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「誰がために鐘は鳴る」下巻も読みました。

上巻よりも物語に動きがあるので、読み易かったです。文章自体にも、上巻の時のように引っ掛かる印象がありませんでしたが、単に読み慣れたのか、それとも訳が良くなってたのか、どちらでしょうか。
下巻になってから、ロバートが任務を受けた段階で死を覚悟していたことが分かり、少しホッとしました。その時から「何を考えているのか分からない」度が薄れ、お話自体にも入り込めた気がします。
全体に、スペイン内戦の情勢が分かっていた方が面白いのでしょうね。その辺りはまったくと言って良いほど知識がないので、あまり語られていない部分は想像で補うしかないのが難しかったです。

パブロはちょっと面白い役ですね。難しいし、匙加減を間違えると悪役になるけれど、人間的だと思います。
やはり恋愛よりも、極限状態での集団を描いた作品としての価値の方が高いのではないでしょうか。

最後、死ぬところの明確な描写はないんですね。
「武器よさらば」同様、一人孤独な終わりなのに、虚しさだけがあった「武器よさらば」よりも、ある種の充足感があったように思います。

アーネスト・ヘミングウェイ著「誰がために鐘は鳴る」上巻のみ。
前回のヘミングウェイ作品でも苦しんだ「主人公の一人称なのに、何を考えてるのかさっぱり分からない」点に今回も悩まされています。
また今回は、ゲリラの一人の言葉使いが意味不明なところがあり、最初は何度か引っ掛かりました。原語に忠実に訳すとこうなってしまうのかと思いますが、日本語として分かり易く書いて戴けないものでしょうか。
翻って考えると、児童文学の訳はどれも秀逸だと思います。

本の粗筋などでは恋愛小説のように紹介されているけれど、今のところ主人公は鉄道爆破のことを意識の一番上に持ってきているので、戦争小説の側面の方が強く感じます。
「武器よさらば」同様、主人公とヒロインが恋に落ちることに理屈がないのが面白いです。
雪の中持ち場で待っていたアンセルモ老人と、迎えに来たロベルトのシーンは少し惹き込まれました。

次回宙組本公演の予習として読んだのですが、場面展開が少なく、閉鎖空間での人々の思惑の交差が主と言う感じなので、これをどう一本物の舞台として成り立たせるのか、不思議です。