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みをつくし料理帖シリーズ最終巻「天の梯」

シリーズ完結巻。
終わってみると、ラストは少し駆け足気味に感じたけれど、小松原様との破局や又次の死も、すべて予定調和だったと感じる、無駄のない作品でした。
もちろん、エンターテイメントであるから、多少ご都合的にすべてが巧く纏まるようになっています。摂津屋を筆頭にあさひ大夫の旦那衆が、こんな鯔背な男たちでなかったら身請け話は進まないですよね。
とはいえ、読者は正に「雲外蒼天」の物語を期待して読んでいるわけですから、苦労の末の大団円は待ち望んでいたもの。正しい終わりかただったと思います。
采女宗馬が逃げて捕まらなかった点は悔しいですが、これは番外編で回収するのかな、と勘繰っています。

巻末に付録として、文政11年の料理番付が付いていました。作中「元号が文化から文政へと移った。」と記されているので、物語の終わりから10年後ということになるので、東西の大関に上り詰めるまでの精進の日々を色々想像できる、なかなか粋な仕掛け。
ただ、一柳が天満一兆庵に名前を変えてしまったことは、個人的に引っ掛かりました。
柳吾自身が名に拘っておらず、ご寮さんがいい女将で、佐兵衛が後継者として皆から認められているとしても、一柳でずっとやってきた奉公人からしたら「後妻と連れ子が乗っ取った」という気になりませんかね?
普通なら「天満一兆庵が再興した」と感動すべきポイントに、ケチを付けるのも気が引けるのですが……

みをつくし料理帖シリーズ第7作「夏天の虹」

2巻以来感想を書いていませんでしたが、ずっと読んでいます。

今回は読む前に、この巻の最大のネタバレを知ってしまいました。
その為、武士を追い出した一件が原因で事件が起きるのでは、と思いながら読み進めていたのですが、彼自身の意志でことを成し遂げた末の結末だったんですね。魅力的な登場人物の1人が欠けるのはとても哀しいですが、彼は後悔していないだろう展開で救われました。

しかし、澪は自分で結婚しない道を選び、小松原にまで強いたのだから、その選択の結果にショックを受けるのは少々身勝手では、と思ってしまいました。
個人的には、このシリーズには恋愛話やドラマチックな展開よりも、澪が野江を身請けするためにどんどん料理人として頑張る、真っ直ぐなお話を読ませて欲しいと思います。
そろそろどん底だと思いますので、「雲外蒼天」の未来に向けて進んで行ってもらいたいですね。

みをつくし料理帖シリーズ第2作「花散らしの雨」。

澪が人間(又は社会人)的にはまだ足りないところを見せていますが、料理の方はまったく悩むところがなくなって、何を作らせても成功する安心感が穏やかな読み心地を作り、それと同時に1巻に比べると緊張感がなくて少々物足りない読了感でした。
とは言え、一話ごとに登場する様々な料理ネタは勉強になって面白いし、新しい登場人物たちも絡んで人間模様が一層多彩になったのは今後の展開を膨らませるためだと思いますので、続刊に期待したいと思います。

さて、登龍楼の嫌がらせはこれで打ち止めなのか、もっと大きな事件を引き起こすのか、楽しみです。

友人から薦められて、みをつくし料理帖シリーズ「八朔の雪」を読みました。

連作モノのため明かされていない伏線などが多く、また続刊を読んでる方には今更な推測などするのもお恥ずかしいので、細かく感想を書き出そうとは思いませんが、極真っ当に面白かったです。
努力家で悪い気持ちを持たない澪が可愛いし、その周辺の人々がまた人情豊かで愉快ですね。難事も何時かは晴れて蒼天が見られると保証されているので、安心して読めるのも良いですね。
江戸料理と上方料理の違いも勉強になって面白いし、おいしそうな料理が出て来るだけでなく、巻末にレシピが掲載されているのが粋な感じ。思わず作りたくなります。

ちなみに、澪:野々すみ花の妄想配役で読めるな、と思い付いて読み直し、二度楽しんだことは秘密です。
普段、本を読みながら配役遊びをすることはないのですが、天才的な味覚を持つ少女が、ライバルから妨害を受けつつ成長すると言う構図に、何となく「ガラスの仮面」が彷彿とさせられ、その繋がりで自然と思い付いてしまいました。