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「なにやってんだ、カロル」
 頭上から聞こえた青年の声に応え、カロルは机に広げた様々な図案を指差した。
「ギルドのマークを考えてたんだ」
 自分たちのギルドを作るとなると、考えないといけないことが沢山ある。
 掟、名前、それからやっぱり格好良いマークを!
「やっぱり星の形が良いと思うんだけど、なんかこう、ビシッと決まんないんだよね」
 戴いた名を示す絶好の図案であるが、既存のギルドでも星をモチーフにしたマークは多い。
「ユーリはどう思う?」
 期待を込めて見上げた青年は、しかし軽く肩を竦めると背を向けてしまった。
「俺はそういうのよく分かんねぇしな。ボスに任せるよ」
 得意分野だろ、と言われて頷きはしたものの、カロルは密かに落胆した。ギルドのボスが自分ならば、NO.2はユーリだ、と彼は思っている。であるとすれば、ギルドの象徴を二人で協力して作り上げたかったと思うのは強欲だろうか。
 だが、一任は自分への信頼の証でもあるはずだ。
 そう言って自身を奮い立たせ、机に向かい直る。その時、青年の傍らに控えていた獣が身を乗り出し、広げられた図案を一瞥した。
「なに、ラピード。興味あるの?」


レイヴン編と違って、オチを考えずに書き出してるのでこの先停止中……。
ユーリは格好いい主人公なので、私自身も好きだし人気も高いだろうと思いますが、自分が興味のない部分に関しては放り投げ過ぎじゃないか?とも思います。だから、ユーリと一緒にひとつの物事を作り上げて行くのはしんどいかも知れないと思います。カロルには決断力があるから、さほど問題ないですけれどね。

ちなみに、凛々の明星の真のNO.2は、勿論ラピードです。

「わんこ、男前ねぇ」
 そう言いながらラピードの前に座り込んだのは、最近一行に憑いてくるようになった胡散臭いおっさんだ。
 背を丸めたレイヴンと、真っ直ぐに背を伸ばしたラピードは、同じ位置で顔を付き合わせる。
 おもむろに、男は右手を低い位置で持ち上げた。
「お手」
 誇り高い獣は長い尾をぱたり、と揺らめかした。対する男は微動だにせず、風貌に似合わぬ鋭い眼差しでラピードの隻眼をじっと覗いた。
 その時、一声吠えたラピードが奇跡のように前足を挙げた。
 ──掌を上にして。
 間を置かず裏返した右手を乗せ、レイヴンは歓声を上げた。
「見て見て! わんこがおっさんにお手してくれたわよ」
「あんたが、お手、させられてるのよ!」
 天才魔導少女の突っ込みは今日も的確だった。


おっさんがしゃがみ込んでラピードと顔を見合わせてるラフを描いて、思い付きました。
この二人は何気ないシーンで一緒に居るので、隠れ仲良しだと思ってます。
ラピードの前の飼い主は帝国騎士だと思われるので、その辺りが関係しているのでしょうか。まぁ、ラピードの意識的には一行のトップはユーリで、NO.2が自分で、レイヴンは面倒見ないといけない子分くらいの気持ちかもしれません(笑)。

まだキャラをちゃんと掴めていなかったり口調があやふやですが、ネタは新鮮な内に書け、と言うことでリヒターとデクスで小話。
なお、私の中でデクスの印象が悪くならないのは、SH2のレニやベロニカと同系統の「アホ悪役」として勝手に認識済である為のようです。

設定ネタバレのため、5章岬の砦攻略済みの方のみお読みください。


【通販生活】
 その日、岬の砦に立ち寄ったリヒターは、デクスと顔を合わせると、珍しいことに自身から声を掛けた。
「これを入口で預かった」
 差し出したのは、両手に丁度収まる程度の小包である。
「お、わるかったな!」
 だが、伸ばしたデクスの手は宙を掻いた。指先が届くよりも早く、小包はリヒターの頭上にまで持ち上げられていたためだ。
「渡す前に、話がある」
 リヒターが会話を楽しむような性格の持ち主でない事は、デクスも分かっているのだろう。目を見張り、大袈裟な仕草で蹌踉めいたと思うと、真っ直ぐに立てた指でリヒターを指した。
「俺の完璧な強さに嫉妬か!」
「違う」
 果たしてどのような情報が彼の思考回路内で繋がって、その結論を導き出したのか、研究対象としては興味深いことだった。
「ここは秘密裏に築いた拠点のはずだな」
 デクスが頷くのを確認すると、リヒターは小包に記された宛名をなぞりながら読み上げた。
【テセアラ領XX-X 岬の砦 シルヴァラント解放戦線ヴァンガード工作班 デクス様】
 読み上げている内に自身が抑えられなくなり、リヒターは思わず小包をデクスに向かって振り下ろした。
「この砦を、我々が使用していると明かしてどうする!」
 運搬人から「ヴァンガードの方ですか」と声を掛けられた瞬間の衝撃は、思わずタイダルウェイブを撃ちかねない程だった。
「なんだリヒター、知らないのか」
 しかし、ようやく手に入れた小包を抱き締め、デクスは不敵に微笑んだ。
「レザレノ通販は顧客情報を保護する旨をプライバシーポリシーに掲げてるんだ」
 但しテセアラ王家から要請があった場合はその限りでない、と言う一文があることを、恐らく彼は知らないのだろう。無論、反テセアラを掲げるヴァンガードは、世界統合を妨げる敵として王室から危険分子視されている。
 もっとも、この男にはヴァンガードと言う組織の一員である自覚がないのだろう。吐き出した溜め息と共に、続く言葉は消えていった。
 だが、言うべき事はもう一つある。
 リヒターは右手を差し伸べた。
「7650ガルドだ」
 レザレノ通販は代引きであった。
 手持ちがあるかな、と呟きながらデクスが取り出した財布は、言葉と裏腹に酷く膨れている。デクスはそれを思い切り良く逆さにしてみせた。途端降り注がれた硬貨の多さに、慌てて左手も添え、手の中を覗き込んだリヒターは絶句した。
「1ガルド硬貨ばかりのようだが……」
「ああ」
 空になった財布を振りながら、デクスは頷いた。
「造花は10本で1ガルドになるんだ。割が良いのは傘張りなんだが、これはあまり大量に作る口がなくてなぁ」
 内職!
 リヒターは思わず両手を握り、1ガルド硬貨の山を取り落とした。床に軽い金属音が重なる。
 以前から、デクスが購入する商品の多さに、工作班の経費を使い込んでいるのではないかと疑念を抱いていたリヒターだが、疑っていた己を恥じたくなる真実であった。
 取り落とした硬貨を拾い集めると、リヒターはそれを元通りデクスの財布に戻してやった。 
「金は……良い」


岬の砦で、リヒターが割って入った後、普通に会話している二人に、なんかヴァンガード組創作も面白そうだなと思って執筆。実はプライバシーポリシー云々までしか考えてなくて、後半は後からできました。

ゲーム本編シルヴァラント編終盤行程より。


 ロイド・アーヴィングには学がない。
 学はないが、彼には誰にも負けない野生の勘がある。嗅覚と言っても良い。度々彼を窮地から救ったその感覚が、今激しい違和感を訴えている。ロイドはその内なる声に突き動かされるまま、目の前の揺るがぬ背中を睨み付けた。
 金で働く傭兵だと聞いた。確かに剣の腕は立つ。エルフ族ではないらしいが魔術まで操り、攻撃と癒しの手を使い分けて自分たちを助けることしばしば。その上何時でも冷静で、指摘は常に正しい。
 けれど──
「なぁ」
 本当に道はないのだろうか。
「本当にないのか」
 二つの世界を共に救い、コレットを犠牲にせずに済む方法は。

 傭兵は一度立ち止まり、振り返らないまま問い返した。
「なぜ、私に問うのだ」


反発しつつも、ロイドには「クラトスはなんでも知ってる」と思う気持ちがあるのでないか。6割の野生の勘と、4割の甘えで。
もう少し練れば長いお話になりそうです。

確かマナの守護塔攻略後だったと思いますが、TOSゲーム内のあらすじに「神子の再生の旅に疑問を持つが、強引にクラトスが続けさせる」と言う文面がありました。プレイ時はそこまでクラトスに指図されているとは思わなかったのですが、この粗筋からすると、プロット段階のシルヴァラント編はもっとクラトスが導いているようなお話だったのかも知れない……と思わされます。

月組公演「マジシャンの憂鬱」SS。


「息苦しいんです。なんだか目眩もするような……」
 男はその理由を知っている。あと一つだけ、確証を得る事が出来たならば、その時、彼はすべてを告白しようと思っていた。
 女は鼓動を押さえ付けようと胸に手を当て、物憂げな眼差しを落とす。
「シャンドールさん、私……すみません。二日酔いです」
 ──恋はまだ始まらなかった。


月組東宝「ME AND MY GIRL」先行関係全部落ちました……。地味に凹んでます。
20日の一般前売り開始日が最後のチャンス。一回分は確保したいです。
大空祐飛不在だからと思って、無意識の内にチケットへの執着が薄くなっていたのでしょうか。
悔しいので、無理矢理ですけれどシャンドール氏にも残念な気持ちを味わってもらいました。ヴェロニカが緊張して息苦しいのは慣れぬダンスのせいと思いきや、実は気付かぬ恋心だったと言う展開は、私には絶対描けない世界。気恥ずかしいですし同手法は多数ありそうですが、綺麗に使われた例を見ると、良いなぁと自分でも手を出したくなります。