大田文化の森ホールにて行われた、Melodies of Crystal主催、シュデンゲンアンサンブル演奏の「室内楽による765の調べ」を聴いてきました。
http://www.2083.jp/concert/20141213syudengen.html
写真はプログラム表紙。
ちょっと発売年月日の誤植が多かったり、「風のクロノア」の重大なネタバレをしていたりしますが、恐らくプレイ済みのユーザーしかいない!という前提だから良いんですよね。
まさに「ナムコ」を感じるゲームに限定された演奏会ですし、なによりメインが「風のクロノア」と「ヴィーナス&ブレイブス(以下V&B)」という点に惹かれて行って来たのですが、非常にレベルの高い素晴らしい演奏会でした。
しかも、V&Bゲーム本編の監督・川口忠彦氏が来場されていて、少しインタビュー時間も設けられたので、V&B開発の裏話や音楽に関する考えなどを伺うことが出来たのでした!
例えば、開発期間は半年しかなかったそう。PS2版の記録室バグはデバッグが間に合わなかったんだな、と発売10年後にしてよく分かりました。そのため、曲の発注時点ではシナリオができておらず、かといって作曲家任せにするスタイルの作品ではなかったので、1曲ずつにイメージを付けて発注したというエピソードは、実際の注文が細か過ぎて笑えました。個人的に一番面白かったのは「V&Bはサウンドノベル的なRPG」だったということで、だから「絵がないところは空を映しておく」という演出だったそうです(笑)。
演目は下記の通り。すべて、奏者本人たちによって編曲されています。
第一部
ナムコクラシックメドレー
風のクロノア第二部
サンドラ&ワルキューレ
ヴィーナス&ブレイブス 〜魔女と女神と滅びの予言〜アンコール
ネーミングウィンドウ(V&B)
楽器構成は、バイオリン2挺・ヴィオラ・チェロが基本で、「風のクロノア」演奏からコントラバスとピアノが追加、第二部からパーカッションが追加されました。
室内楽なのにパーカッションが参加したのは、マーチ的な曲があるのと、シンバルでの演出を入れるためかと思います。ただ、曲によっては、若干音のバランスが崩れてドラム音が五月蝿く感じるところもありました。
ナムコクラシックメドレーは、アーケードやファミコンの電子音を再現しつつアレンジもしつつ、という遊び心のある作品。私は半分くらいしか分かりませんでしたが、原曲が分かる箇所は面白かったです。
風のクロノアは、組曲というべき力の入った作りでした。
(以下、勝手に楽章を分けて語りますが、私の勝手な解釈です。曲構成は間違っている箇所もあるかもしれません)
第一楽章はオープニングから「再生の歌」に繋がっていくという、これだけで非常に聞き応えのある内容。
続く第二楽章はオープニングの鐘が鳴るシーン再現から「THE WINDMILL SONG」で冒険が始まり、炭坑、ロンドランゴ戦、そして最後に「GRANPA'S CHAIR」で締まるというVISION1の完全再現。奏者は少ないのに音に厚みのあるブリーガルの光景と、非常に格好良く生まれ変わったロンドランゴに燃えました。
第三楽章は意表をついていきなりVISION2-1ラストの水の兵士さんシーン「MELANCHOLY SOLDIER」からジャックポットに移動し、エビルシードフ&エビルパメラと戦うところまで。
第四楽章は、フォーロックから突如風の遺跡に移動し、オバケが出そうな雰囲気が良く出ている哀愁感を堪能していたら、不穏な音でヘリが飛んで行くのが分かり、そしてクロノアでも屈指の人気曲「BALADIUM’S DRIVE」に続いていきました。ここは奇を衒うことなく、真っ正面から原曲を生かした編曲だったと思います。
最後に第五楽章で再び流れる「GRANPA'S CHAIR」に泣かされつつ、太陽の神殿へと飛んで行くクロノアを見送り、「INQUISITIVE WALTZ」で締め……と思いきや、アンコール的にタイトルコールが流れて終わりという、もうこのままレフィスを救ってスタッフロールまで行って欲しいくらいのゲーム再現です。
VISION4-2までを駆け足で、というプログラムの言葉通りでしたが、その分「再生の歌」に意表をつかれ、パブロフの犬的に泣きそうになりました。実際問題、クロノア曲では鼻を啜っている方も多かったですね。
休憩の後、第二部はまず「ワルキューレの冒険」「サンドラの大冒険」からのメドレー。
多少遊んでいた甲斐あって、何カ所か聞き馴染みのあるフレーズもありましたし、演奏しながら足を踏み鳴らす演出等、楽しませて頂きました。
そして、最後のV&B。
これも楽しみではあったのですが、改めて聴いていると楽曲数が意外と少ないんだな、と感じました。演奏としては、「Waltz for Ariah」短縮版から始まり、長閑な曲、明るい曲、編成曲、哀しい曲といった、V&Bの「特定の感情にさせるための曲」群が多数演奏。戦闘曲はほぼ揃っていたかな。最後は「大きな古時計」から再び「Waltz for Ariah」に続いておしまいでした。
クロノアの軽快な楽曲に比べると、V&Bは重みがあり、最後は軽くセーブして終わりたいと思っていたら、アンコールが「ネーミングウィンドウ」だったので嬉しかったです。個人的には、これとスタッフロールの2曲だけ違う世界観も好きです。
V&Bは「Waltz for Ariah」だけでない!という川口監督の気持ちや演者の気迫も感じたけれど、そうは言っても「Waltz for Ariah」は良い曲でした。しかもこの1曲でドラマが完結しているので、1曲だけ一人歩きするのも仕方ない感があります。
それ以外では、戦闘曲が改めて聞くと格好いいことに気付きました。サントラが出なかったのが本当に残念ですよね。
ということで、非常に満足した演奏会でした。
曲構成だけでなく、演奏のレベルもアマチュアとは思えないくらい上手でした。好みを言えば、ピアノは少し重過ぎる気がしたのですけれど、その重みが合っている箇所もありました。
なお、会場である大田文化の森ホールは、300席ない程度のこじんまりしたホール。ゲーム音楽コンサートは、これまでオーケストラしか聴いたことがなく、規模の大きい会場に慣れていたので最初は小さいと思ったのですが、コンパクトで落ち着く感じも含めて、室内楽にはいい規模でした。