• 2017年登録記事

宮木あや子著「雨の塔」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
世間から隔絶された全寮制の女子大で、高校時代に同性と心中未遂を起こした矢咲、母親から捨てられた小津、権力者の妾腹の娘・三島と奴隷のように仕える都岡が出逢った。4人は惹かれ合って嫉妬し、やがて矢咲と小津は関係を結ぶが、外界での事変を受け矢咲が実家に戻ることにすると、小津は海に身を投げてしまう。矢咲は小津が死んだことを知らぬまま学校を去り、一方、都岡は三島の元に残ることにする。

前情報なしで読み始め、途中で「少女愛」の作品だとわかりました。
「お姉様」的な面はないので、「エス」とは少し違うような気もします。だいぶ幻想的ではありますが、セックス表現も含まれているので、苦手な方は要注意です。

独自の学園設定で、かなりファンタジーな雰囲気が漂っています。
食事シーンは何度もあるのに、まったく生活感がないのも特異。
外界から物理的に切り離されているとは言っても、電話はあるし、岬内にも学生やダウンタウンの店員、事務員等がいるのに、全体的に4人の内面と手の届く範囲しか描かれないため、ここには4人しか存在していないかのように感じる狭い世界でした。

そして物語を紡ぐ4人は、普通に付き合って悪印象を与える人ではないけれど、卑怯だったり、愚かだったり、歪な面があって、手放しの好感を抱くことが難しい人物でした。
もちろん、意図的な人物描写だと思います。

小津が死ぬことは、途中から示唆されていたものの、その時点では「なぜ死ぬ必要があるのか」と疑問に思っていました。しかし、最後まで読むことである程度腑に落ちました。
彼女の場合は、母親から捨てられた、不要な人間であるという喪失感があっから、矢咲から「小津が必要」「一緒にいる」という言葉を貰うことで、自分を肯定していたのですね。それゆえ、矢咲が大学を不要とした瞬間、自分も捨てられる前に逃げたのだと思います。
もう少し小津が自己肯定に足る期間を経ているか、矢咲が言わずに済ませた「外界でモンブランを食べよう」という約束をしていれば、小津は逃げなかったかもしれません。
この2点に関して、矢咲を責めて仕方ないことはわかります。でも、矢咲は自分が小津を追い詰めて殺したことには最後まで気付かないだろうと思わされる辺り、残酷な少女です。

そうして小津の死と寂しさ矢咲の残酷さを感じただけに、愚かだけれど善良ではある三島の元に都岡が己の意思で戻るラストには、少し救いを感じました。

ヒキタクニオ著「ベリィ・タルト」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
リンは、元ヤクザの芸能プロ社長・関永からスカウトされ、アイドルを目指す。しかし人気が上昇し始めた矢先、大手プロから強引な移籍話を持ち掛けられる。リンの大成の可能性に夢を抱く関永は移籍を断るが、リンの母親が大手プロに同意書を渡した上、リンの身柄も誘拐されてしまう。打つ手を失った関永だったが、部下・小松崎がリンの母親と無理心中したことで、離婚した父の同意書を持つ関永の元にリンは戻されるが、自分を巡って人が死ぬ様を見たリンはアイドルを辞める。

ふわふわとしたイメージのアイドルではなく、化粧、運動、食事制限など、ストイックに「人に見られる」職業を追求したアイドル小説です。そのため、主人公リンがアイドルとして磨かれ垢抜けていく成長過程は、ウンチクも含めて楽しく読めました。
また、リンを手掛ける2人がインテリヤクザだという点から、全体的に下品な匂いが付きまとう会話も刺激的でした。

それだけに、中盤から、大手プロとリンの取り合いにシフトすると、急速に陳腐に感じられたのが残念でした。銃だ日本刀だと、あまりに破天荒過ぎて現実味がありません。
終盤、どう決着を着けるのかと思ったら、私としては雑に感じる畳みかたで、非常にガッカリしました。
小松崎が死ぬのは構わないけれど、リンがアイドルとして大成しないまま終わってしまうのでは、報われません。悪役として使われているリンの母親の描写も鼻につきましたし、リンが専務の家に監禁されていながら処女を失わずに済む展開は、ご都合主義というより男性作者らしい処女信仰を感じて私は辟易しました。

しかし、リン、関永、小松崎、仁という、アイドルの原石と彼女の教育に関わる男たちという4人組の魅力は最後まで褪せませんでした。
登場時のリンは、蓮っ葉で馬鹿な女の子かと思わせておいて、本能が強く健気で潔い野生児という、独自の魅力があるアイドル像で、TVでどう映えるのか見てみたいキャラクターでした。

帝国編をクリアしました。
この賑やかな主従&ニブルヘイム森公国父娘、大好きです。

バルコニー

2ルートを終えて、シナリオ達成率は66%。想機の3Dモデルビューワは32機中30機。
数値的にはまだまだやり込む余地があるけれど、さすがに満足しましたし、集中して遊んで疲れたので、ここで本作に関しては一応クリアとしたいと思います。

最後はやはりフォークナーの魔王機との戦いでしたが、増援がなかったので、王国編より楽だった気がします。
と言いつつ、トドメを刺す一手前に、エリファスが撃破されました。

天破闇法陣

「必殺技」というに相応しい威力で、しかも二回攻撃。
それでも、1回目は回避に成功しました。2回目は安全策で防御すべき、とわかっていたのですが、一か八かの賭けで回避を選び、負けました。

帝国編は、好感度に応じてシャロンとマスカットの分岐があるようですが、選択肢で両方に良い顔をした場合は、シャロンに傾くようです。

マスカットを殺してしまったので、ディオン=レーベ候領には行き難いですね。アンドリューに申し訳ない。逆に、あれだけ威圧的にランディを詰ったグラード公は、今頃、気まずい思いをしていれば良いと思います。
謂われなき批判を受けた後だけに、ランディと直接会って真偽を確かめようとしてくれるゼイラ公の人格にホッとしました。

グラード公の軍勢に、味方のとき驚異的な威力を発揮した必殺技「熱き魂の叫び」習得済みのラッセルがいて、このときは緊張しました。とはいえ、二回攻撃は習得していなかったので、APとTPを上手く計算して完封。

ラッセル

ランディとラッセルは、正統派熱血主人公と熱血漢で意気投合しそうなのに、まったく性格が合わないところが興味深いです。ランディは曲者のアンドリューをそのまま受け入れて仲良くなるのに対し、ラッセルはアンドリューを存在ごと無視していたという点からも、人間性が出ていると思います。
と言いつつ、私がこの世界で生きていたら、アンドリューのような怪しいおっさんは絶対無視しますけれどね!

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新宿東口のモダンパブ「ムートン」(MOUTON)
http://www.pub-mouton.com

新宿を中心に展開するマルゴグループ系列の店。カフェ風にしたお洒落なパブで、時間ごとにピアノの生演奏も行われています。
来店が平日夜ということもあってか、店内は落ち着いていて、大人向けの雰囲気が漂います。

店名「ムートン」の由来は、ワイン「シャトー・ムートン・ロートシルト」だと思いますが、ショップカードに羊を載せているから、羊皮の「ムートン」とも掛けているのでしょう。
当然、料理メニューには羊が並んでいます。羊肉、羊チーズ、羊ソーセージなど、少し癖はありつつ日本人向けな料理にされていました。
とはいえ、羊以外のメニューの方が多いくらいであり、羊が苦手でも問題はないと思います。
フィッシュ&チップスの魚はフグ。モルトビネガーを付けて頂くのが美味しかったです。

グラスワインが豊富で、随時15種類ほど。色々な味を、グラス1杯から楽しめるのは嬉しいです。なお、開栓後の味を保つため、赤白共にワインは冷やしてあるようでした。
料理に合わせて、どのグラスワインが合うかをソムリエと相談し、マリアージュを楽しむこともできます。

高級感が漂いつつも、比較的安価に「飲む」「食べる」を両方楽しめるお店でした。

デュウィ・グラム著 安原和見訳「オーシャンズ11」

2001年版(リメイク版)映画「オーシャンズ11」のノベライズ。
映画は未見。舞台版(宝塚)の知識しかありません。
舞台版とは大きくプロットが異なり、各人の役回りにも違いがあるのですが、意外と全体の雰囲気は変わらないと思いました。そして私の場合は、映画俳優より役者の方が印象が強いので、ダニー、バシャー、イエン、リビングストン、ベネディクトは花組版キャスト、ソール、ライナス、フランクは星組版キャストの顔で補完されました。

私は「ピカレスクロマン」が不得意なのですが、本作の場合は犯罪とはいえ「一大プロジェクト」を描く作品なので、ごく普通に楽しく読めました。
標的のベネディクトが、結構しぶとそうな野心家なのも良かったです。

訳はやや直訳気味に感じました。説明がない部分はまったく説明がないので、ある程度読み手に理解力がないとなにを描写しているのかわかり難い箇所がありました。
お洒落な会話は解説しなくても良いけれど、プロジェクトに関わる部分は、明瞭にして欲しいです。例えばブルーザーとダニーの関係性等は、語らなくても「買収済み」程度の想像はつくけれど、以前からの知り合いのような描写なので、多少説明して納得させて欲しいな、と思ったりしました。