• 2013年登録記事

五十音順キャラクター・ショートショート【ぬ】
→ルールは2012年12月17日記事参照


「盗人だ。あの男は盗人なのだ」
 男は娘の智謀を知って以来、数多い子供たちの中でも特に彼女を可愛がり、機嫌の良い時は彼の王のことをこう言って教えた。
 確かに王はフィニー王家の血筋でギュスターヴの名を持つ者。だが王の証を持たず王家を追われた後、異母弟を殺し、数多くの臣民の血を流して、玉座を己の物とした。
 王の振るう鉄の剣が砕いたものは、軍勢と術世界だけでない。ファイアブランドによって保証されていた王の絶対性も、粉微塵になった。
 アニマのない王が認められるなら、誰でも王になれる。
 幼い娘がそう不思議がると、男は濃い笑みを浮かべた。
「最初にそれを行った者は盗人であっても英雄と呼ばれ、二人目は梟雄と呼ばれる。その覚悟がない奴は盗まぬのだ」
 だが娘は言葉にされなかった父の声を、確かに聞き取った。

 ――俺は違う。盗む。この時代に男として生まれたからには、盗んでやるぞ――

 人から謗られるとしても、覚悟なく生きる愚者に比べなんと気高いことか。
 このときヌヴィエムは、生涯を父の娘、盗人の娘として、顔をあげて生きようと思った。

盗人の娘
……ヌヴィエム・ドラングフォルド(ゲーム「サガ フロンティア2」)


色々暗躍するのですが、実はあまり印象がない女性です。彼女の父親であるカンタール候も同様のため、イメージ違いでしたら申し訳ありません。
物語としてはギュスターヴ編の方が好きですが、自分で操作する箇所が極めて少ないので、どうも記憶力はウィル編に割かれてしまったようです。

もしヌヴィエムで書き上がらなかったら、ヌート・ガンレイ総督@スターウォーズしか候補がいませんでした。助かった……。

五十音順キャラクター・ショートショート【に】
→ルールは2012年12月17日記事参照


 兄さん、と呼ぶ声が確かに聞こえた。
 そのお陰か、負けたのに妙に満ち足りた気分だ。
 あらゆる人を裏切り、神に挑んで、結局なにも為せなかった。だが、もう何も羨んだり、妬んだりする気にならない。
 本当に必要なものは、もう持っている。
 死を前にした一瞬に、ニーバは物心ついてから初めて知る安らぎを感じ、その充足の中に落ちていった。

 ――つもりだった。

「……おい」
 眼を閉ざしたまま、ニーバは傍らの気配に短く声を掛けた。生命が流れ出た体は、それをこなすだけでも酷く億劫だ。もう一言だって喋りたくない。
 それなのに、相手は聞こえなかったふりをしているのか、ニーバが呼び掛けに込めた意を汲もうとしない。
 仕方なく、ニーバはもう一度口を開いた。
「……俺は今、あいつと和解して、ちょっと格好いいこと言って、いい気持ちで死ぬところなんだ」
 これまでの人生で、思うところをこんな赤裸々に話したことはない。死ぬからといって、話して聞かせる相手が誰でも良いわけじゃない。それを許したのは、ずっと自分の側にいた者への愛着だ。たとえ、それが仕組まれていたことだとしても。
「だから邪魔するな、サキュバス」
 命令と、懇願と、ひとかけらの愛情をもって彼女の名を呼んだ。
 女は死の淵からニーバの精神を掬い上げ、いま彼に生きる力を分け与えようとしている。
「バカね」
 突然、予想もしていなかった言葉が返ってきたことに、ニーバは思わず眼を開けた。
「あなたは今、ドルアーガ様なのよ」
 女が縋る不死身の悪魔の名に、思わず笑いが込み上げた。
「ドルアーガだって、死ぬ。知ってるだろう」
 現に、最初のドルアーガも死んだ。その時は、彼女自身も滅びの危機を迎えていたとはいえ、身を分け与えてまで助けようとはしなかったはずだ。
 何故なら――
「塔のシステムは死なないわ」
 ドルアーガが塔を造り、塔がドルアーガを造る。
 この地上が神々の遊び場である限り、悪魔は新たな形をとって蘇り続けるのだ。
 そう、ドルアーガであるニーバが死ねば、また次のドルアーガが生まれる。
「いいの? 今あなたが死んだら、あの子が次のドルアーガ様よ」
 瞬間、ニーバは背筋を使って飛び起きた。
「即刻生き返らせろ」
 死ぬ気はすっかり失せた。
 なに、人生に満足したからといって、その時点で死ぬ必要はない。生きていればまた別の生き甲斐も見出だせる。

 こうして、三つ目のドルアーガの塔が生まれた。

二度あることは三度ある
……ニーバ(アニメ「ドルアーガの塔 〜the Sword of URUK〜」)


こういう話を書いておきながら、「ドルアーガ」は継承制じゃなさそうですけどね。
今回ニーバを書くにあたって、素の彼は結構バカなんじゃないかなと思って、「ちょっと格好いいこと言って」という台詞を敢えて入れました。

五十音順キャラクター・ショートショート【な】
→ルールは2012年12月17日記事参照


 なんでも願いが叶う、幸せな世界。
 そんな夢のような世界は、文字通り、夢の中にしかない。

 ナナリーは一度だけ、消えゆく夢の世界を振り返った。幸せそうに笑う人々が、果物をたくさん付けた木々が、弟が立っていた砂の一粒まで、光に溶けていく。
 彼女が選んだのは、絶対の幸福が存在しない現実だけれど、あの夢――弟の笑顔、自分を呼ぶ声、食べ切れないほどの料理を二人で頬張る喜び。そこに幸せがあったことは、決して否定できない。
 だから、この夢は忘れない。限りない愛と幸せと、戒めと共に。

涙の出る夢
……ナナリー=フレッチ(ゲーム「テイルズオブデスティニ−2」)


ナナリーとしいなは「喧嘩ップル」「姉御肌」「自分のせいで身内が死亡(または昏睡)した負い目がある」という要素から、つい同じような語り口で書いてしまいそうになります。
でも、ナナリーの方がドライで、しいなの方がウェットな印象です。たぶん、ナナリーは暑い国で生まれ育ったラテン的人種だからでしょうね。

それにしても、主人公も敵方も「すべての人間が幸せになる方法は現実世界に存在しない」と結論付けるTOD2は凄い。私は創作の中でくらい、幸せにしたくなっちゃうので、そう思います。

「パティスリー ア・ラ・カンパーニュ」池袋店で夕食を頂きました。
http://www.alacampagne.jp/

名前の通りケーキ屋ですが、スイーツのみならず、飲み物や料理メニューも豊富。
南仏プロヴァンスというお店のコンセプト通り、店内は素朴で温かい雰囲気。広々していて居心地が良く、食器やディスプレイにも凝った可愛さがあります。
食事は前菜、パスタ、ピザ、サンドウィッチ等々。量が意外と多くて、お腹いっぱいになりました。複数人で行ってシェアするのが良さそうです。なお、紅茶のはカフェオレボウルでの提供でした。

肝心のスイーツは2種類。

タルト・メリメロ
10種の果物がぎっしり乗せられた1番人気のタルト。果物の下は定番のカスタードクリームで、生地はスポンジがないクッキー風のタイプ。
とにかく果物が豪華。見た目の美しさだけでも人気が分かります。

カンパーニュ
ビスキュイでカスタードクリームを挟んだもの。表面はサクサク+中はフワフワの生地はとにかくシンプルな味で、クリームの方もかなり爽やかな甘み。
お店の名前を付けているだけあって、これは確かに魅力的な商品でした。個人的には、3個くらいペロリと食べたい!

絶賛するほど美味ではないけれど、スタンダードなものを安心して食べられるお店だと思いました。勿論、お値段が納得できる範囲内であることもポイントです。

唯一残念だったのは、アラカルトで頼んだ料理が順番を考慮せず一度に運ばれて来たこと。急いで食べざるを得なかったし、頑張っても一部は冷めてしまい、心行くまで味わえませんでした。
これが常だとすると、まず前菜を頼んで、最初の注文が運ばれて来た時に主菜を頼む、と客の側が料理の運ばれてくる順番とタイミングをコントロールする必要がありますね。

その問題点以外は、女性同士で入るのにお奨めできるお店です。

五十音順キャラクター・ショートショート【と】
→ルールは2012年12月17日記事参照


 搭乗していたのは子供だった。
 ならば、生身の標的をモビルスーツで踏み潰して終わらせなかったのは彼の美学でなく、ただの子供の矜持だろうか。
 否、子供は戦士の眼をしていた。その瞳は、己の足で立ち上がり、自らの手で掴み取ってこそ、勝利と平和に意味があるのだと語っていた。
(――私の理想を、敵である彼が一番よく知り体現している)
 その事実に男は満足した。
 これこそOZが仕掛けた戦の成果だったのだから。

友より敵を求む
……トレーズ・クシュリナーダ(アニメ「新機動戦記ガンダムW」)


我が人生最初のガンダム体験(小説を除く)。
トレーズ閣下は、最終回に行き着いても、なにがしたいのか、なにをしているのか分からない人物でしたが、要は「明確な敵を作ることで、人類全員が平和のために努力する状況を作る」ことが目標だったのでしょう。
この解釈の問題点は、閣下公認の理解者である五飛が、そう理解して行動していたように思えないことです(笑)。