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今週も宝塚宙組「美しき生涯/ルナロッサ」11時回を観劇。

折角、寺嶋昌夫・御崎恵両氏が指揮を振っているのに、トランペットが酷過ぎて音楽に浸れません。
役者の方も、久し振りに「噛み」に遭遇しました。芝居15場の「近江井口村で」と言う台詞。言い直そうとして、同じところで引っ掛かった感じでした。
12日から休みなしで、三連休はすべて2公演。体力的に大変だと思いますが、栄養をとって頑張って欲しいものです。

芝居は、自分向きの「見かた」が分かってきて、少し楽しめました。
矛盾を感じるシーンは、前後と繋げずショーの一場面程度に思っておく、と言う観劇法です。そうやって観たいところだけ観ていると、和物ビジュアルを堪能できて楽しかったです。
あと、脳内創作でシーンを補完している点も、楽しめた理由でしょうか。
例えば女童コーラスが歌う間、秀吉が死の床に武将たちを並べ、秀頼を守り立てるよう頼むシーンを頭の中で作り上げていました。
正直、今からでも可能ならば、11場B(疾風が秀次の謀殺を進言するシーン)をカットして代わりに入れて欲しいです。このシーンがあれば、秀頼を出陣させることが豊臣譜代衆を大坂方に戻す策だと言う理屈が明確になります。「裏切り者は許さぬ」と言う三成の台詞も唐突感がなくなるでしょう。
脚本家は、そういった史実エピソードは観客が承知しているはず、と思って女童コーラスで済ませたのかも知れませんが、それは乱暴だと思います。
ちなみに、舞台に登場していない関白・秀次のことは、触れる必要がないと思います。現に、今日の同行者は「秀次って、誰?」状態でした。

今日は基本的に鳳樹いちを見ていました。
鳳樹はどの公演でも、気が付くと目が引き寄せられる存在です。決して一般的な美形ではない(※1)ですが、あの眼力(※2)が私の何かを刺激するようです。他の日でも、遠目に「格好良い」と思ってオペラを覗くと、彼だったことが多いです。
芝居、歌、踊りと破綻がないので、どんなシーンでも安心できますね。そんな鳳樹効果で、同じシーンに登場している蒼羽りく愛月ひかるもぐっと巧く観えたような……。さすがにそれは気のせいかな。

※1 縦長の楕円顔自体は、男役メイクが映える美形顔だと思うんですが……下膨れが原因?
※2 眼力が天玲美音レベルまでいくと、二度見しちゃう(笑)。

北ノ庄で疾風に斬られて死ぬのは、星吹彩翔ですよね。スローモーションの部分で、時々フラッシュバックの中に浮かび上がる武者振りが凛々しいなぁと思って見ていました。
同期の蒼羽、愛月がモブレベルとは言え要所で出番があるのに比べて、勿体ない使われ方ですよね。
前回「誰がために鐘は鳴る」ではピンで役が付いていたから、ここで差し引きと言うことなのかしら。

ショーは、相変わらず観ていて発散できて楽しいです。
特記するところがなくて、結果として観劇記事は芝居への不満ばかりになってしまってますが……。

今年も、贔屓組と共に過ごす東京の夏がやってきました!
ということで、宝塚宙組「美しき生涯/ルナロッサ」11時回(VISA貸切)を観劇。
幕間の抽選会お手伝いは、和希そら。

個人的意見として、芝居は私の宝塚観劇史上最大の駄作だと思います。
具体的な文句は、大劇場初日の記事にまとめているので割愛します。
とにかく、肌に合わないようです。
回数を重ねれば好きになれるかもと期待していましたが、今日は観劇中に冷めた気持ちになってしまい、自分にギョッとしました。もっとも、前回の「誰がために鐘は鳴る」は3回目から俄然面白くなって号泣し始めた私ですので、これからに期待でしょうか……。
ちなみに、今日は1階席で舞台と近かったため、北ノ庄城で七海ひろき等の武将勢を確認できました。みんな凛々しい武将っぷりで、実に格好良かったです。だからこそ、役がないことに一層哀しくなりました。

東京公演へ移るにあたっての芝居の変更点はなかったと思います。
デュエット歌詞中の敬称と、牢獄で家康が三成に掛ける台詞が変更されていましたが、どちらも訂正と呼ぶべきレベルですよね。

芝居を耐えた分、ショーは素直に楽しくてとても発散できました。
大劇場初日に危惧していた「メリハリがない」点は、いつの間にか解消していたようです。出演者が巧くコントロールしているのか、場面の切り替えに間を設けたのかは分かりませんが。
今日は「ルフ」で鳳翔大を追っ掛けたのですが、「ファンキーサンシャイン」の時のようなウィンク連発が観られず残念でした。いや、それでも3発は観たかな……(笑)。
「祈り」のシーンで「祈りS」から何度も零れ落ちる笑顔に、観ているこちらも癒されました。このシーンの為に今月は劇場に通おうと思います。

余談。
野々すみ花一人が男役と混じって同じ振り付けで踊るシーンが2回ありますが、2回共「男役と同じ振り付けで大変だな」と思ってから、直後に「みんな女性だった!」と気付きました。

改めて、宝塚宙組大劇場「美しき生涯/ルナロッサ」5/20(初日)観劇の感想です。

2階席最前列のため、オペラグラスなしで全体を観てきました。プログラムは現時点で未購入です。
上記の理由により、何処に誰が出ていたのか把握出来なかった場もあるので、役者ごとの感想は東京に持ち越します。

正直な感想は「リピートはできる。しかし芝居には大いに物申す」と言うところ。

芝居「美しき生涯 −石田三成 永遠の愛と義−」は、戦国時代なので戦いが中心かと思いきや、ガッツリとした恋愛物でした。
和物ならではの華やかさに、今回ロック調と言う事でカブいた部分があり、ビジュアルを楽しむ面では成功と思われます。関ヶ原の戦いにおける、白の西軍、赤の東軍は素直に格好良かったです。
演出は全体に昔ながらの和物芝居と言う印象だったり、過去の宙組公演とオーバーラップする光景がありましたが、良心的な出来だと思います。
問題は、脚本にあります。前半に力が入り過ぎたのか、後半から急速に失速していました。
ラストでは周囲から沢山啜り泣きが聞こえたように、涙するところがあり、笑いもあり、と緩急は付いているので、好みもあるのでしょうが……
また、外部脚本家と言う事で期待度が高かったのが問題かも知れません。
ネタバレになるため、具体的な突っ込みは後半に隠しました。

ショー「ルナロッサ −夜に惑う旅人−」は、速報でも書いた通り「眼が一つでは足りない」賑々しさ。
人の入れ替わりが激しく、あちこちに興味を引かれると、結局どれもこれも見逃すと言う感じ。次回以降は一人に絞って観ていきたいと思います。もっとシーン構成に盛り上がりとクールダウンを作った方が、見せ場が分かり易くて観易いんじゃないかしら。
一番気に入ったのは「祈り」ですが、写真で販売して欲しいのは「砂漠の豹」の冒頭です。
デュエットダンスが、リフトなし、銀橋なしで、安定している反面、派手さがなかったのだけ残念です。
最初から最後までアラビアンのショーは初めての体験で、全体に新鮮でした。

以下、芝居への突っ込みです。

「美しき生涯」脚本への異議申し立て【完全ネタバレ注意】
麻生が考える、脚本上の主な問題点は下記の通りです。

○秀頼の出生
ヒロインが茶々とわかった時点で「こういう脚本になったら嫌だ」と思っていた通りの展開(秀頼の父親は三成)が、まず辛かったです。もし秀頼が三成の子であったなら、「忠義」も「正義」も彼は口にする資格がなくなるためです。
そもそも、お互いに好き合っていると自覚しながら、茶々に側室になるよう奨める展開も「愛こそすべて」の宝塚的には減点対象なのですが……。

○秀吉の描き方
この作品における秀吉は、主人公が忠義を貫く相手です。しかし前項の通り、不倫相手の夫と言う立場にも同時に立つ必要があります。この矛盾のために、酒に溺れる馬鹿殿だったり悪人のように描かれるところが多々観られました。
秀吉は三成が義を貫くにふさわしい人間なのか?と疑問に感じます。
結果、仕える人物の本質を知らず忠義を捧げている愚かな三成、と言う風にも見えてしまいます。

○仕事の描写がない
三成に茶々の世話以外の仕事をさせてください。
具体的には、民の暮らしを良くするために、槍働きではなく奉行として働いている姿を見せると言う意味です。デュエットで歌った「三つの成すべきこと」の内の、1と3は描いているのに、2つ目(民の安寧)のため働く姿が描かれていないのです。それが無理でも、天下分け目の戦いに際して「家康と三成のどっちが勝っても同じ?」等と民に歌わせるのを止めて、「三成様は不作で飢饉になった村を救って下さった」くらい言わせて欲しいです。仕事ぶりがないと、周囲が優秀と口を揃えても胡散臭いし、本人も単なる口だけ男に見えます。
また、仕事光景があれば、三成と七本槍の対立も台詞で説明するのでなく、エピソードとして描けたはずです。

○日本史が分からない人への配慮不足
鶴松誕生後から、展開がもの凄い勢いで駆け足になっています。
有名エピソードとは言え、観客には子供や日本史に疎い人もいるわけで、台詞だけで「関白秀次の事変」「小早川秀秋の寝返り」など語られても何が起きたのか前後関係が分かりません。鶴松の後に秀頼が産まれた事にすら気付かない人もいそうです。通し役がついていない生徒は沢山いるのだから、作中でちょっとでも登場させて伏線を引き、舞台の中でお話が完結するようにして欲しいです。
また逆に、役がついている人物も描写不足で、七本槍の中で糟屋武則だけ西軍につくのですが、説明がないまま西軍側で踊っているので「途中から七本槍の人数が減った」「西軍水増し用にここだけ二役?」などと勘違いされそうです。

○何時か何処かで観た展開
牢獄のシーン、泣きながら主役の名を呼び、その場に残ろうとするヒロインと、それを引き摺って上手に消えて行く男……と言う光景が、前回公演「誰がために鐘は鳴る」ラストシーンそっくりで、泣き所だけれど泣けないと思いました。
せめて前回大劇場公演の内容くらいは確認して、違う展開にして欲しいです。気丈な茶々を安易に泣かせるより、悲しみを堪えてキッと顔を上げて去って行く、と言う展開の方が感動したかも。
そういえば、1年前の公演「トラファルガー」も本作と同様「史実が元ネタ」「戦争話」「不倫物」「ヒロイン出産」でしたね。あれは更に大幅な史実改変で度肝を抜いてくれましたが。

本作の問題点(5点目を除く)を統合すると、史実改変をしておきながら語り切れない部分は史実に委ねている辺りに、据わりの悪い物を感じると言うのが一番になります。
絵的な美しさや、場として切り取って観れば良いと感じる所はあるものの、それなら劇団座付きの演出家が書く脚本と変わらない、と思ってしまうのが残念でした。

宙組宝塚大劇場「美しき生涯/ルナロッサ」初日観ました。

お芝居は、確かにロックな和物でした。後半がかなり駆け足展開な歴史ダイジェストで、日本史に弱い方は「どうしてそうなった?」と思うかも。
突っ込みたいところはいっぱいあるので、それはまた後日。
三成はヘタレ傾向で、「関ケ原」に近いかも。疾風はすごく美味しい二番手で、福島正則は渡辺綱@大江山花伝再び、でした。ただの馬鹿扱いではなかったです。
ビジュアルはみんな良かったので、後は練り込み待ちでしょうか。

ショーは、眼が足りない感じ。とにかく組子大量投入で、楽しかったです。
一番気に入ったのは「祈り」の場面です。あとは、大階段の男役群舞で生徒が配置についた瞬間に、盲点だった!と膝を打ちました。
ただ、常にハイな状態で、構成にメリハリがないですね。連続で観劇すると疲れるかも。

異動してきた凰稀かなめは、しっかり馴染んでました。歌は二年前に比べ格段に上達してるし、体型補正がうまいのか、衣装を着ると線が太いのも強みですね。
ただ、たまに鳳翔大と見間違えたのは、オペラグラスを使わなかったからでしょうか……

 深夜のカジノで、回転盤にボールを投げ込む音が響いた。
 軽快な音を立てて走ったボールが、やがて勢いを失いポケットへ吸い込まれていく。エミールは見えざる客にボールの落ちた数字を告げた。
 無論、プレイマットの上には一枚のチップも張られていない。だが視線を向けたそこに赤のチップが置かれているような気がして、エミールは瞼を閉じた。
 あんな惨めなゲームは初めてだった。
 何度投げても、あの客が張った数字にばかりボールは落ちていった。まるで負ける為に投げているような恐怖がエミールを襲い、誰でも良いから代わってくれと叫び出すところだった。
 その時、不意に扉が開く音がして、エミールは顔を上げた。
「まだ着替えてなかったのか」
 扉から顔を覗かせたのはサッシャだった。間もなく夜間外出禁止時間だと言うのに、エミールが出てくるのを待っていたらしい。無論、エミールはその理由を知っていた。同じ店で働く仲間と言うだけでない、もう一つの顔を彼等は共有している。
「ああ……いや、もう帰る」
 だが、エミールは緩く首を振った。こんな日は、する事を変えても碌な事にならない。水でも浴びて寝てしまうほかない。
 蝶ネクタイを緩めて息を吐き出す。それだけの動作が億劫で、顔を顰めた。
「おい、本気か? 冗談だろ?」
 眼差しの奥に常以上に強い光を見つけ、エミールは戸惑った。今夜の集会は、他の地域で活動する同志との情報交換でも、予定されていただろうか。
「そうか、お前表に来てないから知らないのか」
 なにを納得したのか、サッシャは二度頷くと、誰もいないカジノを見渡してから、大股でエミールに近付く。そして囁くように小さく、けれど軽快な音で彼は告げた。
「ヴィクター・ラズロが来てる!」
 職業柄表情が変わり難いエミールも、さすがに瞠目しサッシャを見た。
「集会に来られるのか? 見張りがついてるだろう」
 ナチスの収容所脱出に成功した英雄の周囲には、崇拝者の数だけ監視の眼も付いているはずだ。


以前(2010年1月20日記事「深夜のカジノにて」)書き掛け途中のままにしていた宙組公演「カサブランカ」SSの続き。タイトルは変更しました。
この後オーナー登場ですが、会話や展開の細かいところが決まっていないので、いつ出来上がるやら……。