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月組公演「スカーレットピンパーネル」11:30回(VISA貸切)観劇。

役替わりはショーヴラン役:龍真咲、アルマン役:明日海りお。
チケットを確保した時点では、この方が番手の並びが順当かなと思っただけでどちらのファンでもなかったのですが、宝塚での公演中に喉を痛めてしまった等の話を聞くにつれ、龍を応援する気持ちが強くなり、幕が開く頃にはすっかり子の出来を心配する親の気持ちでした。判官贔屓な日本人気質に、我がことながら笑ってしまいます。

と言うわけで、本作でお披露目の霧矢大夢を祝いつつも、オペラグラスは龍を中心に観劇。
月組観劇は「ME AND MY GIRL」以来のため、龍の演技は「マジシャンの憂欝」で観たレオー役しか記憶していませんでしたが、その時のイメージよりかなり低音に作り込まれた台詞声に驚くと同時に、かなり惹かれました。
問題の喉は、コンディションを保つためかかなり緩急をつけて歌っていて、高音は多少揺れていましたが、心配したほど掠れたり出ないと言うことはありませんでした。登場後一曲目の「マダムギロチン」は、演出や曲自体の盛り上がりもあって、ちょっと拍子抜けするくらい良い出来でした。

少し線が細いので、一幕の間は初演ショーヴラン@柚希礼音と比較して物足りなく思うシーンもありました。
が、「君はどこへ」で初演とは役の解釈が違うと感じ、以降は柚希版との間違い探しではなく、龍版ショーヴランを観れたと思います。
私の印象では、「君はどこへ」はマルグリットへの嫉妬と恨みから昂る感情を表現する歌だったのですが、龍は、見失ったマルグリットへの悲しみと涙を表現していると感じました。
もう一カ所、違いを大きく感じたのは、コメディフランセーズで「ひとかけらの勇気」が歌われたことに対し「なんであんな歌を歌ったんだ」と言う台詞。柚希版はマルグリットが理解できなくて問うた感じだったけれど、龍版は彼女が処刑されることに心を痛めて言ってると感じて泣かされました。
ショーヴランにとって、マルグリットは革命そのもの。だから彼女から拒絶されることで、狂気に振り切って、処刑への躊躇いが消えたのだと思います。
龍は顔芸が割と激しいこともあり、ビジュアル的な好みからは外れるのですが、スタイルの良さには唸りました。顔は明日海、スタイルは龍が理想のビジュアルなんですが、どうせ役替わりならそう言う都合の良い融合って出来ませんかね(笑)。

貸衣装のアドリブは、基本パターンの「総スパンにでっかい羽根背負って」に、大きな帽子が追加。パーシーはこの衣装をVISAカードで購入したそうです。
スポンサーの名前を出されて無下に扱えないショーヴランが「それは素晴らしい」と返し、当然重ねてパーシーから薦められるも、しれっと「持ってますから」と応えたところに、舞台度胸を感じました。
今日は客席のウケが凄く良くて、途中から完全にショーヴランは笑われる対象だったのですが、動じず自分を保ちつつ、良いテンポの会話をしていました。
あんだけ笑い者にされて、平然と演技する強さには脱帽します。

でも、パーシーとの掛け合いのテンポが一番良かったのは、プリンスオブウェールズ@桐生園加でしょう。登場の瞬間から笑いを取り、二幕冒頭の「ここでも、そこでも」でも、自由な動きで楽しませてくれました。
今回のパーシーと王太子の関係は、悪友って感じでしょうか。

後回しになってしまいましたが、パーシー@霧矢大夢は、正に満を持してのトップスター就任。演出の補助なく一人銀橋で歌い上げる時の劇場の支配力に、この人の巧さを感じます。
実は、マルグリットへの疑心に悩む「祈り」で泣かされました。基本的に私はマルグリット視点で「なんでパーシーはマルグリットを疑うんだ。もっと良く腹を割って話し合え」とヤキモキしていたのですが、此処だけはパーシーの苦悩に飲み込まれました。

一方、マルグリット@蒼乃夕妃は、初演の遠野あすかに似てる役作りだった印象。充分声量があり、二幕では高音も綺麗に伸びていたのですが、率直に言ってしまえば「歌える」ことと「歌に心を乗せる」のは別物なんだなと痛感しました。若い激情家と言う雰囲気があり、役作りは凄く可愛かったので、これで歌を武器に出来るようになればと強く願います。
なお、デュエットダンスでは面目躍如。素晴らしい身体能力に、ショーでの活躍が観たいなと思われました。

アルマン@明日海りおは、役者の気質か、普通に格好よく有能そうに見えて、これも初演とはだいぶ雰囲気が違いました。ちょっと、龍真咲のアルマン解釈も気になる所です。
マリー@憧花ゆりのは、やや年上感があることと声質の好みを除けば、演技は非常に見応えがありました。

ロベスピエール@越乃リュウは、かなり冷酷で狂気を帯びた雰囲気。その一方で、グラパンを信頼し過ぎて間抜けにも見えました。あのロベスピエール相手だと、送り付けられたショーヴランは処刑されてしまうんじゃないか、と少し不安です。

フォークス@星条海斗は、歌い出すと良い声過ぎて、なんだか不思議な感じでした。洗濯女の反乱シーンで、変な女声作って喋ってるのは彼ですよね? 同一人物には思えない。

イザベル@沢希理寿は、役柄上、態とちょっと下品な雰囲気で歌っているのでしょうか。もっと歌巧者だったように思うので、少し不似合いに感じました。
そもそも、役に対して勿体ない使い方のようにも思うのですが……。

ショーヴランと共にロンドンに乗り込む公安委員の一方が好みの美形でした。パンフレットで確認したところ、メルシエ@美翔かずきではないかと思います。
ピンパーネル団の中で、気障な優男がいたのですが、役名も役者も分からず。ファーレイでしょうか?
そんな具合で、ちょっと気になった役者が誰だかも分からないのですが、民衆の演技に「芝居の月組」の底力を見ました。また、期待値の低かったコーラスが思いのほか重厚で、これも嬉しい驚きでした。

演出は改めて観ても素晴らしい内容でさすが小池先生と思うと同時に、軍服やわっかのドレスなど派手な衣装が揃って華やかで、最後が大団円で、楽曲が良くてと、本当に良い演目ですね。
今後宝塚を観なくなったとしても、再演があれば是非観たい演目の一つだと思います。

待望の「シャングリラ」DVDが届いたけれど、今日一日は「スカーレットピンパーネル」の世界に浸っていたいから、観ないで我慢しようかな……。

題名はふざけてますが、「スカーレットピンパーネル」のショーヴランのこと。

柚希礼音、初の悪役。
割とコメディ色がある演出なので、時々お間抜けだったりしますが、私がマルグリットで、あれだけ若くてギラギラしてる男に迫られたら、揺らいでしまうかもと思う程に、魅力的でした。
歌は不得意らしいですが、私個人としては何故かリピートしたくなるくらい好きです。ああ、あの歌を聞きにもう一度行きたいなぁ(ただし歌ったのが雪組「君を愛してる」の「僕はモテモテ♪」だったらハリ倒してた可能性があるので、作曲のワイルドホーン氏が偉大なだけかも)。
得意のダンスは披露出来るのがショー部分のみでしたが、一人キレが違いましたしね。

が、良かった、で片付けられればワザワザ日が経ってから書こうとしないわけでして……
革命時代にマルグリットと関係があった、と言う設定がちょっと腑に落ちないのです。
その理由は年齢。
パーシーとの間に感じる年齢差は、両役者の実年齢的に仕方ないとしても、マルグリットよりだいぶ年下に見えたのは如何なものか。マルグリットの今回の化粧や鬘だと、彼女とはかなり年齢差があるように見えました。
かつて恋人同士だった二人としては、せめて同年代に見えないと……。
マルグリットは、ショーヴランを「愛したことはない」と拒絶しますが、それは虚勢であって、やはり革命の熱病だったとしても愛情的なものがあったのではないかと思います。なんせ、遠野あすかはショーヴランの例の熱っぽいソロを聞いて、舞台袖で号泣するそうですから(実際の行為として泣いているかは不明ですが、そういう気持ちは確かにあるのだろうなぁと舞台を見て感じました)。
別に「年上の彼女」が悪いとは言いません。しかし歌詞中の「君の中に眠る少女」と言う言い回しが大人目線なので、ショーヴランの方が若いと変だと思ってしまうのです。
第一、宝塚版は原作より更に二年後の1794年を舞台としているので、革命が起こったのは5年前。
その時のショーヴランの年齢は? と言う事まで考えると、革命当時のショーヴランが若過ぎるので、愛と言うより、年上の女優への恋・憧れだったのでは、などと感じてしまうのでした。

しかし、若いショーヴランだからこそ、あの熱の発し具合を魅力と見せることが出来たのかも知れない。ジレンマですね。

宝塚星組「スカーレットピンパーネル(THE SCARLET PIMPERNEL/邦題:紅はこべ)」15:30回。WOWOW貸切。
初の星組本公演、初の二階B席観劇でした。
二階に上がること自体が初めてだったのですけれど、高低差が凄いですね。セットによって死角も出来てしまいますが、全体の動きを見るには悪くない位置。席の定価自体も安いので、リピートするなら狙い目だと思いました。

海外ミュージカルの初演、潤色・演出に小池修一郎先生、冠はVISA、という3つの符号からは第二の「エリザベート」を作ろうという劇団の気持ちを感じますが、それに相応しい内容でした。
正直、星組ファンってズルいな!と思うくらい全体のレベルが高く、驚きました。
現トップ内最も歌えるスターだと思う安蘭けいの歌唱は、期待通り安定していましたが、前回「KEAN」で気になっていた二番手・柚希礼音が堂々と初の悪役を演じていて、しかもソロが複数回あり、役として歌い込んでいて若いのに凄い役者になっていってるなぁと感心。
彼女に限らず、星組全体のレベルアップに今公演が役立っていそうですね。群衆での最初のナンバー「マダム・ギロチン」から、大変な迫力でした。

驚いたと言えば、この作品のテーマと言うべき「ひとかけらの勇気」が宝塚用新曲であると言う事実に、口が開きっぱなしです。
この曲はお話の展開にもしっかり組み込まれているので、曲がないシナリオが想像付きません。ブロードウェイ公演はどんなシナリオなんでしょう。ちょっと見てみたいですね。
ちなみに、ショー構成は「エリザベート」と全く一緒。ただ、デュエットダンスにリフトがなくて残念でした。男役も娘役もお互い大変だろうと思うのですが、リフトはやっぱり華ですよね。

全体的に、柚希をオペラグラスで追うショーヴラン視点寄りの観劇だったので、革命に抱いていた夢、それが崩壊しつつある嫌な感触、嫉妬など、重い内容でした。笑い所では凄く笑わされましたけれどね。
そういえば、この作品を再演する場合、グラパンのハードルが高いなと思ったけれど、よく考えたらグラパンを格好いい小父様として演じても良いんですよね?
あと、8人の仲間は多過ぎだろうとちょっと突っ込みたい。しかも全員に恋人が出来てしまう辺りもどうなのか。そのせいで個性がなく、せっかく役名が付いているのに、全然顔と役と役者が一致しません。まぁ遠かったからそもそも判別出来てないのですが……。
いや、文句の付け所があんまりないので、ついつい突っついた重箱の隅でした。