• 2013年登録記事

アレクサンドル・デュマ著「モンテ=クリスト伯」(岩波文庫/山内義雄訳)

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
純真な航海士ダンテスは、友人等に陥れられ冤罪で牢獄に繋がれる。牢獄で知り合った神父からモンテ=クリスト島に隠された財宝を託された彼は、14年の後に脱獄し、島の財宝を使って伯爵を名乗るようになる。そして自分を陥れ、名士に成り上がっていた友人等に復讐を果たす。その後、恩人の遺児に希望と財産を残し旅立っていく。

全七巻。
次回宙組本公演の予習として、短縮版ではなく完訳本を選択しました。
長くて飽きるかと思いきや、読み始めたらグイグイ惹き付けられ、さすが「名著」の呼び声高い作品だと思いました。敢えていうなら、フランツ視点の下りは停滞気味なので、もっと短縮しても良いように思いました。

最初の2巻では、ダンテスがいかに陥れられ、そこから脱出するかを描き、主に4巻以降から知力と財力を駆使した華麗な復讐劇が始まります。伯爵の周到な準備と、相手を囲い込み追い詰めていく描写が素晴らしく、どうやって復讐していくのか推理しつつワクワクしながら読み進めました。
反面、終盤に訪れる伯爵の心境の変化は、うまく飲み込めませんでした。
ヴィルフォールへの復讐の過程で、元々は罪のない娘ヴァランティーヌが殺害されるよう仕組んでいたくらいなのに、その復讐の結果で幼い息子エドゥワールが死んだことに動揺するのは、今更では?と思ってしまったのです。
そのくせ、伯爵自身は神父の論文を得て直ぐ罪の意識を昇華させてしまうので、読み手である私の方がなんだか消化不良でした。

個人的に、復讐相手3人の内ヴィルフォールには同情を感じました。一番死人が出たのもこの家ですしね。勿論、彼は保身の為にダンテスを政治犯にしたのですから、最も激しく復讐されるのは致し方なしですが、妻に死刑を宣告する苦悩、ベネデットから不義密通を告発されてその場で認めるある種の潔さなど、興味深い人物でした。
それと、可哀想なのはメルセデス。息子アルベールは生き延びて人間的成長もできたけれど、非のないメルセデスが理不尽な目にあって不幸なまま、未来の救いも期待できず終わってしまうのが可哀想でした。でも、この流れでダンテスと結ばれても幸福はなかったでしょうし、とにかく運の悪い女性だったというしかないのかなぁ。
映画やミュージカルなど、ダンテスがメルセデスと結ばれる結末に改変したモノもありますが、メルセデスの立場で考えたら、婚約者の下に帰る為にこれほどの犠牲が払われたと思うと、心から幸せにはなれないでしょう。

ところで、ヴァランティーヌの偽装死は、明らかに「ロミオとジュリエット」のオマージュですよね。
それだけに、マクシミリアンにヴァランティーヌが生きてる事を教えてやらない伯爵に焦れました。もし彼が1ヶ月の間に自死していたら、伯爵は最後、幸せな船出は出来なかったはず。
伯爵はマクシミリアンたちを救ったかも知れないけれど、それ以上に彼の信頼に救われたのだと私は思います。

「ゴッドイーター バースト」(以下「GEB」)体験版を遊びました。
http://www.godeater.jp/geb/
※評価対象はソロプレイ限定です。

完全新規タイトルでありながら60万本を出荷した「ゴッドイーター」のアペンド版。
前回のFGB+もそうでしたが、こういう前作に+αしたソフト、最近多いですね。

物語の求心力

このところ遊んでいる狩りゲー体験版はどれも大容量ですが、GBE体験版は、遊んでいる途中何度も「まだ遊べていいの?」と何度も思いました。
この感覚の違いは、「物語」が大きく関わっていると思います。ストーリークエストの「起」が終わって「承」に差し掛かったところまで遊ばせて貰えるのです。
FGB+もプレイ時間は長かったけれど、メインのお話が進んでいる印象はありませんでした。LoApやPSPo2は、そもそもストーリーと無関係にフリーMISSIONを繰り返す形で楽しんでいました。
この違いは、GBEがシナリオ重視の狩りゲーであることを示していると思います。
狩りゲーという観点からすれば、MISSIONを繰り返し遊べる楽しさがあるだけでも良いと思います。しかしGBEには、お話の続きを知る為に先に進めたくなる、という要素も感じました。

アニメ風キャラクターで可愛さ勝負

GBEはアニメ風のデザインで、どんなパーツを選んでも確実に可愛いキャラを作れるのが特徴だと感じました。
その代わり細かい自由は利かず、眼の色は顔と連動してるため変更不能。髪色も決められた中から選択する方式です。でも、髪色は選びそうな色が大体フォローされているので、不満には感じませんでした。
凝っているのはボイス。状況に応じた台詞を確認できるのがなかなか良い工夫だと思いました。更にバリエーションが豊かで、「ロリババア」まで完備しているのは脱帽です。折角だから、ゲームのイベント中もこの選択した性格に合わせて喋って欲しかったですね。
衣装はPSPo2i同様、防具とは別に指定。神機と装甲(盾)は実装備依存。神機は大型なので、少し見栄えが気になります。でも取り敢えず衣装が防具と別設定なのは嬉しいです。また、上下の衣装系統を揃えないとチグハグな組み合わせになってしまうゲームが多い中、違う系統で組み合わせてもそれなりにマッチするのが嬉しかったです。

スタイリッシュアクションと、慣れが命の操作性

戦闘システムは、これまで遊んだ狩りゲーと違い、アクション性が高く、プレイヤースキルが要求されるものでした。
なんせ、PCにはレベルがないので、自分の腕と装備品を鍛えていくしかないのです。
スピーディーな攻撃の切り替えや、空中で華麗にコンボを叩き込むなど、かなりスタイリッシュ。やれることが多い分、操作も結構複雑です。
私が最もスムーズにできないのが、同時ボタン操作。特にガード(R+○)です。
序盤はガードするつもりが、武器形態の切り替え(R)になってしまう事が多々ありました。最近は、そもそも接近戦闘中に敵の動きをじっくり見る余裕がない自分に気付いたので、最初からガードを諦めて、ヒット&アウェイ主体に切り替えています。でも複数体のアラガミが相手だと、なかなか離脱もさせて貰えないのが厳しいです。

ハードでグロい世界

キャラクターは可愛いのですが、世界観は終末的。そもそも主人公の扱う武器は生体武器で、戦闘中に敵を「捕喰」して強化するなど、グロ要素もあります。
ただ、前述の通りあくまでスタイリッシュな作風のため、生々しさは薄め。その御陰で、グロ耐性の低い私でも、なんとかプレイはできました。

個人的にはもう少しRPG寄りなら、と感じる文句なしに「買い」の一本でした。
しかし、1人だと体験版で遊べる以上の難易度は挫折しそうです。

……と言っていたら、友人が「VITA版買うから、マルチプレイで遊ぼう」と誘ってくれたので、買ってしまいました。
さて、どうなることでしょうか!

五十音順キャラクター・ショートショート【も】
→ルールは2012年12月17日記事参照


 もし、彼女が世界を壊すというなら、それでも良い。
 転送空間から飛び出していく背中を見送って、モーセはそう思った。

 一個人にとって、世界が破壊されることと、自分が死ぬことに、どんな違いがあるだろう。
 彼女の抹殺に失敗し、主君から捨てられた時点で、ミラージュのモーセは死んだのだ。死んだ者なら、世界が壊れたって構いやしない。

 破壊の使者は、ミラージュでもシルエットでも見たことのない、光輝く意志の力で真っ直ぐに突き進む。その先が世界の解放でも破滅でも、彼女は思うがままに己を通すだろう。
 モーセは信仰にも似た憧れをもって、彼女に夢を託した。

モーセの神
……モーセ(ゲーム「シルエットミラージュ」)


モーセはどうしてシャイナに協力したのだろう。もし本当にシャイナが破壊の使者だったら、モーセも死ぬことになるのに。
そう思った時、三行目のフレーズが浮かびました。
まぁ、基本的にはシャイナに惚れ込んだからだと思うのですが……

前記事が長くなったので、総評です。

物語としての盛り上がりはない割に、最後まで飽きずに遊べました。
色々な意味で思う通りに動かない勇者にヤキモキするのが、このゲームの面白みですね。戦闘でも、天使(プレイヤー)は下界に直接関与してはいけないという制約に従い、天使は援護のみという役割分担もシナリオと合致しています。
プレイ記録では書き忘れたけれど、最終的に脱走した元勇者ディアンが敵側で登場したり、勇者同士のすれ違い会話があったり、結構色々な仕掛けもされていました。

滅亡に向かう世界感で、色々終末的なイベントも起こるのだけれど、天使と勇者の周りは前向きでほのぼのしたムードなのが気持ち良かったです。

NECインターチャネルのタイトルらしく、キャラクターグラフィックはとても丁寧。立ち絵は1枚で表情の違いしかないのだけれど、派手な演出がなくてもキャラクター性は伝わってきました。
個人的には、どのキャラクターも「甘過ぎる台詞」を言わないのが好みです。軟派設定のシーヴァスすら、主人公を恋愛対象として見てないのが逆に新鮮でした。
ただ、恋愛EDとおまけが解放される勇者が一致しない(おまけが解放されるのは、あくまで最終戦に勝った勇者分)というのは、少し据わりの悪い仕様だと思いました。

難易度は良い手応えだと思うけれど、巧く勇者を育てていないと詰む可能性もありそうです。
最終的に動かしていた人数から考えると、勇者3人体制が効率的と思われます。ただ、途中で失踪する危険性を考えると、攻略サイトで推奨されていた通り4人になるのかも。

独特のゆったりしたテンポ感と、システム回りの不親切さで「なんとなく遊び難い」印象があります。キラっと光る個性があるのに、惜しいゲームですね。
遊び易さの為に最も改善して欲しいのは、下記の5点でしょうか。

  • セーブ/ロード速度の改善
  • 事件の詳細がマップ上で判明できるようにする
  • APの上限を増加(2周目限定でも可)
  • 購入時や所持リストでアイテム効果が分かるようにする
  • イベントフラグの厳密化or重要イベントの強制発生

続編の「純白の預言者」も購入済なので、ある程度はこちらで改良されていることを願い、遊んでみたいと思います。

クリアしました。
ターン138、天使Lv.88、妖精Lv.46。勇者のステータスは下記の通りです。

勇者ステータス
(画面注釈)前回最後に失踪したシーヴァスが戻らないまま。

安全策として、最もレベルが高かったフィアナ+フロリンダでラスボスを倒しました。天使はひたすら「透明化」を掛け続けて、APが切れた後は小回復を連打。最後はギリギリでしたが、なんとか撃破。
世界が救われたアニメーションの後、フィアナと妖精たちとの会話があって、スタッフロールへ突入。最後に、フィアナのその後が語られて終わりました。天界と地上とに別れて遠い存在になってしまったけれど、彼女が幸せになったのなら良かった、と思えました。
クリアデータのおまけでは、フィアナのスチル等が解放されたので、フィアナ同性EDと受け取れば良いでしょうか? ゲーム中で見ていないスチルも全部見えるようになるのは、イベントの発生条件が極めて分かり難い本作の場合、ちょっと有難いです。

さて、クリアはしたのですが、実は最終戦の前に、分岐と思われるイベントを見付けていたので、ロードしてその時点に舞い戻りました。
確認したのは、同行した異性勇者(レイヴまたはグリフィン)から告白されるイベントです。

レイヴ

グリフィン

レイヴの方の告白を受けた状態で、フィアナが最終戦に突入。
ラスボス撃破後の会話は、フィアナ→レイヴ→妖精たちとなり、また、天界に戻るのではなく人間になるという内容に沿った台詞に変更されました。
スタッフロールの後は、レイヴのスチルが表示されて――
目が点になりました。
それは、表示されたスチルが「笑顔でトマトを収穫するレイヴ」という内容だったからです。レイヴと言うキャラクターは、物凄く寡黙で厳格な騎士団長だったのですが……平和な時代になったから、騎士団長を辞めて、農家になったの?
困惑するプレイヤーを余所に、何の説明もないまま短い台詞があって、FINマーク。
しかも、クリアデータをセーブしてもおまけが解放されませんでした。つまり、EDを誰と迎えるかは関係なく、最終戦を制覇した勇者のみ、後日談を見られるし、おまけも解放されるということなんですね。
フラグ管理が適当な本作を思えば、割と納得できる仕様ですが、なぜレイヴがトマトを栽培していたのかだけは説明を求める!

ちなみに、シーヴァスは「勇者の探索」で見付かる事を確認しました。
ティアの時に散々「勇者の探索」して正解が「敵の捜索」で、シーヴァスの時は逆というのは、泣きそうですよ。

まだ会っていない勇者が多数いるので再プレイは必至ですが、次回、総評感想で一旦区切ります。