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――そいつは誰だ!
愛しい少女が微笑みかけたのを見て、ロミオは思わず立ちすくんだ。
彼女が向けるその微笑みは、唯一人ロミオに与えられるもの。秘した愛の証、他の何物にも及ばぬ宝。
けれど、今少女が向かい合っているのは、彼と同じ顔をした別の男だった。


月組公演「ロミオとジュリエット」
http://kageki.hankyu.co.jp/rj2012/
ポスターにも使われているこの特設サイト画像を見て、ロミオ(影)がジュリエットを略奪し、ロミオ(オリジナル)を追い詰めるお話を想像しました。
※この公演はロミオ役がダブルキャスト。手前のロミオ(龍真咲)と後ろでジュリエットを抱き締めているロミオ(明日海りお)は別人です。

純愛話なのに、ロミオが2人とジュリエットが1人というバランスは奇怪しいですよね。この写真は、その奇怪しさが何処にあるのかを明らかにしてくれたと思います。
どうしても役替わりするなら、私としてはロミオとジュリエットの役替わりが良かったです。そうしたら、何度も転生し、性別を変えて巡り会っても2人は愛し合い死んでしまう、という妄想でSSを書いたと思います。

ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」12:30回@赤坂ACTシアター。
http://romeo-juliette.com/

フランスミュージカル「ロミオとジュリエット」の日本キャスト版です。
制作発表から観劇まで、テンションの上がり下がりが激しい舞台でした。
まず、チケットの先行販売段階でジュリエット役が未定と言う事態。更に、一般販売後になって生オーケストラではなく録音であることが判明。そして幕が開いた時点で、携帯電話やフェイスブックなどの現代的な小物が登場する演出に度肝を抜かれることになりました。

舞台としては、せっかく揃えた実力派キャストが勿体ないような感じ。
現代的な小物は、ちょっとした笑いを誘ったり、秘密結婚が写メでバレるくだりは成程と思わされましたが、結局は異物なので違和感になっていると感じました。
例えば、ネットワークが発展しているようなので、ヴェローナからの追放処分を受けることに悲壮感が湧きません。マントヴァを彷徨うロミオの「見知らぬ街」と言う歌詞も、ヴェローナを一度も出たことがないのかと考えてしまい、変な気がします。
ジュリエットは携帯を持っていない設定ですが、ロレンス神父に懺悔に行く振りをして、決まった時間にロミオと電話をさせて貰うとか約束くらいできるはず。そもそも、神父が重要な連絡をメールで済まさず、ジュリエットがいる段階でロミオに電話しておけば良かったのですよね。
電話が通じないので、自分でロミオにジュリエットの死を伝えに行ったベンヴォーリオに比べると、神父の手抜きっぷりに脱力してしまいます。
ロミオが死んだのは神父の責任、と言う解釈で演出しているなら、それでも良いですけれどね。

曲は、ロックミュージカルと言うだけあって、パンチのある曲が多いですね。
一番好きな楽曲は、シンプルだけれどドラマ性のある「僕は怖い」です。次がベンヴォーリオのソロと乳母のソロですね。ロック調じゃない曲ばかりですが(苦笑)。
シナリオ構成自体は、もともとが1曲歌う→1曲歌う→1曲歌う……の連続なのですね。1曲の中では、ドラマチックな動きがあって盛り上がるのですが、曲ごとが続かず、ブツ切れの場面を繋ぎ合わせているような感じです。
「世界の王」は客席からお約束の手拍子が入りましたけれど、前述の理由により気持ちが途切れたところから始まったので、私は乗れませんでした。

衣装も現代的なのですが、これは完全に私が苦手な部類でした。個人的には、女性陣の衣装が下品に感じられるのがアウトでした。
それと、フランス版本家や宝塚版で採用した、青モンタギュー家と赤キャピュレット家の色分けを使って欲しかったです。一応、シマウマ柄とヒョウ柄で分けているようですが、遠目に判別しにくくて意義を感じませんでした。

褒めどころとして、舞台のテンポ自体はとても良く、分かり切った展開なのに退屈に思うことはまったくありませんでした。狭い舞台を、最小限の設備で素早く場面転換させていたのも、テンポアップの一助でしょうか。

以下、個別のキャスト評です。まず、Wキャスト勢から。

ロミオ@山崎育三郎
ロミオらしいロミオでした。期待通り、あるいは想像通り。良くも悪くも、手堅い印象です。
純粋なロマンチストで、でも腰が定まってなくて直ぐ「結婚しよう」と言ってしまう辺りに説得力がある役作りでした。

ジュリエット@昆夏美
充分巧いのですが、やや「攻撃的」な歌声だと思いました。私としてはもう少し丸い歌声の方が好きです。
身長は、思っていた以上に低いですね。高いヒールを履いて、それでも山崎ロミオと頭1つ差があったので、城田ロミオだと釣り合わないのでは?

ティボルト@上原理生
「レミゼラブル」のアンジョルラス役が評判だったので気になっていた役者です。落ち着いた雰囲気なので、荒くれ者だとか、キレる男にはあまり見えませんでした。声は良かったので、次は持ち味に合った役で観てみたいです。

マーキュシオ@石井一彰
いかにも道化と言う感じのおちゃらけっぷりで、モンタギュー3人組に良いアクセントを付けていました。
ただ、滑舌が悪いのか、音響のせいか、何を言っているのか聞き取れないことがありました。

死@中島周
霊魂のような死のダンサーでした。気が付いたら既に舞台に佇んでいて、一体何時からそこにいたのかと驚かされる、正に忍び寄る死のイメージ。
背中を向けたときの体型が、シドニー@ベイグランドストーリーに見えるのも面白かったです。

続いて、シングルキャスト。

ベンヴォーリオ@浦井健治
配役時点で期待した通り、非常に良かったです。ロミオへの友情や、モンタギュー派の若者たちのリーダーとしての自覚が端々から感じられて、1人のキャラクターとして説得力がありました。
ベンヴォーリオって、実は一番美味しい役なのでは?

パリス@岡田亮輔
年齢設定が分からず、ジュリエットより相当年上だと思ってしまいました。パンフレットで確認したら、若い役者だったので驚きました。

キャピュレット卿@石川禅
安心と信頼の演技。ジュリエットの出生設定があるために、娘への愛情に哀しみを感じました。

キャピュレット夫人@涼風真世
ジュリエットがキャピュレット夫人の不義の子である、と言う設定と告白には度肝を抜かされました。
もしかして、相手はティボルトの父親なのでしょうか……。

ロレンス神父@安崎求
軽さと重さが共存した軽妙な神父様でした。
前述の演出の問題があって、諸悪の根源のような気がしてしまうのですが、善から出た行いが、結果として死を生んだ神父目線の悲劇は感じることができました。

モンタギュー夫人@大鳥れい
演技は問題なかったのですが、キャピュレット夫人と並ぶと何故か不釣り合いな感じがあって、あまり両家が巧く和解しそうに思えませんでした。

モンタギュー卿@ひのあらた
存在感のない父でした。長身で格好良いのですが、なんせ出番が少ないので良く分からず……。
全体的に、モンタギュー家夫婦はキャピュレット家に比べて冷遇されていますね。

ヴェローナ大公@中山昇
もう少し威厳と気品が欲しかったです。
大公と言うより、サーカスの団長のように感じました。

乳母@未来優希
ソロ「あの子はあなたを愛している」がとにかく圧巻。緩急自在な演技にも改めて惚れ惚れしました。
ジュリエットへの愛情が非常に強くあって、パリスと結婚するよう薦めるのも、彼女がロミオを追い求め続けても未来はないと思うからこそ、敢えて軽薄に振る舞いつつ諭そうとしているのだと感じました。

最終的に、自分としては宝塚版を観たかったなぁと改めて思いました。
宝塚版に存在する「愛」というキャラクターが欠けているせいか、恋物語としての側面が薄いように感じたのです。愛と死の一体化というカタルシスもないですしね。
あるいは、Wキャストであっても組み合わせが固定なら、もっと人間関係を掘り下げて、キャラクター同士の繋がりが出てくるかもしれません。

ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」公式
http://romeo-juliette.com/

ジュリエット役が不明のまま先行チケットが発売され、「ロミオ&ロミオ」などと揶揄していましたが、先日無事ジュリエット役が発表されましたね。
新人の二人と言う事で、ミュージカル界に久し振りのシンデレラガール誕生なるか?と期待しています。

で、ようやく観劇スケジュールを決められる、と思って公式サイトを確認したところ、キャストスケジュールがよく出来ていて感心しました。
プルダウンメニューで観たい役者(Wキャスト)を選ぶと、その組み合わせの公演回に絞り込まれるのです。
これまでは、キャスト表と睨めっこしながら、目当ての役者にマーカーを付けたり、手帳に書き出したりして観劇日を決めていました。この表を使えば、間違いなく細部まで拘った組み合わせで観劇できますね。実に良いサービスだと思うので、今後他の作品でも見習って欲しいです。