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情報筋で囁かれていた通り、来年正月の花組公演「太王四神記」制作発表会がありました。

原作ドラマを見ていないため各役の比重などが理解できていないのですが、Wヒロインの一方を男役が演じるのでは、と言う噂を聞いてしまったため、今日は一日、仕事の合間に念を掛けていました。
勿論、大空祐飛が女装(笑)することがないように、です。
女役しても似合う方だと思いますけど、身長と肩幅が勿体ないとか、あと何年あるか分からない男役人生が惜しいとか、花組初見の友人を連れて行こうと思っているのでとか、まぁ複雑なファン心理ゆえです。
愛音羽麗の女装もマンネリ感があるので避けて頂きたいなぁと、こちらもついでに軽く念じつつ、帰宅したわけですが……

http://www.sanspo.com/geino/news/081029/gne0810291515000-n1.htm
取り敢えず念は通じました!
個人的に、ホゲ役って、何回見ても「ボケ役」と読んでしまうのが難点ですが、慣れようと思います。

宝塚花組東京特別公演「銀ちゃんの恋」15:00回。
映画「蒲田行進曲」を元とした、全編スミレコード警報が鳴っていそうな、およそ宝塚らしからぬ演目。しかし、出演者が体当たりで演じ、それに応える客席の拍手も熱く、やはり観て良かったなぁと思います。
正直、演出が特別良いとは思えないので、原作の威力でしょうか。ただ、ラストのオチはちょっと放り投げられた感がありました。

とにかく「オレが主役だ」の倉岡銀四郎@大空祐飛は、ろくでなし。破天荒とか自己中心とか、でも寂しがりとか、そんな説明で収まる男じゃありません。「ギン」という名前の男は、みんなどこか歪むんでしょうか?
柄々のド派手衣装に身を包みカメラ目線でキメキメ。自虐ネタ中心に笑い所も多く、「顔で踊る」には大いにウケました。あと、倉岡銀四郎としての役作りなのか、本人の素なのか、殺陣の棒立ちっぷりにも苦笑い。月→花組の経歴では、日本物は慣れてないのかな。
土方扮装は、ビジュアルを堪能できて非常に嬉しかったです。どんな奇抜な格好で笑われても格好良いと言わせるのは、これも一つのスターの才能。
知り合うことを全力で遠慮したい男なのですが、「上がってこい! ヤス!」で、犬のように付いて行ってしまうヤスの気持ちが分かりました。

主役と別に、物語の主人公はヤス@華形ひかると言える比重で、半年前「舞姫」にて死に演技に泣かされた華形ひかるに、今回も泣かされました。
十四場、銀ちゃんに真正面から抱き締められた瞬間、オペラグラスで覗き込んだヤスは硬直し、やがて浮いた手をどうしたら良いものか震わせて、やっとの思いで銀ちゃんを押し退けていました。
小夏@野々すみ花は、あいかわらず抜群の演技力でした。今度は本当の妊娠で、出産まであり。こんな若い子がこんな演技できてしまって良いんでしょうか。
個人的には、橘@真野すがたが驚く程ぴったりのキャスティング。竜馬の扮装がとてもよく似合っていて、格好よかったです。ただ、スーツだとちょっと印象が平凡。和物衣装が似合うのが良かったのかな。記念撮影シーンはアドリブですか? 子分達と一斉に背を向けてアホポーズを取るところが面白かったです。橘って、実はアホキャラですよね。
女秘書はなかなか目立つ儲け役。監督はパンフレット写真を見たら、顎割れメイクで気合いが入っていますね。
銀ちゃんの子分役者の一人だった日向燦は、こういう演目なので、もっと中心を喰うくらい弾けた演技をするかと思いましたが、自分の役の大きさをちゃんと保った役作りで、立派でした。
初演と同じヤスの母は、これまたリアルな演技。ところで方言指導って、やはり先生がついているのでしょうけれど、大変そうですよね。

元々ミュージカルではないので、歌はちょっと付け足し感があります。作中にダンスは殆どなし。
でもミュージカルとしては成り立っていなくても、芝居として充分面白いから、これで良いのだ!と思います。
怒鳴る演技が多いためか、声涸れが何人か気になりました。楽まであと少しなので、頑張って!

では、いつも通り最後に苦言です。
セットの移動に音を立て過ぎだと思います。青年館の床の問題などもあるのかも知れませんが、観劇中から気になりました。
あと、暗転も多用し過ぎでは。同じ場面転換方法ばかりなので、回想シーンに入ったとか、時間が過ぎたなどの情報が伝わり難かったように思います。
石田先生、演技指導以外もよろしくお願いします。

改めて「舞姫」の話。
悲劇ですけれど、すべての事象に一片の救いを与える構成になっているからこそ、美しいのだと思います。
死の床の芳次郎は、日本への郷愁を語りながらも最後にマリィの名前を呼ぶ。
エリスは、見舞いに訪れた豊太郎、但し彼女からすれば見知らぬ男の手に、初めて会った時と同様に頬を寄せる。
そして、芝居の幕が降りてからカーテンコールの段階で、観客へ挨拶するより前に、豊太郎とエリスが抱き合う。心の中か、天国か分からないけれど、二人の愛が偽りでなく今も想っていると言う形で眼に見えたように思います。
この美しさは、読了感が良い小説に似ています。

そして物語自体が、ただの恋愛悲劇でなく、国家と誇りに殉じる男達の生き様による一片の悲劇だから、日本人にウケるんでしょうね。
もう一歩、愛国精神が強い作品であった場合、拒絶反応もあったと思うのですが、この辺の適度なさじ加減は女性脚本家だからこそでしょうか。そう考えると、現在大劇場で上演している「黎明の風」と対称的かも知れません。

花組東京特別公演「舞姫 -MAIHIME-」11時回。
花組は生徒の顔が見分けられない状態なので、本当に楽しめるだろうかと少し心配もしていました。
結論から申し上げると、面白かったです!
原作のイメージを損ねる事なく、かといって高尚一辺倒でなく軽い笑いを交えつつ、豊太郎という人物に宝塚劇の主役たる説得力を持たせ、美しき悲劇として成立させていました。
その脚本を、愛音羽麗は熱演、野々すみ花は名演で応えており、バウホールで絶賛されたことも納得です。東京で再演されて本当に良かった!
なお、前回花組公演で注目した未涼亜希はと言うと、全役者24人中1人だけ台詞を噛みました。しかも二回。御陰で、未涼亜希の台詞だけ凄い緊張して聞いていました。伴奏が入ると途端に安定し、余裕の歌唱を披露してましたけれど……。また、演技が少し硬く見えました。相沢のキャラには合っていたので、これは役作りでしょうか。

以下、シナリオに沿っての感想です。
第一幕、ドイツ行き。恐らく大劇場とは大幅に異なるのだろうセット予算ですが、稼働仕切りを巧みに使っていました。豊太郎の出立のシーンでは、正に海原が広がるように感じました。ちなみに、座っていた席の後ろに照明光があった都合上、投影されている文字がちょっと読み難かったです。演出ではそこだけ不満でした。
愛音羽麗は序盤から歌いまくり。主役とは言え、ほぼ出ずっ張りで歌い続けるのは大変ですね。
舞踏会は華やかで、ちょっと心が浮き立ちます。岩井、大河内らが途中から下手なダンスを見せてくれるのが面白く、中心を見ずにそちらに視線が行ってました。しかしこの時点では、岩井くんがこの後ずっと絡んで来る、あんな「いいキャラクター」だとは思いもしなかったです。
そして、原芳次郎との出逢い。これは原作にいないキャラクターですよね? 恋人のマリィの方は、パンフで注視した通りのなかなか「いい女」でした。
ここまでで既に4場消化。ヒロイン登場まで、かなりの時間経過があるんだなと吃驚しました。
そんなわけで、待望していたエリスが登場したのですが、その瞬間に脱帽しました。まず、声がとても可愛い。顔は、オペラグラスで覗いてみたところ、正直美人とは思えませんでしたが、その演技で、儚く、いじらしい美少女に化けていました。こんな子なら、助けてあげたい、守ってあげたいと思ってしまうのも頷けます。
一幕ラストは免官処分と母親の自決。座した豊太郎の周囲を、縁ある人々がぐるりと囲む演出は、目新しいものでないですがとても効果的でした。

第二幕、導入は明るくサブキャスト勢揃いでコーラスと思いきや、悲劇の予感をさせる芳次郎の様子に、はやくもドキリとさせられます。
逆に、時計とエリスの伏線は、一幕から入れても良かった気がします。
ロシア行きのシーンは、手紙の演出を大活用。ただひたすら待っていると連呼するエリスが重く、祖国と家族への愛と誇りがまた重く、豊太郎がここで決めかねるのも納得です。
そして、芳次郎の死。朦朧としていてドイツ語が通じない、と泣き崩れるマリィに感情移入しました。その後の豊太郎と芳次郎の会話は日本語でなされたため、マリィには通じていない筈ですが、私は、彼女はなんとなく理解していたと思います。芳次郎の心が日本に帰っていたのを。だから、少し離れた椅子に座って放心したように見えました。
で、正直に白状しますと、芳次郎が「白いおかゆさんが食べたい」と言った瞬間、涙腺が決壊しました。宝塚で初泣きです。日本人だからかしら(ちなみにその後、昼に和食を食べました。いつも以上に美味しく頂きました)。
芳次郎は、明らかに「もう一人の豊太郎」として設定されていますよね。だから、彼の遺言に従い帰国を決意するのは、仕方ないことだと感じられました。
エリスを最初から心を病んでいる少女と設定しているので、後の崩壊は予定調和。正直、相沢は損な役回りですね。ただ、エリスの狂った眼差しがとても透明で、向こう側の世界に行き着いてしまった感がしました。
帰国で終わりかと思いきや、広げた風呂敷「憲法発布」までちゃんと回収。
そして、更に「もう一人の豊太郎」青木英嗣が登場。パンフレットで確認したら、彼は大学自体の豊太郎役(回想)と同じ役者が演じているのですね。少ない人数で回している舞台ならではの、憎い配役だと思います。彼はベルリンに赴いて彼にとってのエリスに巡り会うのか、その場合どう決断するのか、想像が広がって面白いなと思います。
エピローグは、デュエットダンスがあるかと思いきや、あっさり。でも綺麗にまとめていたと思います。

今回は2階B席でしたが、青年館の箱自体が大きくないため、さほど遠過ぎる感はなく、舞台の全景も綺麗に見えて意外に良かったです。オペラグラスの出番も、結果として数回しかありませんでした。
ただ、青年館の椅子は小さくて軋むのと、宝塚を見た!と感じる華やかさに欠けるので、個人的にはやはり東京宝塚劇場の方が好きです。

寝ようかと思ったところで、自分的天変地異が起きました。

大空祐飛 2008年1月26日付で花組へ組替え

と、と、と言う事は、来年2月から始まる月組公演「ME AND MY GIRL」に、祐飛は出演しないと言う事ではないですか!
観劇予定をどうしよう、と混乱を来しています。
大空祐飛が月組に居続けると言う思い込みは、妄想に過ぎなかったのですが、入団時から月組で育ったのだから、このまま月一筋だと安心していたのですよね。
何より、花組は真飛聖が新トップとしてこれから組をまとめ直す段階で、お互いに気を遣う事になりそう。
とすると、複雑なのは花組ファンの方かしら。

ちなみにこの人事、思い返すとかなり以前から設定されていたと思われます。根拠は「宝塚スケジュールカレンダー(手帳)2008年版」。
購入していないので定かではありませんが、確か花組スター情報に真飛しか載っていなくて、壮一帆は繰り上がれば二番手の筈なのに、どうして掲載されていないのか首をひねったのですよね。
大空が異動してくるのであれば、学年からみて仕方ないかと。
ああ、壮ファンも複雑。

(23:20追記)
公式のスターファイルがいつの間にか、主演男役と娘役だけに差し変わっていました。
組み替えを示唆しての物だったのか。或いは、これからまだ大規模な発表があるのかも。