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本日は「ヴァレンチノ」東京振替公演千秋楽。
この奇跡のような公演の思い出として、久し振りにDVD感想を綴りたいと思います。

【序 クリーヴランド号甲板】
1913年12月、イタリアからの移民船に1人の青年が乗っていた。彼、ロドルフォ(ルディ)は自由の女神に誓う。いつの日かオレンジ農園を手に入れることを──

研究生20年目の生徒が、10代のきらきらしい少年を演じて、違和感なく可愛い──と思うのはファンの欲目でしょうか。
でも、このシーンでオレンジを見つめる瞳が確かに希望に輝いているから、ここから始まる約2時間の物語に深い哀しみが生じるのだと思います。

移民たちはイタリア語で演技しているため、何を話しているか正確には分からないのですが、強い感情は伝わってきます。そこが、新大陸に様々な望みを託してやって来た移民らしい説得力のある芝居になっていると感じます。
スポットライトがないまま、ルディも秘かに登場。初日は、少年にぶつかるまでルディに気付きませんでしたが、DVDだとちゃんとカメラが追い掛けてくれるので、直ぐ分かりますね。
その後ろの人々も小芝居をしているのですが、劇場では後方席だったので良く観えなかったのが残念。DVDも、残念ながら薄暗い中の群衆芝居なので後方のメンバーは確認できませんでした。

【1幕1場 マキシム】
3年後、ルディはN.Y.のクラブ「マキシム」でダンサーになっていた。しかしマフィアのボス、デ・ソウルの情婦と関係を持ったことで命を狙われ、N.Y.から逃亡する。

ほんの数分前まで移民だったメンバーが、ダンスホールの男女として登場する早替わりに毎回驚きます。
ダンスのお相手が、踊りの下手なマダムから元踊り子ビアンカに替わると、ルディのダンスもぐっと良く観えるのが面白いです。ビアンカの魅せてくれるダンスでは、リフトで持ち上げられた後、空中で止まって戻ってくると言う振り付けが凄く好きで、何度も観たい!と思っていたのでDVDで早速リピートしています。
東京だと1場は何度も笑いが生じるので、東の観客は「笑いの沸点」が低いのかと思っていましたが、DVDで観ると演技の指向自体も違う気がします。DVD(梅田)と東京の最大の違いは、デ・ソウルが格好良さを薄めにして、ヘタレ気味になったことでしょうか。
なお、デ・ソウルが登場して、慌てたビアンカがルディをマダムに返すときの台詞は「オバさん、出番だよ!」と収録されていますが、東京では「オバさん、匿って!」とより分かりやすくなってました。

【1幕2場 カリフォルニア〜ハリウッド】
カリフォルニアへ逃れて職を探すルディは、車掌からハリウッドのエキストラを薦められる。

ここは、大空祐飛主演作品では初めてのDVD収録における楽曲差し替えシーンです。と言うわけで、DVDを観る時は、iTunes配信・宙組「ヴァレンチノ」で「ウエスト・コースト」冒頭30秒を聞いて脳内で合成しなければなりません。
差し替え部分は、リズムが刻まれる中、音階無しに歌詞が掛け声として入っています。振り付けが浮いてしまって、かなり間抜けな状態です。
iTunes配信で本来の楽曲が聴けるだけ、有難いですけれどね。
このシーンでルデイの舞台上の衣装替え(1回目)がありますが、サスペンダー姿と言うのが非常に新鮮でした。DVDで初めて気付いた点としては、ベストと上着を同時に着ているのですね。どうりで、早い着替えだと思いました。

宝塚宙組東京特別公演「ヴァレンチノ」13時回を観劇。
客入りが悪くなるといわれる“ニッパチ”を物ともしない、大盛況の客席でした。花組生も来ていたようです。

船長@寿つかさが「君、英語が喋れるの」と言うと「いいえ、日本語です」と思い、ジューン@野々すみ花が「確かにラテン系の顔ね」と言うと「いいえ、“平たい顔族”です」と思う。
……そんな野暮な突っ込みを入れても、この作品はまったく揺らぐことがなく楽しめると言うことが、嬉しいです。

何度観ても、ラストの5分は贅沢な構成ですね。
ジューンがルディの幻と共にオレンジの枝の向こう側へ去る、その背中で幕が降りても素晴らしい舞台だったと思うし、その次のジョージの独白で終わっても綺麗に終わります。でも、最後にもう一度ジューンのバンガローが現われ、新しい未来を見せてくれる御陰で、あたたかい気持ちで劇場を出ることができます。
小池先生の作品は「エンターテイメント」として優れていると常々思っていましたが、デビュー作からそうだったのだな、と感心しました。
それにしても、幕が下りるのが早くなったのは、わざとなのでしょうか。ジューンがオレンジを受け取るところまでちゃんと観られるのかどうか、初日も今日もハラハラしました。

公演期間が短いので、これで私の手持ちチケットは終了。でも、1回ごとが濃密で、大満足でした。
屈託ない明るさを愛しく思い、自信なさげな姿は応援したくなる、みんなのアイドル・ルディ。いままでとは違う新しい大空祐飛との、本当に素敵な出会いでした。
でも、現在の結婚したい男No.1は、ジョージ@春風弥里です。

宝塚宙組東京特別公演「ヴァレンチノ」初日を観劇。

東日本大震災により、本来予定していた全日程が中止になった公演です。今回、公演期間と稽古日の合間を縫って、振替公演が実際されました。
5ヶ月の時を超えて再び相見える「ヴァレンチノ」が楽しみ過ぎて、朝は5時に目が覚めました。ちなみに、公演は16時から(笑)。

初日なのに、舞台も客席も笑って泣いて、熱く盛り上がった2時間半でした。
客席が細かいネタも拾ってよく笑うので、1幕はコメディ色が強く出てきました。その分、2幕の人間ドラマも色濃くなった気がします。
1ヵ所、2幕パーティ会場でセットの一部が降下途中に曲がって設置できなくなるトラブルがありました。が、問題なく続行して安心しました。

ルディ@大空祐飛は、とにかく1幕の可愛らしさが反則的ですが、その若さが自然になった気がします。以降のシーンでもルディの感情が分かりやすくなり、脚本の軸がスッキリと見えてきました。
ジューン@野々すみ花は、梅田から大きく変わっていない印象ですが、こういった地に足の着いた役だと、演技力の高さを改めて実感します。ジョージからの電話を取ったまま客席に背中を向けるシーンでは、音も、台詞も、表情も、舞台上の共演者もなく、ただ背中で語る珠玉の演技を見ました。
デ・ソウル@悠未ひろは、1幕では登場した瞬間から笑われていましたが、2幕はガラリと雰囲気が硬質になって格好よかったです。クラブ21は、少しマイルドな表現に変わったでしょうか?
ジョージ@春風弥里は、明るくて優しくて面白くて良い奴な上に、ルディを温かく見詰める眼差しは包容力が溢れていて、もう満点を付けたい男。
ジューンとは大学でサークルが一緒だった、などと設定を勝手に妄想してしまいました。
ナターシャ@七海ひろきは、やはり迫力のある美人。
カーテンコール2回目のお辞儀だけ、ドレスを着ているのに男役のお辞儀をしていました。ちょっとしたうっかりだと思いますが、男役が染み付いているのだな、と逆に好印象でした。
ラスキー@寿つかさは、底知れない怖さが醸し出されていました。細かい所では、「ムッシュ・ボーケール」の撮影シーンでストップモーションになり、八百屋舞台の床が移動する間も微動しないバランス感覚に感動しました。
メロソープ@天羽珠紀は、前公演の休演から無事復帰したことに、まず安心しました。相変わらず歌もバッチリ、妖しい占い師でした。
ナジモヴァ@純矢ちとせは、はまり役。元男役の大きさを生かした配役だと思います。
ビーブ@妃宮さくらは、可愛らしさが増したような印象。退団予定を延ばしてこの公演に出演してくれたことに、心から感謝です。
鳳樹いちは、ジョニー役も台詞の間が巧くて名司会という感じですが、実は細かい出番で踊っている時が好きです。
蒼羽りくは、とにかく小芝居が多くて、芝居への意欲を感じました。今後、悪目立ちしないようにしつつ、この方向性で頑張って欲しいです。
星吹彩翔は、クラブ21のダンサーやフィナーレが格好良くて目を奪われました。結構良い位置で踊ってますよね。ファン役の女装も、意外とチャーミング。
光海舞人は、職にあぶれたエキストラ役が、侘しさの中にも気の良さそうな雰囲気があって、注目しました。
その他、30人しかいないとは思えないくらい舞台がホットで、全員が生き生きしていました。

主演挨拶では、公演中止による強制的な役との別れは、役者にとっても消化不良だったと正直な告白がありました。その言葉通り、この貴重な機会に、全力で「昇華」しようとしている気持ちが伝わってくる熱演です。
梅田DC初日に感じた伸び代を、目一杯埋めて持ってきた東京初日。でも客席からの熱く温かい拍手が、更に成長を促すのでは、と期待しています。

宝塚宙組「美しき生涯/ルナロッサ」15時半回(VISA貸切)を観劇。
幕間の抽選会お手伝いは、瀬戸花まり。関ヶ原の兵士装束だったので、司会から娘役である旨の紹介がありました。

千秋楽には一週間早いですが、これで私の手持ちチケットは終了です。
残念ながら、天羽は復帰していませんでした。休演理由が分からないので、何とも言えませんが、心配です。このあと直ぐ始まる東京特別公演の出演キャストはどうなるのでしょうか?

芝居は、これ以上ないほど深化していました。
七本槍の面々が、いかに握り飯を喰う芝居を魅せるか、を研究し尽くしてきた……とかそういうことではなくて(笑)。いや、そこも手の平に付いた米粒を食む仕草などが余りにリアルで凄かったですけれどね。
各役の情感がぐっと増して、細かい台詞の言い回しがかなり変わっていました。
脚本が変わったわけではないので、筋の粗はあるのですけれど、ここまで各シーンで良い芝居を見せられると気にせず没頭できますね。
4週間前に観た芝居より、断然好きです。こうした公演期間中の変化を見ると、公演DVDは東京千秋楽近くを収録して欲しいな、と改めて思います。
今日は一幕も二幕もアクシデントがあり、芝居では11場A北の丸で三成分のスポットがつかず、彼の位置が薄暗いまま芝居が始まってしまったのでハラハラしました。隣に座っている増田長盛のライトを広げて、本人用のライトが付くまで凌いでいましたが、照明の不備に遭遇するのは初めての体験でした。
細かいことでは、おねが茶々を平手打ちするシーンで効果音が入りませんでしたね。音がないパターンを観たことで、あった方が空気が高まると、よく分かりました。

ショーの帽子は、鳳翔大がリリーフ。立ち位置は凪七瑠海の方が近いかと思ったのですが、真っ正面を向いて帽子に眼もくれない凪七と、真っ直ぐに帽子を拾いに行く鳳翔の対比に秘かにウケました。
ショーのアクシデントは、パレードで凰稀かなめのマイクが入らないと言うものでした。ここでは、マイクが入るまで地声で頑張る凰稀に感心しました。
今日は数年ぶりに宝塚を見る友人と一緒だったのですが、雪組下級生時代の凰稀と比べての成長ぶりに驚いていました。私も、立場が人を育てるという言葉は真実だな、とつくづく感じます。
前任の蘭寿とむとは持ち味が違うので、今後大空・野々等と組んでどんな芝居をみせてくれるのか楽しみです。

今週も元気に宝塚宙組「美しき生涯/ルナロッサ」15時半回を観劇。

今日は東京では唯一の2階B席でした。
芝居の天守閣や関ケ原の影の演出、ショーでは月が観えないのが残念です。しかしB席にはB席の楽しみ方があり、広い舞台でのフォーメーションや、通常人で隠されて見えない演出部分を覗き見ることができます。
今回の演目で、一番B席の面白さを感じたのはショーの第3場「バザール」でした。エトランジェ@大空とカマル@野々以外のキャストがストップモーションになった瞬間、まるで精巧なミニチュアドールハウスを眺めているような印象を持ちました。

野々すみ花が不調だったかな、と思います。東京に来てから声が荒れている気がしていたけれど、今日は特に高音が辛そうでした。
寒暖の激しい真夏の公演、最後まで勤められるよう体調を整えて欲しいところ。
また、20日から休演している天羽珠紀の無事の復帰も願っています。

芝居は、全体のテンポが良くなってきました。こうしてみると、第8場「愛と義の狭間」までは普通に面白いし、好きなシーンもあるなぁと思えてきました。
改めて考えて、私が考えるこの脚本内最大の問題は第13場Bの疾風の台詞「お前は正しすぎる」だと分かってきました。
だって、この舞台の三成、秀頼の実夫と言う時点で決して「正しく」ないですから!
側室になる前の段階で関係を結んだことは、三成の正義を損なわないけれど、一度「お方様」になった女性に密通するのは明らかな不義。それを一番良く知っている、けしかけた本人が疾風なのに、「お前は正しすぎる」と言われると観客がビックリしてしまいます。価値観が違い過ぎて、不愉快になるのです。
他にも添削したいところはあるけれど、ここが一番蛇足かなと思います。

芝居における天羽の代役は、風莉じん。行者のソロは、天羽に歌い方を似せているような印象でした。
蒼羽りくは和物経験が少ないはずですが、ダンサーだから型が決まって美しいですね。
ショーでの天羽の代役は、風莉じんと七海ひろきは確認。他にも色々メンバーが入れ替わっていたようなのですが、さすがに私のレベルでは判別できませんでした。

ちなみに、ショーの大階段男役群舞で神殿の男S@大空が帽子を放り投げるシーン、いつも下手の袖に吸い込まれるようにして消えていくのですが、今日は舞台端に残ってしまいました。
足早に降りてきた鳳翔大が拾い上げ、キメながらシュート。
ファンブログで「巧く投げ込めなかった時は、鳳翔がリリーフする」と言う話を読んで以来、1回は観ておきたいと思っていたので、嬉しかったです。