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帝国劇場「1789 バスティーユの恋人たち」17時回。
http://www.tohostage.com/1789/

本日の配役は下記の通り。

ロナン:加藤和樹
オランプ:神田沙也加
マリー・アントワネット:龍真咲
シャルロット:佐藤芽佳
ルイ・ジョセフ:中村琉葦

今回はなんと言っても「龍アントワネット」が観たかったので、この組み合わせになりました。
キャストの多くが初演から続投しています。初演では楽曲の難しさを感じたのですが、歌い慣れたのか、全員歌唱が上手くなっていて非常に良かったです。
一方で、初出演のアントワネット@龍真咲、ロベスピエール@三浦涼介、ポリニャック@渚あきもそれぞれ良さがありました。

まず、今回初めてのキャスト感想。

ロナン@加藤和樹に関しては、私は小池徹平版が「私の考えるロナン」を体現していたので、ハードルを下げて観劇しないといけないかな、などと失礼なことを考えていたのですが、加藤和樹版もまた「ロナン」でした。粗野だが善良な一農民で、土の匂いがする男でした。身長や体つきなどの見た目は、加藤ロナンに軍配を挙げます。
ただ、主演にしては印象が弱かったです。衣装が地味なこともあって「群衆の一人」に見えました。役としてはそれも間違いではないと思うけれど、もっと華のある役者だと思っていたので意外でした。

マリー・アントワネット@龍真咲は、女優としてうまく転身した!と思います。
私は彼女の歌唱力は最初から心配していなかったのですが、正直、演技力には期待していませんでした。が、前半の可愛いけれど我儘なお嬢さんという風情から、王妃の務めに目覚め大人の女性に脱皮する美しさを見せてくれました。オランプを解任するくだりは心を打たれました。
また、ほんの数秒ですが、国王と心を通わせてからのやり取りが良かったです。ギロチンを改良する国王の優しさをマリーが理解したことがわかりましたし、このマリーが側にいれば、彼にいい影響を与えていくのでないかと期待も抱けて、その虚しい未来妄想に泣かされました。
ただ、ルイ・ジョセフを喪って泣くシーンだけは、相変わらず下手だなと逆に安心しました(笑)。

ロベスピエール@三浦涼介は、面で押してくるようなカミーユとダントンに対して、一本の鋭い槍、または引き絞った弓矢という印象。「誰の為に踊らされているのか」も勢いがありました。
ロナンが死んだときの反応が劇的で、急進過激化する将来が垣間見えた気がしました。
なお、どこかで見た顔だと思っていたのですが、なんと「超星艦隊セイザーX」のケイン隊員でした。まさに、男子三日会わざれば刮目して見よ、という感じですね。

ポリニャック@渚あきは、マリーに面従腹背な雰囲気があって、意地悪な宮廷人の一人という感じ。しかしこういう貴婦人はいただろう、と思わせる説得力がありました。

2回目のキャスト勢では、カミーユ@渡辺大輔が、上原理生に負けない厚みのある声量で驚かされました。
そのダントン@上原理生は、相変わらずシャルロットとの絡みが可愛く、野性味のある低音が好き。
フェルゼン@広瀬友祐は、好みの声でした。また、ロナンとの決闘や秘密警察との戦いでも、ちゃんと軍人として強いところがいいなと思います。
ペイロール伯爵@岡幸二郎は、怖さが増していました!
ラマール@坂元健児は今回も大人気でした。凄く軽やかに楽しそうな演技で、思わずノセられます。

作品としては、全体的に民衆の迫力が凄かったです。基本的にロックな楽曲だということも相まって、怒りや強さを感じました。本作はオーケストラが入らず録音(打ち込み)なのですが、本作に限ってはそれが良いのですよね。
ストーリーはちょっと唐突なところが多いですが、とにかく歌が豊富、ド派手で楽しい「1789」に今回も満足しました。

「今年もやります!ミュージカル落語まつり!3」初日@赤坂区民センターを観賞。
http://www.aro-world.net/musical.html

ミュージカル落語は、劇団四季出身という落語家・三遊亭究斗が創作した、ミュージカルネタのオリジナル落語シリーズ。
もともと落語には興味があったものの、寄席は行き難く、文化ホールで行われる落語会にでも行くかな……と思っていました。そんなときにこのミュージカル落語の存在を知り、ミュージカルなら好きなジャンルなので楽しみやすいかな、と考え今回参加してみました。

結論としては、非常に面白かったです!

はじめて生の落語を観賞したのですが、真打ちの二人だけでなく、前座や二つ目もお上手なので、ずっと笑いっぱなしでした。プロを侮っていたことに、今は恥じ入るばかりです。
また、芝居と同じで、落語も生ならではの空気感があるわけですが、落語の場合はさらに客席の反応をみて調整しながら演じる度合いが強いように思いました。

本日の番組は下記の通り。

開口一番 林家たま平(前座)「みそ豆」
挨拶 三遊亭究斗
落語 三遊亭わん丈(二つ目)「蝦蟇の油」改作
落語 林家たい平「猫の災難」
トークコーナー(究斗の部屋・ゲスト林家たい平)
(仲入り)
落語 三遊亭究斗「ねこたち」
カーテンコール「Under the sea」

林家一門が古典落語、三遊亭一門が新作落語寄りの雰囲気でしたが、どちらも時事ネタ盛りだくさんで、わかりやすい喋りにされていると思いました。
噺家としては、即興力など含めて林家たい平師匠の方が一枚上手という感じかな。

ミュージカル落語は、予想外に「ミュージカル」でした。ト書きも台詞に組み込まれている一人芝居、という感覚で観劇しました。本日の演目は、題名通り「キャッツ」のパロディ。舞台を日本に移し、人間からはトラと呼ばれている爺さん猫(本名アスパラガス)を助けた人間の少年との交流を通して、かつての恋人グリザベラと再会し、二人で天に召されるまでのお話が展開されました。
グリザベラ以外の猫は、名前もモジリになっていて、マキャヴィティ→マタニティ(以前の飼い主にマタニティ服を着せられていたから)、オールドデュトロノミー→オールストローノミー(なんでもストローで飲むから)等、原型が微妙に残っているからより酷いことになっていました(笑)。
でも正直、私にとってはほとんど物語がない本家「キャッツ」よりずっとわかりやすく、笑ったり感動したりできたのでした。
ピアノ、オーボエの生演奏で、音楽もバッチリ。特にピアノの山本愛香さんは、ピアノだけでなくパーカッション+ソプラノ歌唱と大活躍でした。

帝国劇場「1789 バスティーユの恋人たち」12時回(おけぴ観劇会)
http://www.tohostage.com/1789/

本日の配役は下記の通り。

ロナン:小池徹平
オランプ:神田沙也加
マリー・アントワネット:花總まり
シャルロット:万座みゆ
ルイ・ジョセフ:大河原爽介

宝塚月組版(日本初演)の感想は、2015年6月27日記事7月18日記事参照。

宝塚版の良さと巧さも改めて感じたけれど、東宝版も期待通り面白かったです。
脚本は概ね宝塚版踏襲でした。大したストーリ—ではありませんが、フランス革命が分かりやすく潤色されているので、特に不満はありません。ロナンとオランプが恋に落ちる早さは、何回観てもビックリするけれど!

歌は、宝塚版で入れ替えた楽曲をオリジナル版準拠に戻しているところもあれば、「私は神だ」がアルトワのままだったり、宝塚版の新曲(オリジナル没曲)も入っているし、逆に削られた曲目は復活していたりと、両者の良いところ取りをした感じです。
本作は、打ち込み音楽の上に、キャッチーにして難解な歌が乗っているという、音楽が冒険しているミュージカルなので、沢山曲を使ってくれるのは嬉しいですし、満足度も高いです。
しかし、私が本作で一、二の名曲だと思っている「声なき言葉」がなかったので、完全版とは言えないのが残念!
また、出演者が宝塚の半数程度なので、「三部会」のシーンは人形劇形式で行われました。演出としては非常に面白かったですが、ラマールたちがすべてのフレーズを歌うので、やや分かりにくいと思いました。

以下、役者ごとに簡単な感想です。

主人公ロナン@小池徹平は、振る舞いは粗野だけれど絶妙に可愛くて、学のない農民、というポジションがしっくりくる説得力のある演技でした。
歌唱力も十分。「自由と平等」のラップ箇所以外は、まったく安心の出来でした(ラップは、続くデムーランも酷かったので、比べると小池徹平は巧いと思いましたが)。
非常に小柄で、ソレーヌの方が姉に見えたので、こちらの組み合わせは、いっそ姉弟設定でも良かったのではないでしょうか。

オランプ@神田沙也加は、声が非常に良いですね。もちろん歌も期待通りの歌唱でした。利発で真面目な職業女性という風情で、好感の持てるオランプでした。

初めて生で観ることになったアントワネット@花總まりは、さすがでした。
存在感と同時に透明感があって、特異な役者だなと思いました。

ソレーヌ@ソニンは、一幕「夜の女王」は率直に言って期待外れでしたが、二幕「世界を我らに」は迫力がありました。本作の楽曲はテンポも独特だし高低差があって難しいことは分かっていましたが、相当の技術を要求されることがよく分かりました。

ダントン@上原理生ロベスピエール@古川雄大デムーラン@渡辺大輔の革命家三人組は、個性付けという意味では上原理生の一人勝ちだったように思います。歌が一番安定しているのはもちろん、体が大きいためか、踊りも意外と目を引きました。しかしソレーヌとロナンが再会するシーンでの笑いを誘うのは失敗していたので、間の取りかたを研究して、愛嬌を入れると良いのでないかなと思いました。
古川雄大は、三部会の人形の動きが巧くてツボに入りました。
渡辺大輔は全体的に硬くて音程も不安定。ビブラート具合が宝塚版でデムーランを演じた凪七瑠海の声に似て聞こえて、不思議な気持ちになりました。

ラマール@坂元健児は美味しすぎ。王党派に属する男性陣の印象をすべてかっさらってしまいました。カーテンコールの拍手が一番大きかったのでは……。まあ、私も大好きですが!
トゥルヌマンとロワゼルに個性が見えず、どちらがどちらだったか、最後まで分からなかったのが残念。

王党派で期待していたうちの一方、ペイロール@岡幸二郎はさすがの迫力と、素晴らしい鞭使いでしたが、もう一方のアルトワ@吉野圭吾は、「私は神だ」のキーが完全に合っていないようで、苦戦している姿を初めて拝見しました。
催眠術と媚薬でオランプを操ろうとするエキセントリックな面と、大物のように振る舞っているけれど滲み出る小物感は良かったです。

フェルゼン@広瀬友祐は、フェンシングのスタイルが格好良かった。

東宝版の役作りで唯一物申したかったのが、ポリニャック@飯野めぐみ。アントワネットへ友情を感じられず、ただ宮廷女性の一人として取り入っているだけに見えました。そのため、フェルゼンに手紙を届けさせるやり取りでは、実は秘密警察と通じているのでは、と疑ってしまいました。
また、もう少し上品な貴婦人らしく振る舞って欲しいです。

子役は二人とも可愛いらしかったです。
シャルロット@万座みゆは、ダントンとの大小コンビっぷりがオシャマで可愛いですね。