モーリス・ルブラン著 平岡敦訳「ルパン、最後の恋」

2012年に出版されたシリーズ最終作と、シリーズ第1作の初出版(未改稿版)をセットにした1冊。
普通の単行本より縦長でスマートな形態。お洒落でありながら、小口が黄色くて古めかしい印象もあり、雰囲気のある装丁です。

ルパンシリーズは初めて手に取りました。
思ったよりも淡々と進むので、少し戸惑いました。4人の男の誰がルパンか推理させるのかと思いきや本人があっさり告白するし、いつの間にか恋に落ちているし、なぜ問題の本が狙われるのかもよくわからなかった。ミステリー小説ならお約束だと思っていた、緻密なトリックや伏線がまったくないのです。メリハリに欠けるので、真犯人が判明しても驚きもありません。
この作品は作者の遺稿であり、推敲途中だったという巻末の説明に、大変納得しました。
要するに、骨だけで肉付けがまったく足りないお話なのですね。
でもつまらない作品なのかというと、騎士道精神溢れるルパンというキャラクターの魅力で、結構楽しく読めました。
個人的には、副題が「最後の恋」である表題作のみならず、第1作から女性とのロマンスが含まれていたのが、フランス人らしいところかな、と思いました。最初の作品と最後の作品でテーマが通じているように見えるのが面白いですね。

小説の主人公は感じがよくなければならない
――本書付録より

というルブランの考えは、私も指標にしようと思いました。

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