みをつくし料理帖シリーズ最終巻「天の梯」
シリーズ完結巻。
終わってみると、ラストは少し駆け足気味に感じたけれど、小松原様との破局や又次の死も、すべて予定調和だったと感じる、無駄のない作品でした。
もちろん、エンターテイメントであるから、多少ご都合的にすべてが巧く纏まるようになっています。摂津屋を筆頭にあさひ大夫の旦那衆が、こんな鯔背な男たちでなかったら身請け話は進まないですよね。
とはいえ、読者は正に「雲外蒼天」の物語を期待して読んでいるわけですから、苦労の末の大団円は待ち望んでいたもの。正しい終わりかただったと思います。
采女宗馬が逃げて捕まらなかった点は悔しいですが、これは番外編で回収するのかな、と勘繰っています。
巻末に付録として、文政11年の料理番付が付いていました。作中「元号が文化から文政へと移った。」と記されているので、物語の終わりから10年後ということになるので、東西の大関に上り詰めるまでの精進の日々を色々想像できる、なかなか粋な仕掛け。
ただ、一柳が天満一兆庵に名前を変えてしまったことは、個人的に引っ掛かりました。
柳吾自身が名に拘っておらず、ご寮さんがいい女将で、佐兵衛が後継者として皆から認められているとしても、一柳でずっとやってきた奉公人からしたら「後妻と連れ子が乗っ取った」という気になりませんかね?
普通なら「天満一兆庵が再興した」と感動すべきポイントに、ケチを付けるのも気が引けるのですが……