K.M.ペイトン著、掛川恭子訳「フランバーズ屋敷の人びと」全5巻

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
《第1部》孤児クリスチナは、遺産を狙う伯父に引き取られ、フランバーズ屋敷で成長する。屋敷には、狩猟を愛する粗暴だが魅力ある兄マークと、飛行士を目指す革新的な弟ウィリアムの二人がいた。
《第2部》クリスチナはウィルと駆け落ちするが、彼の飛行機への情熱は理解できず、墜落の恐怖に苛まされ、愛と苦悩の日々を送る。
《第3部》ウィルは墜落死し、未亡人となったクリスチナはフランバーズ屋敷へ戻り、自らが屋敷を切り盛りしようと奮闘する。やがて、少女時代から彼女を支えてくれた使用人ディックへの愛を自覚し、二人は結ばれる。
《第4部》労働者階級で真面目な夫ディックと、上流階級で享楽的な生き方が身に付いているクリスチナは、次第にすれ違っていく。クリスチナは、戦争で傷付き帰ってきたマークを看病するうちに、彼を愛していることに気付く。

当初は3巻までの三部作として発表され、12年後に4・5巻から成る第四部が執筆されています。
5巻まで一気に読み終えた現在、第三部までと第四部で、感想を分けるべきだったと後悔しています。
1・2巻はクリスチナというキャラクターが生き生きと魅力的で、3巻までは少女の成長物語として受け入れられます。しかし4・5巻は彼女を批判せざるを得ません。
その時々で最善を尽くしたつもりが裏目に出た、という全体の流れはあるのですが、思慮が浅く軽卒とも言えます。また、2人の男性の間で揺れるクリスチナの心情も分かるけれど、農場を始めたらディック、社交界に出たくなったらマーク、とその時々で都合の良い男性に擦り寄っているようにも見えて残念でした。
階級社会を体感する資料としては、第四部にも見所があるかなぁ……。
もっとも、私のこの感想は、尊大なマークが好きになれないという理由も大きいと思います。

ちなみに、一番驚いたのは、第4部のクリスチナがまだ20代前半だったということです。
彼女の思考は、もう中年になっているように感じました。車に乗ってレースに出場してしまうくらい新しいもの好きだけれど、実際は昔ながらのまま変わらないでいて欲しいと思っていて、決して先進的な女性じゃないんですよね。

ということで、読み終えた巻への散々な印象語りから始まってしまいましたが、1・2巻は素晴らしい作品でした。
特に、2巻で描かれるクリスチナの恐怖とウィルに必死で付いて行こうとする愛は、若さと愚かさとが愛おしくなる具合です。戦争が始まり、世の娘たちがみんな自分と同じ(恋人の死を怯えて暮らす)ことになったと安堵するシーンはゾクッとしました。
飛行機黎明時代の昂揚感もあって、外に向かって飛翔して行く勢いもありました。

風景、馬、飛行機の描写は全編通して魅力的で、20世紀初頭の古き英国を感じることができるシリーズでした。

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