• カテゴリー 『 ミュージカル 』 の記事

Shibuya O-eastにて「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」14時回を観劇。
http://www.hedwig2012.jp/

ライブ会場を使った、ライブ形式の芝居。1ドリンク制というのは会場利用の都合なのでしょうか?
私は、スタンディングエリアの後ろに設けられた指定席で観劇。パイプ椅子なので、かなりお尻が痛くなりました。また、席の段差がないため人と人の隙間から覗く感じで、キャストが観えない局面も多々ありました。これはライブだと割り切って観劇しましたが、芝居を観たかった方には残念な会場だったと思います。

舞台ファンの教養として基本的な筋は知っていますが、映画は未見。また、過去に日本で上演された時も機会がなく、今回が初観劇でした。
今回は原作の設定を完全に変更し、未来の日本を舞台にリライト。挑戦意欲は素晴らしいけれど、デリケートな話題だし、個人的には、あまり変更点が活きているとは感じませんでした。ベルリンの壁とその崩壊という歴史的に観客誰もが共有できる事実と、架空の壁と未来都市ではリアル感が異なりますし、壁が崩壊したことに対する意義も全く違うものになってしまってますよね。

芝居としては大変疑問符の残る内容でしたが、ライヴとして観れば、とても面白かったです。
一番楽しかったのは、メンバー紹介のアドリブセッション。
ライブハウスという小さめの箱だけに、バンドの迫力と楽曲の力は全身で感じました。

ヘドウィグ@森山未來は、ドラァグクイーンっぷりが意外にも似合っていたし、ダンスなしでも、台詞回しや歌で充分魅せてくれました。芝居なので、MCをやっているような振りをしつつ脚本通りなのでしょうが、凄く巧く客席を乗せていました。反面、本当の性格は割とドライな印象。トミーに捨てられたことについても、本当は諦めがついているように感じます。
トミーも森山が演じているのは、2人が「片割れ」であることが視覚的に判り易くて良かったです。

イツァーク@後藤まりこは可愛いけれど、歌は聞き取れないし存在意義が不明でした。原作で担っていた存在意義を、今回の舞台では最初から与えていない印象ですよね。それならいっそ、イツァークの存在を無くし、ヘドウィグのワンマンショーにしてしまった方がスッキリしたのでは。
演出目的は判りませんが、個人的には宗教っぽさを感じる箇所が時折あったので、正直彼女の存在が一番引っ掛かりました。

なお、この舞台ではステージの壁全面に映像を流していたのですが、これがテンポも良く、手動でタイミングも併せてあるようなベスト感で、なかなか巧く働いていました。

東宝「エリザベート」17:30回。
エリザベート:春野寿美礼、トート:マテ・カラマス、フランツ:岡田浩暉、ルドルフ:平方元基、幼年ルドルフ:山田瑛瑠、ゾフィ:寿ひずる。

久し振りの「エリザベート」は、やっぱり面白い!と思いました。
様々なエピソードがスピーディに展開するので、上演時間の長さを感じないあっと言う間の3時間でした。

トート@マテは、ウィーン版トートだけあって、オリジナル版に近い雰囲気を感じるロック調のトート。とても良かったです。心配していた日本語の壁ですが、歌ではそんなに気になりませんでした。台詞だと片言になって「胡散臭い外国人」そのものですが、人間ではないモノが人の言葉を喋っていると思えば許容範囲かなぁ。あとは、意外な等身の低さに驚きました。
顔が大きいマテとの比較で、小顔の超絶スタイルに見えたのがエリザベート@春野。冒頭の少女時代が可愛く澄んだ声で少女らしく感じられて驚かされました。声域がアルトだと思うのでソプラノの楽曲は厳しいのでは、と思っていましたが結構幅が広くなっていました。「私が踊るとき」での自信に満ち溢れ、トートを圧倒する感じは素晴らしかったです。演技解釈は、芯の強いシシィではなく、弱いシシィが鎧っているという感じ。特に、1幕ではトートダンサーに踊らされる時に意志が感じられず、正に「人形のように踊らされた私」だったのが、自我に目覚めていったというのが目に見えました。

新キャストのフランツ@岡田は、予想外に声が好み。童顔で若い印象ですが、老けても自然な演技でした。ルドルフに対する愛と皇帝としての責務感はちょっと薄かったけれど、妻への愛と優しさには溢れていました。
それ以上に素晴らしかったのが、ルドルフ@平方です。高身長、歌上手、ダンスもバッチリと三拍子揃った安定感。「闇が広がる」の後はしばらくショーストップしていました。父子で顔形が似ていたのも面白かったです。オールバックの髪型だけが似合ってなくて残念でした。
子ルドルフは、とにかく子役のボーイソプラノで「ママ!」と言うだけで可愛らしく且つ可哀想で大甘。
トートダンサーの激しさと、ツェップスが撃たれた瞬間凄く吹き飛んだのと、女官の上手にいる子が大和悠河に似て見えたのが面白かったです。

東宝版は、とにかく男性声が入ることによる「ミルク」や「HASS」の迫力がやはり凄いと思います。
しかし以前も書きましたが、宝塚用の「愛と死の輪舞」解釈が中途半端に入っているせいで、ラストシーンでシシィとトートが噛み合ないまま大団円にならず、すっきりしないのが気になります。
東宝版を観て楽しむほど、よりキラキラしく分かりやすい宝塚版が観たくなりますね。

青山劇場にて、ミュージカル「コーヒープリンス1号店」18時回・アフタートークショー付を歌劇。
トークショーのメンバーは、MC新納慎也、高畑充希、玉置成実、東亜優でした。

最後はハッピーエンドで後味が爽やかですし、全体としては楽しかったのですが、結局は細かい不満が積み重なり、10時間以上の原作を短縮する難しさを感じました。
一言でいえば、名場面ダイジェスト。個々のエピソードが繋がっていないため、間にあった展開を観客が想像で補う必要がありました。と言っても、序盤は丁寧な展開でした。カフェを始めてから突然エピソードがブツ切れになってしまい、主人公二人の心の動きはなんとか追えましたが、展開に唐突感がありました。
例えば、一番重要な性別バレのシーン。ハンギョルが人から裏切られることに神経質なエピソードが事前にないと、ウンチャンが性別を打ち明けることの恐れがいまいち理解できなかったし、ハンギョルの拒絶反応も過剰に感じました。
また、カフェの仕事がほとんど表現されていないので、ハンギョルが幼年期からの夢とカフェ経営の楽しさで揺れる気持ちや、ウンチャンは仕事に打ち込んでいたらしい話が言葉だけで、重みがありませんでした。そもそも、カフェ店内はいつも客がいないし、ハンギョルもウンチャンも店を放ったらかしで遊びに行ってましたよね……。

ほぼ歌えるメンバーが揃い、生バンド演奏という豪華さに反して、音響が悪いのか歌詞が聞き取り難くて辛かったです。しかも、ハングル混じりなので「今のは日本語だったのか、ハングルだったのか?」と一々考えながら聞き取る必要があり異常に疲れました。
また、1曲ずつが結構な長さで、毎回途中で飽きました。主要キャラそれぞれに曲があるのは、出演者のファンには嬉しい配慮だと思うのですが、もう少し短くして欲しかったです。
曲そのものは、槇原敬之の「恋する心達のために」が予想以上に良かったです。4人のそれぞれの声がよく伸びて気持ちよく浸れました。
他方、踊りはアンサンブル任せで、演出的にもメッセージ的にも伝わる物がなく、踊る必要がないと感じました。

原作ありきであることは分かっていますが、物語の舞台が韓国である必然性がなく、キャラ名も分かり難いので、日本を舞台にしたローカライズ作品にした方が受け入れられたのでは。そうすれば前述の歌詞の聞き取りも少し楽だったはずです。

以下、主なキャストから語りたい人だけ。
ウンチャン@高畑充希は、男装が可愛かったです。それなのに、スカート姿になると途端に衣装に着られている感が出るのが面白かったです。
ソンギ@加藤和樹は、美味しいクールポジションですが、微妙に弾けていて、少ない台詞と動きで笑わせてくれました。
ミンヨプ@鷲尾昇は、中の人の人柄の良さが滲み出ていて、役者も合わせた役の中では一番好きでした。アフタートークショーでも女子達の中で大人気だったけれど、結局誰にも指命されなかった辺りの報われない良い奴っぷりが美味しかったです。
ハンソン@新納慎也は、新納慎也の安定感と幅の広さを思い知らされました。最初のソロ曲はキーが高過ぎる気がしましたが、どんどんエンジンが掛かっていって伸び伸び遊んでいました。ウンチャンを彼女に仕立ててユジュと会う非道なところや、実はちょっと怖そうな男だったりするのは、役と関係なく新納の味ですかね。
祖母@中尾ミエが男前なお婆さんで格好よかったです。
でも、最も印象に残った出演者は(着ぐるみ)です。登場しただけで笑いがとれる美味しい奴でした。

最後に、どうしても気になったエピソードについて。
コーヒー豆の発注量を誤り店に損害を出した件は、ウンチャンに責任があると思いました。確かに間違ったのはミンヨプだけれど、ハンギョルから命じられた発注の仕事をミンヨプにやらせたのは、ウンチャン自身です。しかも、指示は別の仕事をこなしていたミンヨプに口頭で伝えただけ。成果を確認することもしませんでした。
その為、ハンギョルが「本当に悪いのは自分だ」と思う心理が理解できなかったのですが、社会人の皆さま、どう思われますか?