• 2015年登録記事

ハリイ・ケメルマン著 永井淳・深町眞理子訳「九マイルは遠すぎる」

いわゆる「安楽椅子探偵」物の短編、ニッキイ・ウェルト・シリーズの8編。
基本的に、聞いた話から推論を語る展開がほとんどなので、地味な話が多いですが、結果として犯人の悪意等に直接触れることが少なく、犯罪が対象のミステリにしては軽くて読みやすく感じました。

著名な表題作「九マイルは遠すぎる」は、やはりスマートな印象。
「推論は理に適っていても正しくない」ことを証明しようとした結果、推論で犯罪を暴いてしまったというオチも揮っています。
ただ、「わたし」が言った「九マイルは遠すぎる」の台詞が、実際は他人の台詞であることがキチンと明言されていないのが少し気になりますが、これは翻訳物だから伝わって来ないだけでしょうか。

10時の学者」のみ、犯人に「真相を知っている」と仄めかす伝言をして故意に自殺させるオチに、後味が悪いと思いました。

エンド・プレイ」は、無関係かと思われた被疑者も推論の中に組み込まれていて無駄のない構成でした。ただ、この作品は読者に与えられる情報が少なくて、推理は困難なのが残念なところですね。

7編までは、ニッキイの推論に驚くばかりでしたが、最後の作品「梯子の上の男」は、私でもちゃんと解けました!
他の作品に比べると、語り手が現場にいる頻度が高く、状況証拠=ヒントが多いためだと思いますが、少しは推理能力が上がったかな、と嬉しくなります。

それにしても、この手のミステリを読むと毎回感じることですが、みんな、記憶力が良いのはもちろん、正確に状況を供述する能力に長けていて驚きます。

TVアニメ「血界戦線」5話〜9話
http://kekkaisensen.com

感想が遅れましたが、「血界戦線」もちゃんと見ています。
相変わらず作中は言葉不足なので、なにが起こっているのか、雰囲気しか分からない時もあります。それでも次回をちゃんと見ようと思うくらい、全体的にセンスが良く、テンポも良く、映像も良く、と楽しんでいます。
実のところ、視聴している3番組中、一番面白いかもしれません。
原作付きではあっても、アニメオリジナルキャラクターとストーリーが入って、先の展開がわからないという緊張感もありますね。
問題のオリジナルキャラクターも、今のところ巧く使われていると思います。でも、その辺は最後まで観てから評価したいと思います。
こんなに良くできた作品で楽しんでいるのに、オリジナル部分がクローズアップされてくると不安が沸くのが、GONZOクオリティですね(笑)。←と思っていたらBONESだった!

内藤先生が描かれるアクションは、ギミックや一枚の絵としては格好良いけれど、なにをどう動いているのかよく分からないと常々思っているので、アニメだとストレスなく見られます。
また、エロとグロは、ケチャップと味噌(5話)やら、サーモグラフィー(8話)やら、巧い婉曲表現で規制を回避しているので感心しました。

みをつくし料理帖シリーズ最終巻「天の梯」

シリーズ完結巻。
終わってみると、ラストは少し駆け足気味に感じたけれど、小松原様との破局や又次の死も、すべて予定調和だったと感じる、無駄のない作品でした。
もちろん、エンターテイメントであるから、多少ご都合的にすべてが巧く纏まるようになっています。摂津屋を筆頭にあさひ大夫の旦那衆が、こんな鯔背な男たちでなかったら身請け話は進まないですよね。
とはいえ、読者は正に「雲外蒼天」の物語を期待して読んでいるわけですから、苦労の末の大団円は待ち望んでいたもの。正しい終わりかただったと思います。
采女宗馬が逃げて捕まらなかった点は悔しいですが、これは番外編で回収するのかな、と勘繰っています。

巻末に付録として、文政11年の料理番付が付いていました。作中「元号が文化から文政へと移った。」と記されているので、物語の終わりから10年後ということになるので、東西の大関に上り詰めるまでの精進の日々を色々想像できる、なかなか粋な仕掛け。
ただ、一柳が天満一兆庵に名前を変えてしまったことは、個人的に引っ掛かりました。
柳吾自身が名に拘っておらず、ご寮さんがいい女将で、佐兵衛が後継者として皆から認められているとしても、一柳でずっとやってきた奉公人からしたら「後妻と連れ子が乗っ取った」という気になりませんかね?
普通なら「天満一兆庵が再興した」と感動すべきポイントに、ケチを付けるのも気が引けるのですが……

150603.jpg

鎌倉・長谷にある鎌倉野菜を使ったイタリアン「0467 Hase kamicho」でランチをいただきました。
http://kamakura0467.com/0467hase-kamicho/

まず、古民家を改装したという建物は、全体的に和洋が合体した雰囲気。収容人数は、恐らく20名強というところでしょう。
お洒落だけれどこじんまりしていて、全体的に落ち着いた印象を受けました。

ランチプレートは、一皿に前菜から主菜まで盛り付けた形で提供。簡単なものですが、料理の説明もして頂けます。
色とりどりの見た目が、まず「美味しそう」という期待感を煽ります。
このお店のウリは、鎌倉野菜と魚とのこと。珍しい野菜や味の濃い魚は実に美味しかったです。でも、メインディッシュはご覧の通りお肉でした(笑)。
スープはコーンスープでしたが、ただのコーンではなく、複雑な味わいがしました。恐らく、後味からするとローズマリーが入っていたのではないかと思います。好みは分かれそうだけれど、面白いアイデアだと思いました。
イタリアンなのに、パンの代わりにご飯を選択することもできるのは、日本人向けで良いですね。

デザートは別料金オプション。プリンを頂いてみましたが、上はクリーミー、下はさらっとして美味で、とても私好みでした。
食感として近いものは、パステルの「なめらかプリン」でしょうか。
カラメルは量が多い割に甘過ぎも苦くもなく、程よい具合でした。