ロバート・F・ヤング著 伊藤典夫他訳「たんぽぽ娘」
何度読んでも、訳を変えても「たんぽぽ娘」は傑作ですね。
しかし、私が元々SFに興味が薄いゆえか、他に強く心に残る作品はありませんでした。
そして、訳者あとがきでヤングの作品傾向に「少女愛」が見られることを知ってしまうと、この「たんぽぽ娘」という傑作にもケチが付いた気がしました。
13編のSF短編集。訳は「エミリーと不滅の詩人たち」「失われし時のかたみ」「ジャンヌの弓」の3編のみそれぞれ異なる女性訳者。残る10編は伊藤典夫氏。どれも読み易くとても良かったです。
以下は、13編の印象を覚え書き。
「特別急行がおくれた日」
不思議な物悲しさがあるものの、読み終わっても謎が残って消化不良でした。
「河を下る旅」
死への旅路が生きる道へと繋がる、地味だけれど素敵な作品。
「エミリーと不滅の詩人たち」
お洒落。しかし、詩人アンドロイド・テニソンの生きている感が少し怖かった。
「神風」
概念的過ぎて半分以上理解できませんでした。
「たんぽぽ娘」
再読して、一層「夏への扉」と似た雰囲気を感じました。
「荒寥の地より」
古き良きアメリカのノスタルジックな雰囲気はあったものの、読み終わったあと、タイトルからまったく内容を思い出せなかった作品。恐らく、この思い出話が現代の主人公に何も影響を及ぼさないから印象が薄いのだと思います。
「主従関係」
ヒロインの態度が鼻についたけれど、基本的に犬が好きなので、綺麗なオチに思わず笑った作品。
「第一次火星ミッション」
ストーリーは分かるが、設定が腑に落ちず。
「失われし時のかたみ」
淡々としていて、少し退屈。
「最後の地球人、愛を求めて彷徨す」
最初から最後まで、男こそ気が触れているんだと思いながら読みました。それで良かったのか、ヤング氏に聞いてみたいところ。
「11世紀エネルギー補給ステーションのロマンス」
最後のオチに、なるほど、とSFでおとぎ話を解釈する面白さを味わえました。
「スターファインダー」
罫線などの記号を使った小説という作り自体にビックリしました。
「ジャンヌの弓」
読み応えがあって面白かったのですが、最後の弓矢に関する意味が分からなかったのが残念。