坂木司著「シンデレラ・ティース」
【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
歯医者嫌いの女子大生サキは、母親の策略によって歯科の受付バイトを始めた。個性豊かなメンバーが揃った独特のクリニックの気配りと仕事意識に触れる内に、歯医者への恐怖心を克服し、人間的にも成長していく。
歯科を舞台にした小説とは珍しいと思って読んでみたところ、「日常ミステリ」でした。更に、読み終わってから作者名を確認してみたら、「和菓子のアン」の作者だったという、色々気付きが遅い読書でした。
本当に、他愛無い日常の謎ばかりですが、なかなか知ることはない歯科の仕事や、恋愛関係が織り込まれていて、なかなか面白かったです。
医療はサービスと考える理想的な歯科と、善良な登場人物揃いで、こんなクリニックなら私もバイトしたいです。そう思える空気感がとても気持ちよかったのですが、これを「非現実的」と感じた場合、途端に評価は反転するだろうな、と思います。
私自身は歯科に対して恐怖心を抱いたことがないのですが、歯医者嫌いは「歯科治療恐怖症」という病として認定されているのですね。単なる怖がり等と思ってはいけないのだな、と良い勉強になりました。