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東宝「エリザベート」17:30回。
エリザベート:春野寿美礼、トート:マテ・カラマス、フランツ:岡田浩暉、ルドルフ:平方元基、幼年ルドルフ:山田瑛瑠、ゾフィ:寿ひずる。

久し振りの「エリザベート」は、やっぱり面白い!と思いました。
様々なエピソードがスピーディに展開するので、上演時間の長さを感じないあっと言う間の3時間でした。

トート@マテは、ウィーン版トートだけあって、オリジナル版に近い雰囲気を感じるロック調のトート。とても良かったです。心配していた日本語の壁ですが、歌ではそんなに気になりませんでした。台詞だと片言になって「胡散臭い外国人」そのものですが、人間ではないモノが人の言葉を喋っていると思えば許容範囲かなぁ。あとは、意外な等身の低さに驚きました。
顔が大きいマテとの比較で、小顔の超絶スタイルに見えたのがエリザベート@春野。冒頭の少女時代が可愛く澄んだ声で少女らしく感じられて驚かされました。声域がアルトだと思うのでソプラノの楽曲は厳しいのでは、と思っていましたが結構幅が広くなっていました。「私が踊るとき」での自信に満ち溢れ、トートを圧倒する感じは素晴らしかったです。演技解釈は、芯の強いシシィではなく、弱いシシィが鎧っているという感じ。特に、1幕ではトートダンサーに踊らされる時に意志が感じられず、正に「人形のように踊らされた私」だったのが、自我に目覚めていったというのが目に見えました。

新キャストのフランツ@岡田は、予想外に声が好み。童顔で若い印象ですが、老けても自然な演技でした。ルドルフに対する愛と皇帝としての責務感はちょっと薄かったけれど、妻への愛と優しさには溢れていました。
それ以上に素晴らしかったのが、ルドルフ@平方です。高身長、歌上手、ダンスもバッチリと三拍子揃った安定感。「闇が広がる」の後はしばらくショーストップしていました。父子で顔形が似ていたのも面白かったです。オールバックの髪型だけが似合ってなくて残念でした。
子ルドルフは、とにかく子役のボーイソプラノで「ママ!」と言うだけで可愛らしく且つ可哀想で大甘。
トートダンサーの激しさと、ツェップスが撃たれた瞬間凄く吹き飛んだのと、女官の上手にいる子が大和悠河に似て見えたのが面白かったです。

東宝版は、とにかく男性声が入ることによる「ミルク」や「HASS」の迫力がやはり凄いと思います。
しかし以前も書きましたが、宝塚用の「愛と死の輪舞」解釈が中途半端に入っているせいで、ラストシーンでシシィとトートが噛み合ないまま大団円にならず、すっきりしないのが気になります。
東宝版を観て楽しむほど、よりキラキラしく分かりやすい宝塚版が観たくなりますね。

2012年のエリザベート役(Wキャスト)に春野寿美礼が配役されたことを知って、慌てて帝国劇場の公式サイトを見て来ました。

帝国劇場「エリザベート」
http://www.tohostage.com/elisabeth/

東宝チャンネル プロモーション映像
http://www.youtube.com/watch?v=cbATrQmOXiY

ご本人には申し訳ないけれど、女性としての春野寿美礼に「美貌」と冠するのは正直難しい、と思ってしまいます。反面、エリザベート役の曲をどう歌いこなすのかはとても興味がありますね。
ちょっとだけ来年が楽しみになりました。

2010年東宝エリザベート(8〜10月)キャスト発表。
http://www.tohostage.com/elisabeth/

昨年末に宝塚を退団した瀬奈じゅんが、エリザベートWキャスト。と、これは割と想定内の発表だったのですが……
トートがトリプルで、お馴染み山口祐一郎、同じく四季の石丸幹二と並んで、城田優が起用されました。以前から一部でこの配役が噂されていたけれど、個人的にはシシィ役者との年齢差的にも若過ぎると思っていたので、本当だとは思っていませんでした。大河ドラマも出演したし、テニミュから随分出世したなぁ。
今回も、伊礼彼方がルドルフのトリプルキャスト参加なので、手塚部長と佐伯君で「闇が広がる」が行われるわけですね。なんだか変な感じです。もっとも、実際には城田と伊礼は初共演ですよね。両者共外国風の顔立ちであるとか、芸風が似てるような気がするので、絵面的にどうなるのかな。
取り敢えず、キャスト入れ替えの結果を見て、前回無理をして涼風シシィ、初風ゾフィーを観ておいて良かったな、と思いました。

正直なところ、エリザベートは東宝と宝塚で交互に再演されるため、個人的にはちょっと飽きた感があります。
とは言えミュージカル作品としては非常に面白い大作で、かつ客入りが見込める事から、自分が経営者ならやはりこのくらいの間隔で上演させるだろうなぁとも思います。

東宝「エリザベート」12:00回。
1階下手端。キャストはエリザベート:涼風真世、トート:山口祐一郎、ゾフィ:初風諄、その他は前回と同様でした。

Wキャストの事を中心に、以下感想です。
今回は歌えるコンビと言う事で、却って厳しい視点で観劇してしまったかも知れません。
ちなみに、ミュージカル俳優としては第一人者の山口氏ですが、生の舞台を観劇するのは初めてです。ついでに、噂に聞く「山祐ファン」も初体験しました。

エリザベート@涼風真世は、歌と演技解釈は好感の持てるエリザベートでした。前回の朝海ひかるの際は、エリザベートの欠点面を強く感じて、フランツに同情的になったのですが、今回、フランツは同一人物なのにエリザベート寄りに意識が変わりました。
でもビジュアル面や手を振り払ったりする動作や、最後のダンスで翻弄されるシーン等の所作は、思い返すと朝海の方が好みです。そう言う点ではやはり朝海のダンサーとしての切れ味が出ていたのかなと、Wキャストだからこそ気付かされました。

トート@山口祐一郎は、体が大きいので音も大きいし、良く響かせるのですが、正直歌い方としてはあまり私の好みに合いませんでした。今まで四季メソッドを意識したことはないのですが、外部で聞くと際立つのかも知れません。
後、なぜかトートの存在を薄く感じました。涼風エリザベートが原因なのか、山口トートが原因なのか、別の組み合わせを見ないと判断出来ませんが……。

ゾフィ@初風諄は、「宝塚BOYS」での役からは想像もつかないゾフィへの化けっぷりで、やはり役者だなぁと思いましたが、寿ひずるver.も力強くて甲乙付け難いです。これは、元男役(寿)と元娘役(初風)の違いなのかも知れませんね。あるいは、実年齢の差も。
なんだかんだ言っても、Wキャストで見る事が出来て色々解釈違いを楽しむことができて、面白かったです。

演出面は、前回書いたので割愛しますが、一点だけ。
役者挨拶で流されるメドレーが、キャストと一致した流れに出来たら良いなぁと思います。と言うのも、「キッチュ」に変わったタイミングでフランツが登場するのは違和感があるのです。前回もそう思った記憶があります。宝塚の大階段なら、各キャストが各々の曲を巧く歌い継ぐので、出来ないことではないと思うのです。
オーケストラの演奏自体は、東宝の方が断然安心して聞けるんですけれどね。

最後は相変わらずのスタンディングオベーションでしたが、これはきっと帝劇ファンのスタイルなんだと納得しました。
ただ、諸般のお約束はあっても、緞帳が降りればあっさり終わる宝塚に慣れてるので、なんだか居心地が悪いです。あれだけスタンディングされると、そこまで感激しなかった自分の感性が悪いのかなぁと思ったり。
また、貸切公演だったので最後に涼風・山口から挨拶があり、山口氏自身は楽しい人だなぁと再認識しました。もしかしたら歌わない方が好みかも?

今回、東宝版エリザベートを見ている最中に突然、宝塚版は初心者向けに分かりやすいエリザベートなのだな、と感じました。
最初に体験したのが宝塚版なので、贔屓目とも思うのですが、全体に筋書きや台詞が分かりやすくされてますよね。その代わり、抜かされているシーン等も多いので、東宝版に慣れてくると物足りないでしょう。
どちらが良いと言うものではなく、違う解釈の舞台なので、今後もお互いに共存していけると良いなと思います。
だからと言って、来年の月組再演版を支援するわけではありませんが……。

すごく出遅れましたが、2009年春の宝塚上演作が公開されました。
2009年 宝塚歌劇公演ラインアップ【宝塚大劇場、東京宝塚劇場】

月組で、「エリザベート」ですか。
この発表に対する反応は、絶句や阿鼻叫喚の方が多い気がするのですが、最近再演スパンが早過ぎませんか。前回公演からメンバーがさほど変わってない月組で再演する理由が、私には読めません。
「エリザベート」も、「ベルサイユのばら」並みにイベント化しつつあると思った方が良いのかしら。
決して嫌いな訳でなく、良い演目だと思うからこそ、大事に使って欲しいのだですが……。
瀬奈じゅんに「エリザベート」の主要三役を演じさせる価値は、瀬奈と雪組の彩吹真央の二人だけで、「エリザベート」の各シーンができますね!(※)と言うジョークの役にしか立たない気がしますよ。

そう言えば東宝版感想で書き忘れたのですが、ゾフィーの死のシーンにて、フランツは母親を拒絶する事で、マザコンから脱してるんですね。
宝塚版はフランツが母親を否定しないまま最後まで来るので、「夜のボート」でも、二つのゴールだと言って拒絶するシシィの気持ちが分かるけれど、東宝版だとシシィの為に老いた母親すら否定したフランツを観ているので、どうしてこの二人は擦れ違っちゃったのかと憤慨する気持ちになりました。
自立志向も良いけれど、「嵐も怖くない」でちゃんと皇后としての義務を言い渡されているのに気楽に結婚を受けちゃったエリザベートには、どうも共感しにくいです。

※1996年初演で、彩吹:黒天使。
 2002年花組公演で、瀬奈:ルキーニ、彩吹:ルドルフ。
 2005年月組公演で、瀬奈:エリザベート。
 2007年雪組公演で、彩吹:フランツ。
新人公演も含めると彩吹は脅威の5役経験。瀬名は今回3役目になるが、全部一人降りする主要役。