのが役者ですね。
「舞台ってのはよ、多少台詞素っ飛ばしても居眠りしちまってもストーリーがわかるくらいで丁度いいのよ。娯楽なんだからよ」と言う台詞には、ある程度複雑・難解な芝居が面白いと思って見ている人間には少し耳が痛い気がしつつ、真理だなぁと思います。
予習なし一回の観劇でも楽しく見れないと意味がないですものね。
小説書きにそのまま適用するわけにはいかないですけれど、サッと読んで面白い作品にするスキルも大事ですよね。

ヤスの小夏に対する罵声と暴力は、映像で見ても本当に辛いです。
舞台では小夏@野々がヤスを愛してるから一層悲しく感じます。責められた小夏が本当に愕然とした顔で、ヤスを見上げるのが可哀想で。本来の小夏はかなり性格がキツいけれど、宝塚娘役の演じる役としてちゃんと成立させているんですよね。