有川浩著「キケン 成南電機工科大学機械制御研究部」
【あらすじ】
機械制御研究部(通称【機研】)が、「ユナ・ボマー」と渾名される部長に率いられ、犯罪スレスレの「キケン」行為を繰り返した黄金時代の物語。
レーベルが違えば「ライトノベル」扱いになりそうな軽い作品。
疾走感全開で、無駄なエネルギーが沢山放出されていて、男子大学生の学生時代の打ち込みってこうだよな、と頷かされます。そして、そこまで全力で馬鹿なことに取り組んでいたからこそ、少し年月を開けてから訪れることへの躊躇も分かる気がしました。
最初のうちは、各短編の最後に「…ということがあった」と語っている形式である元部員と妻の現在の掛け合いが入る構成に鼻白んだのですが、物語の締めかたを見て、作者が語りたかったことはこの形でなければ書けなかったのかも、と納得しました。
ただ、この締めかたはメインである【機研】での出来事と関係しないため、全体を通してのストーリー性はあまりなく、盛り上がりには欠けました。1エピソードずつが面白い、という短編集の作りですね。
なお最後の仕掛けに関しては、教室に入ったところでページをめくらされて、ちょうど見開きになるというページ割りが巧いと思いました。私が読んだのは文庫版ですが、当然単行本版もこうなるように調整してあるのでしょうね。
年齢が若い人物しかいないこともあってか、全体的にキャラクターが生き生きしていました。
最初のうちは、描写がメインの4人にほぼ集中していましたが、後半から他の部員にもスポットライトが当たって、より群像劇のような、ガヤガヤした感じが強まった気がします。
ストーリー的に盛り上がるのは学園祭の話かと思いますが、個人的には【機研】的な活動をしている、ロボコン大会と空気銃製造の話が楽しかったです。