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ミュージカル「サイド・ショウ」12:00回(初日)@シアター1010。
http://www.sideshow.jp/

ブロードウェイ・ミュージカルの日本キャスト再演。昨年の初演で評判が良かったので、チケットを取ってみました。
実在した結合双生児・ヒルトン姉妹の物語です。
非常に良かったです!
見世物小屋からボードビルの世界に挑戦し、スターとして成功して、恋もして、それでも結局世間からは「見世物」としか思われていないシビアな現実が突き付けられすべて失うラストは、重苦しく残酷で発散はできなかったけれど、色々なものを投げ掛けられていると思いました。
残念ながらあまり埋まっていない客席に、ショウビズの厳しい現実を感じましたが、こういう良作を絶やさず公演し続けて欲しいものです。

あとは、ヘンリー・クリーガー氏の楽曲が素晴らしかったです。楽曲の力を強く感じました。
歌唱力のあるキャストが揃っていたので、純粋に聞き惚れることができました。四季メソッドの方も多かったですが、この舞台では殆ど気になりませんでした。
名曲揃いですが、私としてはパンチのある「バケモノを見においで」や、R&B調の「奴らは悪魔」が好きですね。メロディが良いのは「サイド・ショウにさよなら」。双子の楽曲は、ショーで歌う曲も可愛いけれど、オフの2人が歌う曲が良かったです。
ちなみに、舞台上にバンドがいて、ちゃんと生演奏だったのも嬉しかったです。6人しかいないとは思えない音の厚みでした。音量調整が悪いのか、偶に歌声よりバンド音の方が前面が出てくることがありましたが……(苦笑)。

以下、キャスト評です。

ヴァイオレット@貴城けい
デイジー@樹里咲穂
まず特筆すべきは、2人の「結合」具合。
衣装や道具で固定したりはせず、ただ並んで立っているだけなのに、見事に腰がくっ付いていました。つかみ合いの喧嘩をしたり、2人が別の意志を持って動こうとする時の自然さと言ったら、2人が赤の他人である事実に驚くほどです。
それから、声の相性も良かったです。貴城けいはビブラートが強い印象だったのですが、意外にもとても素直な歌声でヴァイオレット役に合っていました。メリハリのある樹里咲穂もまたデイジー役にピッタリ。そして2人が声を揃えると、1+1に収まらない良いハーモニーが生まれていました。
……実は、出だしは周囲のキャストに比べると少し弱いと思ったのですが、舞台が進むに連れてエンジンが掛かったようで、どんどん魅力的に見えてきました。
部屋にバディとテリーが通されて姉妹が服を脱ごうとする時の、諦めを抱いた表情と淡々とした動きに、2人の見世物小屋の生活が忍ばれました。その後の夢を語る瞳が輝いていたから、スターを目指す姿は応援したいと思える、本当に魅力的な2人でした。

ボス@大澄賢也
胡散臭くて格好良い、見世物小屋のボス。
ダンサーらしい切れ味のある動きに加え、声にパンチがあって絶妙の配役だと思いました。

バディ@吉田朋弘
優しくて軽率で野心もあって、纏めてしまうと情けない男。歌はちょっと弱いと思いましたが、説得力のある演技でした。

ジェイク@吉原光夫
見世物小屋では「人食いの王」だったジェイクですが、普通にアメリカ生まれの黒人なのですよね?
声は良いし、1幕の時からヴァイオレットを愛していることがよく分かりました。ただ、ちょっとメリハリに欠けて、どの歌も同じ調子に聞こえちゃった気がします。

テリー@下村尊則
さすがに存在感のある役者でした。線が太く顔が大きい方が舞台では目立つという点からすると、身体的な面でまず一歩抜きん出いていますね。
「心の中で」の超低音には苦戦しているようでしたが、厚みのある気持ちのいい声でした。
役としては最後の最後で格好悪いことになるけれど、カーテンコールの度にデイジーの手を取ってはける姿は、本当の気持ちだったんだろうなぁと思います。

前日記事の続きで、「髑髏城の七人」キャスト評です。
脚本の変更点に関しては色々言いましたが、キャストは本当に素晴らしかったです。

捨之介@小栗旬
背が高くて、パッと目立つのが正に主演の華。
役者の持ち味の差で、捨之介が、古田新太の「胡散臭いおっさん」から「腕が立つ心優しい青年」と言うキャラクターになって、分かりやすくヒーローだと思いました。
で、チラチラと見える太股は、サービスなのでしょうか?(笑)

天魔王@森山未來
冒頭が天魔王の登場シーンからだったので「アオドクロ」風の天魔王なのかと思いきや、喋れば喋るほどボロが出る小物な天魔王でした。
「アカドクロ」の時は勝てそうにない「ラスボス感」に溢れていたのに、森山天魔王は「最強の鎧」さえなければ勝てる相手だと感じました。髑髏党のメンバーが全面服従しているのが不思議で、ラストは将監に裏切られるのではと疑いながら観ていたくらいです。
小物なのは役者本人も意識しているようですが、それにしてもあそこまで観客に笑われる天魔王で良かったのかな?
動きは、森山未來なので美しく、特にマント捌きは素晴らしかったです。個人的には、信長公を意識した赤マント衣装の時に見せる「高速すり足」が、今回の天魔王と言う人物を現していると思えて、ツボに入りました。
途中、切り結びながら相手に投げている言葉が、実際は天魔王自身への皮肉になっているな、と時々感じるのが面白かったです。
捨之介を捕らえる時に豊臣兵に勝てるのかと問われ、「勝てるさ」と答えたのだけ少し疑問です。あの時にはイギリス艦隊の反転を知っていたのだから、勝てないと分かっていた筈。ブラフにしては淡々とし過ぎていて、あのシーンにおける天魔王の考えのみ謎です。

蘭兵衛@早乙女太一
殺陣の早さはお見事としか言い様がありません。天魔王と戦うシーンは、2人の切れ味が素晴らしくて、
台詞は抑えて喋っている時と激昂する時で全然変わってしまうのが、個人的に気になりました。もう少し滑舌も研究して欲しいかな。
2幕の狂気に走ってからは、もう少し正気と狂気の境目に立っているような刃の切れ味が欲しいと思いました。水野美紀は演技が巧かったんだな、と改めて感心。
蘭兵衛は、女優でも男優でも難しい役ですね。

極楽太夫@小池栄子
遊女を救うため、太夫が裸になろうとするシーンは、なかなか色っぽくて素敵でした。
実にきっぷの良い姐さんで格好良かったです。反面、情感が薄いのか、実は兵庫を憎からず想っていると言う面が感じられませんでした。
太夫の頃と戦装束で、あまり差を感じなかったのは何故かな。マントがなかったからかも。また、ガトリングガンが比較的現実的なサイズになっていたのが、絵的な派手さが減って少し残念でした。

兵庫@勝地涼
この公演で、一番の収穫だと思った役者です。
橋本じゅんをなぞった演技ではあるのですが、観ていても決して橋本じゅんの物真似とは感じないと言うことは、自分の役としてモノにしているのだろうと思います。非常にハマってます。
台詞の滑舌も良いし、格好良いし、程よく軽いし、可愛いし、あとは鎌捌き(笑)が巧くなったら完璧ですね。
百人斬りのシーンは、昨日脚本的には文句を書いたけれど、舞台的には兵庫が相棒役をやったことで躍動感が出て見応えがあったし、刀を投げて交換するのも非常にスムーズで素晴らしかったです。

沙霧@仲俚依紗
「アカドクロ」の佐藤仁美と台詞回し、声のハスキー具合が同じように聞こえて吃驚しました。終盤、声がガラガラになっていたので、千秋楽まで保つか心配です。
爺と父親が目の前で殺される形に変更されたので、沙霧の絶望と怒りの爆発に納得できました。本人も、体当たりの素晴らしい演技でした。
後は、捨之介との年齢差がなくなったことで、2人の間の繋がりが「恋愛感情」に傾いたと感じました。だからこそ、出会いはインパクトのある救出劇で観たかったな、と思います。

贋鉄斎@高田聖子
登場した瞬間、「こうきたか!」と大ウケしました。
とにかく登場シーンで全部持って行った気がします。脚本的には、ちょっと「役不足」で勿体なかったですね。

将監@粟根まこと
眼鏡をかけてない、というところに実は一番驚きました。印象が変わりますね。
捨之介を天魔王として告発する役目は、豊臣方に捕らえられることが前提で、当然自分も死ぬことになると思うのですが、それでも良いくらい天魔王に心酔していたのか……と言うところだけがやっぱり疑問です。

三五@河野まさと
安心と信頼の裏切り男。
思った通りのタイミングで裏切ってくれる心地好さに浸っていたら、まさかの「剣を抜いて敵に勝つ三五」に裏切られました(笑)。
沙霧を助ける時の寝返り理由が分かり難かったのが少し残念でした。
後でプログラムを見て、他のキャスト陣との年齢差に吃驚したのですが、とんでもない童顔ですよね……。

狸穴二郎衛門@千葉哲也
体型の問題として、いまいち狸じゃないのが気になりました。無界の里の男性陣2人の方が恰幅が良かったので、余計にそう感じたのかも知れません。
今回、およしとの恋が盛り込まれたので、人間的に面白さが出たなと思います。

磯平@磯野慎吾
「アカドクロ」で不愉快だったのが磯平の登場シーンだったのですが、今回は役者任せのアドリブ(※)でなく、きちんと演出として分かるようになっていたので気になりませんでした。
そこがクリア出来ると、あとは演技の巧さに圧巻されるばかりです。鎌捌きも非常に鮮やかでした。

※前も演出だったのかも知れないが、ただの悪ノリに観えた。

劇団☆新感線「髑髏城の七人」12:30回@青山劇場。
http://www.dokuro2011.com/

面白かったです。
が、DVDで観た「アカドクロ」の完成度には及ばないとも思ってしまいました。
捨之介と天魔王の二役と言う最大のポイントを取り払い、影武者設定を消した意図はプログラムを読めばわかるのですが、やはりそこは作品の胆だったのだと思います。
捨之介の解放を説得で得て、天魔王の鎧兜と引き換えに褒賞を手にするのは、正直に言ってカタルシスに欠けました。
そもそも家康の立場になれば、「猜疑心の強い猿」相手なのだから、今回の展開ならば例え真実と違うと分かっていても、捨之介の首を獲らねばならなかったはず。沙霧たちに「2度と姿を現すな」と命じる理由も、ボヤけて良くわかりませんでした。

沙霧が捨之介に正気を取り戻させるため斬鎧剣を使い、贋鉄斎が研ぎ直しをすると言うエピソードも、下記の点から失敗していたと思います。

  • 斬鎧剣は研ぎ直せば使えることになり、一発勝負の緊張感が薄れた。
  • 百人斬りの相棒が兵庫になったため、贋鉄斎が明確に戦うシーンがない。
    結果、誰が「七人」なのか印象がぼやけた。

また、沙霧が最初から無界の里にいるのは過去の公演でもあったパターンのようですが、捨之介に助けられてから無界の里に行く方が好きです。
非常に短い期間の話なので、出会いにインパクトがあった方が、2人の関係としても巧く纏まるように思うためです。

と、色々言っても「いのうえ歌舞伎」の爆発力は確かなものなので、普通に面白かったので、細かいことに突っ込むのは野暮ですね。
時間が遅くなってしまったので、キャスト評はまた明日に持ち越します。

ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」12:30回@赤坂ACTシアター。
http://romeo-juliette.com/

フランスミュージカル「ロミオとジュリエット」の日本キャスト版です。
制作発表から観劇まで、テンションの上がり下がりが激しい舞台でした。
まず、チケットの先行販売段階でジュリエット役が未定と言う事態。更に、一般販売後になって生オーケストラではなく録音であることが判明。そして幕が開いた時点で、携帯電話やフェイスブックなどの現代的な小物が登場する演出に度肝を抜かれることになりました。

舞台としては、せっかく揃えた実力派キャストが勿体ないような感じ。
現代的な小物は、ちょっとした笑いを誘ったり、秘密結婚が写メでバレるくだりは成程と思わされましたが、結局は異物なので違和感になっていると感じました。
例えば、ネットワークが発展しているようなので、ヴェローナからの追放処分を受けることに悲壮感が湧きません。マントヴァを彷徨うロミオの「見知らぬ街」と言う歌詞も、ヴェローナを一度も出たことがないのかと考えてしまい、変な気がします。
ジュリエットは携帯を持っていない設定ですが、ロレンス神父に懺悔に行く振りをして、決まった時間にロミオと電話をさせて貰うとか約束くらいできるはず。そもそも、神父が重要な連絡をメールで済まさず、ジュリエットがいる段階でロミオに電話しておけば良かったのですよね。
電話が通じないので、自分でロミオにジュリエットの死を伝えに行ったベンヴォーリオに比べると、神父の手抜きっぷりに脱力してしまいます。
ロミオが死んだのは神父の責任、と言う解釈で演出しているなら、それでも良いですけれどね。

曲は、ロックミュージカルと言うだけあって、パンチのある曲が多いですね。
一番好きな楽曲は、シンプルだけれどドラマ性のある「僕は怖い」です。次がベンヴォーリオのソロと乳母のソロですね。ロック調じゃない曲ばかりですが(苦笑)。
シナリオ構成自体は、もともとが1曲歌う→1曲歌う→1曲歌う……の連続なのですね。1曲の中では、ドラマチックな動きがあって盛り上がるのですが、曲ごとが続かず、ブツ切れの場面を繋ぎ合わせているような感じです。
「世界の王」は客席からお約束の手拍子が入りましたけれど、前述の理由により気持ちが途切れたところから始まったので、私は乗れませんでした。

衣装も現代的なのですが、これは完全に私が苦手な部類でした。個人的には、女性陣の衣装が下品に感じられるのがアウトでした。
それと、フランス版本家や宝塚版で採用した、青モンタギュー家と赤キャピュレット家の色分けを使って欲しかったです。一応、シマウマ柄とヒョウ柄で分けているようですが、遠目に判別しにくくて意義を感じませんでした。

褒めどころとして、舞台のテンポ自体はとても良く、分かり切った展開なのに退屈に思うことはまったくありませんでした。狭い舞台を、最小限の設備で素早く場面転換させていたのも、テンポアップの一助でしょうか。

以下、個別のキャスト評です。まず、Wキャスト勢から。

ロミオ@山崎育三郎
ロミオらしいロミオでした。期待通り、あるいは想像通り。良くも悪くも、手堅い印象です。
純粋なロマンチストで、でも腰が定まってなくて直ぐ「結婚しよう」と言ってしまう辺りに説得力がある役作りでした。

ジュリエット@昆夏美
充分巧いのですが、やや「攻撃的」な歌声だと思いました。私としてはもう少し丸い歌声の方が好きです。
身長は、思っていた以上に低いですね。高いヒールを履いて、それでも山崎ロミオと頭1つ差があったので、城田ロミオだと釣り合わないのでは?

ティボルト@上原理生
「レミゼラブル」のアンジョルラス役が評判だったので気になっていた役者です。落ち着いた雰囲気なので、荒くれ者だとか、キレる男にはあまり見えませんでした。声は良かったので、次は持ち味に合った役で観てみたいです。

マーキュシオ@石井一彰
いかにも道化と言う感じのおちゃらけっぷりで、モンタギュー3人組に良いアクセントを付けていました。
ただ、滑舌が悪いのか、音響のせいか、何を言っているのか聞き取れないことがありました。

死@中島周
霊魂のような死のダンサーでした。気が付いたら既に舞台に佇んでいて、一体何時からそこにいたのかと驚かされる、正に忍び寄る死のイメージ。
背中を向けたときの体型が、シドニー@ベイグランドストーリーに見えるのも面白かったです。

続いて、シングルキャスト。

ベンヴォーリオ@浦井健治
配役時点で期待した通り、非常に良かったです。ロミオへの友情や、モンタギュー派の若者たちのリーダーとしての自覚が端々から感じられて、1人のキャラクターとして説得力がありました。
ベンヴォーリオって、実は一番美味しい役なのでは?

パリス@岡田亮輔
年齢設定が分からず、ジュリエットより相当年上だと思ってしまいました。パンフレットで確認したら、若い役者だったので驚きました。

キャピュレット卿@石川禅
安心と信頼の演技。ジュリエットの出生設定があるために、娘への愛情に哀しみを感じました。

キャピュレット夫人@涼風真世
ジュリエットがキャピュレット夫人の不義の子である、と言う設定と告白には度肝を抜かされました。
もしかして、相手はティボルトの父親なのでしょうか……。

ロレンス神父@安崎求
軽さと重さが共存した軽妙な神父様でした。
前述の演出の問題があって、諸悪の根源のような気がしてしまうのですが、善から出た行いが、結果として死を生んだ神父目線の悲劇は感じることができました。

モンタギュー夫人@大鳥れい
演技は問題なかったのですが、キャピュレット夫人と並ぶと何故か不釣り合いな感じがあって、あまり両家が巧く和解しそうに思えませんでした。

モンタギュー卿@ひのあらた
存在感のない父でした。長身で格好良いのですが、なんせ出番が少ないので良く分からず……。
全体的に、モンタギュー家夫婦はキャピュレット家に比べて冷遇されていますね。

ヴェローナ大公@中山昇
もう少し威厳と気品が欲しかったです。
大公と言うより、サーカスの団長のように感じました。

乳母@未来優希
ソロ「あの子はあなたを愛している」がとにかく圧巻。緩急自在な演技にも改めて惚れ惚れしました。
ジュリエットへの愛情が非常に強くあって、パリスと結婚するよう薦めるのも、彼女がロミオを追い求め続けても未来はないと思うからこそ、敢えて軽薄に振る舞いつつ諭そうとしているのだと感じました。

最終的に、自分としては宝塚版を観たかったなぁと改めて思いました。
宝塚版に存在する「愛」というキャラクターが欠けているせいか、恋物語としての側面が薄いように感じたのです。愛と死の一体化というカタルシスもないですしね。
あるいは、Wキャストであっても組み合わせが固定なら、もっと人間関係を掘り下げて、キャラクター同士の繋がりが出てくるかもしれません。

シアタークリエにて、新生「ROCK MUSICAL BLEACH」13時回を観劇。
終演後の一言挨拶は佐藤美貴、日替わりトークショーは彩乃かなみ(+新納慎也、司会:森貞文則)でした。
http://rmbleach.com/

BLEACHが、まさかの東宝ミュージカル化。
年配隊長格のキャスト陣容が面白いので、1回は観ておこうと思って行ってきました。結果、クリエのホワイエにコンの着ぐるみがいたり、グッズの売り子が死覇装を着ているなど、面白い光景を見ることが出来ました。

肝心の舞台は、キャストから120%の熱意を感じました。シアタークリエという劇場のサイズもあるのでしょうが、最後のキャスト挨拶で「この人数で演っていたのか」と驚く密度でした。カンパニーの雰囲気がとても良いんでしょうね。
一方、作品としての感想は、脚本・演出(きだつよし氏)に期待値を上げ過ぎていたようで、辛めになっています。
脚本は一言で言えば薄いです。舞台本編2時間をかけて、たった1人の敵と戦ってるだけという展開は冗長だったと思います。大どんでん返しはなく、幕間に想像した通りの設定&展開だったのも残念。各キャラの歌が一曲ごとに長めで、テンポを削ぐ時もありました。
それと、最大のモヤモヤは2幕終盤。舞台オリジナルキャラクター2人のオンステージ化している、と感じたときです。演じる彩乃と新納を好きであるがゆえに、原作漫画ファンから観て「これはBLEACHなのか?」と座り心地が悪くなりました。
ただ、照明はなかなか凝っていたし、真面目に作ってるのは良く伝わってきました。殺陣が凄く多くて、男性の迫力を見せ付けられるという、宝塚では得られない感動もありました。出演者にとっても、若手俳優たちとバラエティ豊かな経験者たちと一緒に舞台に立つことで、互いに刺激される面白い舞台だったろうと思います。

……最終的には、一言挨拶とトークショーで大爆笑して色々吹き飛びましたしね(笑)。
以下、キャストごとの評です。

一護@法月康平は未知数の役者でしたが、充分な歌、芝居、殺陣でした。やや、歌詞が聞き取れないことがありましたが、音響にも問題があったので、今回は大目に見たいと思います。
ただ、彼が「黒崎一護」かと言われると、私はイメージ違いな気がしました。

唯一続投のルキア@佐藤美貴。
さすがに安定感があり、更に一護が若返った分、お姉さん的な印象が強く出て来て良かったです。
一言挨拶によると、日替わりネタを仕込むのがストレスになっているらしく、アドリブとか好きそうなのに、意外でした。
あと、久し振りに彼女の顔を見て、蘭寿とむ(宝塚花組男役トップ)に似てる!と思いました。賛同者募集中です。

阿散井恋次@鯨井康介。私にとっては「テニミュ2代目海堂」のイメージが強く、恋次と上手く結び付かなかったのですが、生き生きと演じていたのでこちらの方が素に近いのかも?
ラップが始まった時には客席で勝手に緊張しましたが、しっかり歌詞とリズム、メロディが分かる歌で感心しました。
脚本上の役回りとしては、「名前のあるヤラレ役」的な扱いで、恋次の良さが表現されていなかったので、勿体ないキャスティングでした。

日番谷冬獅郎@木戸邑弥は、前任の永山たかしから違和感のない変更。声が低いのと、身長が結構あるので、さすがに133cmの少年には見えませんでした。まぁ、本気で日番谷隊長を再現しようと思ったら子役になっちゃいますものね。
ちなみに、抽選で当たる舞台写真で、彼の写真を頂きました。舞台上の姿がそのまま静止画になってもOKなビジュアルは素晴らしいです。

朽木白哉@太田基裕にはこれと言った感想がありません。演技の大破綻はありませんでしたし、最後に乱入して射真を倒してしまったり、そこそこ美味しい位置を貰っていたのですが、総じて出番が少なかったのかな。
線が細いので、存在感を出すのは大変だと思いますが、メインキャストなので頑張って欲しいです。
結局、一言挨拶の時に、ルキアから無理矢理「兄様がレディー・ガガの物真似をします」と無茶振りされての反応が一番印象に残っちゃっています。

観劇を決めた要素の一つが、京楽春水@石坂勇。
漫画でイメージした京楽隊長と言う感じで、期待通りの出来でした。
お茶目でダンディーでエネルギッシュで器が大きい。そんな雰囲気が漂ってくるというのは、これは年齢を重ねていないと出せない味ですよね。
京楽の斬魄刀は始解すると巨大化、且つ二刀という点で戦闘中は扱いが大変そうでした。

まさかBLEACHで名前を見ると思わなかった、バレエダンサーの浮竹十四郎@西島千博。
ミュージカルと言っても、この舞台は歌のみでほとんど踊らないのですが、彼はバレエ振り付けで数回踊ってくれます。
芝居面では、第一声で、棒読みとも違う独特の喋りに吃驚しました。ただ、喋りは「そういう喋り方設定のキャラクター」と思えば済みますし、多少慣れるのですが、歌唱には椅子からずり落ちそうになりました。いっそ、歌わせないと言う選択肢もあったのでは。
ニコニコした天然っぽい雰囲気は、とても浮竹隊長であっただけに、惜しいです。今後も舞台のオファーを受けるなら、発声は習って貰いたいです。

オリジナルキャラクターの1人、遥華@彩乃かなみ。
宝塚退団後の舞台を観るのは、これが初めてです。
物語の根幹に関わるキャラなので出番は少ないですが、印象的でした。相変わらず「マリア様の歌声」とでも表現したくなる優しい癒しの歌声です。客席降りで近くだったため、生声で高音が聞けて、とてもラッキーでした。

オリジナルキャラクターで敵役の射真@新納慎也。前半から後半まで出ずっ張りで、影の主役。あの個性的な存在感がマッチした役で良かったです。
殺陣の切れ味が若者たちとまったく違い、見惚れました。「ダミーを使っている」という設定で1人で何戦闘もこなすので、1公演が終わったらひっくり返るんじゃないだろうかと思います。
トークショーでは新納節が見られましたし、この舞台は新納ファンが増えるんじゃないでしょうか。

隊員も虚もこなすアンサンブルは7人。
正直、虚はヒーローショーの雑魚敵みたいな被り物で毎度安っぽいのですが、動きは素晴らしかったです。書き割りの移動や、各種卍解の演出で布等を舞台上に縦横無尽に張り巡らせる役も担当しているようですね。こういう方々が舞台を支えているのだと改めて感じ入りました。