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宝塚月組「バラの国の王子/ONE」15:30VISA貸切回観劇。
幕間の抽選会お手伝いは叶羽時。
貸切アドリブは夢追い人で「私の夢は、三井住友VISAカードでキャトルレーヴの月組グッズを大人買いすることです」。

「バラの国の王子」は寓話「美女と野獣」を基にしたミュージカル。
色々突っ込みどころはありましたが、ファミリーミュージカル調で意外と面白かったです。宝塚的ではなかったですけれど、大人数でのコーラスは迫力があったし、アンサンブルの贅沢な配置も凄かったです。
木村先生の歌詞センスは、子供向けのおとぎ話調だと余り気になりませんでした。最初は歌台詞ミュージカルなのに、途中から台詞劇になるのは作曲家が力尽きたのかな?(笑)

野獣@霧矢大夢
薔薇を一本手折られただけで激怒し過ぎだと思いますが、素顔は意外とヘタレで臆病な野獣が可愛かったです。
ベルに恋を告白し断られてしまった後の哀しい絶唱や、帰宅を許して抱きつかれた後、戸惑った後に抱き締め返そうと両手を上げかけたところで逃げられてしまい、中途半端な姿勢のままいる姿など、何とも言えず可愛かったです。
ディズニー映画「美女と野獣」だと野獣姿の方が格好良く、人間に戻った王子にガッカリするのですが、流石にスッキリした貴公子でした。

ベル@蒼乃夕妃
心理描写が丁寧にされているので、野獣よりも主人公らしいヒロイン。
心優しいと言われていても、実際は読書が好きで夢見がち、臆病で、観客の女性が感情移入し易いキャラクターだったと思います。
素朴なワンピースと豪奢な赤ドレスが良く似合って、しっかり美人キャラを勤めていました。

王様/先代の王様@龍真咲(二役)
本日のお目当て。
いきなりラストの話をしてしまうと、母親以外のすべての登場人物から存在否定され項垂れる王様を見て、「イジメ、良くない」と思ってしまいました。「フルボッコ」と言うのが相応しい扱いで、面白がっていいのか泣くべきか判断しかねます。
暴君だったらしいけれど、そこまで横暴なことをしてる印象がなかったし、王様視点で考えれば当然のことをしているんですよね。“人を襲う野獣”を安全の為に排除しようとするのは統治者としての仕事だし(証拠に、野獣が人に戻ると戦意が落ちる)、ベルを牢に入れるのは野獣に懐柔された危険分子だから。処刑しようとする訳でないし、求婚にしても、常にベルの意志を確認しています。
その上、人民の心が自分にないと分かると、王冠を自分から返却しています。
人の欲しいものを欲しがる嗜好は事実でしょうけれど、あの母親に育てられたのだから仕方ないとも思えます。
正直、母親想いで期待に応えたかっただけな善い子に解釈出来てしまうのです。もっと国民を苦しめているエピソードがあれば納得できたのですが、「二番手の悪役」としてはこれ以上描写出来なかったのでしょうか。
王様が更生して戻って来る話を書いてあげたい気持ちで一杯です。でも家臣団がこの人を忌み嫌ってるので、難しそうですね。野獣は帰国を許していたけれど、この人は祖国に戻らず亡くなる気がします。
ビジュアルは、ポスターやスチールの出来に不安でしたが、舞台ではちゃんとした衣装を誂えて貰えていて、格好良かったです。
振る舞いにノーブルさがあるので、高飛車で高慢な言い回しも似合ってました。

長女@星条海斗、次女@憧花ゆりのの二人は怪演。あくまで男役の女装である星条は受け狙いで正解ですが、娘役の憧花も体当たりの演技で笑わせてくれました。
しかし、商人の三人娘は全員同じ親から生まれた子でしょうに、妹を陥れようとするのは性格が悪過ぎませんか。善き仙女と妹君と言い、この作品は仲の悪い姉妹ばかりですね!

野獣に付き従う獣姿の家臣が多過ぎてウケました。王様の兵士は娘役含む村人で水増しされてるのに!
虎@明日海りおは、物語を語る役もあってかなり出番が多いのですが、あまり印象には残らず。
これで退団のMr.モンキー@桐生園加は、「踊って!」と言うベルの台詞があったので此処でガッツリ踊って貰えるかと期待したのですが、場所が銀橋だったため軽い内容で少し残念でした。

ショー「ONE −私が愛したものは…−」は、色々に展開出来そうなタイトルなのに、結局宝塚讃歌なのが少し残念。
色使いやら衣装やら大道具配置やらネタやら、演出の草野先生とは、相変わらず気が合いません。ロケットが序盤にあるなど、ショーのお約束的な構成を外した作りで、私は逆に乗り難かったです。でも大階段の斜め降りが二度楽しめたのは個人的に嬉しく、照明使いはプロの技だなと感心しました。
さて、これは龍真咲と明日海りおを個別認識してからの初めてショーですが、二人とも芝居は出来ても、ショーで一場面センターを務めるのは厳しいなと感じました。
特に龍がこんなにも踊れないとは知らず、衝撃的でした。踊れない人も「顔で踊る」と言う技術があれば何とか出来るのですが、キザリ方が弱いのか、あまり様になってない様子。二人のダンス「IN ONE」は辛かったです。
二番手以下のスター力不足の結果、トップスター二人のデュエットダンスの割合が増えているのかな。
上位三人の男役が全員歌える人なので、耳には安心感があるのですが、イマイチ派手さが足りないのです。最近は線の細い役者が多いから、馴染みのない組の印象はこんな物なのかしら。

復刻版DVDで、2001年の宝塚月組公演「血と砂」を観ました。

ブラスコ・イヴァニエス原作の「血と砂」に、主人公ファンの弟プルミタスと言うオリジナルキャラクターを追加したW主演用舞台作品。
一応、発売前に原作を読もうと手に取ったのですが、文体が古過ぎて数ページで挫折しました。映画も未見です。
一幕前半は展開がハイスピード過ぎて吃驚。二幕の遣る瀬無さに考えさせられます。
主人公たちのどちらも、身近な幸福を捨てて破滅に突き進んだと言う印象。当然、話の流れは暗く重いのですが、終盤に兄弟が和解する御陰で、悪い事ばかりの人生じゃなかったよね、と慰められます。しかし、公爵への復讐は果たさせてあげても良かったと思うし、やはり原作がなければハッピーエンドにしてあげたいところです。

全員に役が付いてるんじゃないかと思うくらい多数のキャラクターが登場しますが、夫々役者の魅力が生きていて、どの役も魅力的でした。
W主演の二人(汐美真帆大空祐飛)は、宛書きであることとオリジナルキャラの分深く書き込まれているので、弟プルミタスがちょっと得してる感じ。暗い憎悪の眼差しがチャームポイントと思いきや、終盤に零す「なぜ、またアレーナに立つの?」と言う台詞が不意打ちで可愛かったなぁ。上級生とW主演な為か、通常の主演作と違いどこか下級生っぽい顔が見えたのも面白かったです。
しかし、フィナーレの男二人デュエットでは、汐美真帆の方が元々ダンサーな分、自分の魅せ方に余裕がありますね。その汐美演じるフアンは、天狗になるわ家庭を顧みないわと、共感し難い格好悪い男なのですが、ドンニャの足元に縋り、泣いて助けを乞うシーンは揺さぶられて涙が出ました。
プルミタスを追うヤクザな刑事グァルディオラ@嘉月絵理は、初めて悪役を観ましたが、脇役とは言えない立派なスターですね。これが「色悪」と評される役柄なんでしょうね。
二役の紫城るいも、男役時代を観るのは初めて。チリーパは少年らしさを生かして好演だと思いましたが、フユエンテスはちょっと役に足りていない気がしました。衣装が身の丈に合ってないせいかな。衣装部の珍しい失敗だと思います。
ガラベエトオ@楠恵華は、フアンへの愛憎が入り交じる難しい芝居に感心。大変美味しい役でしたね。最後にフアンを送り出すシーンの演技は、正直カルメンの慟哭より胸に来るものがありました。
専科から出演の二人は巧く舞台を引き締めていましたが、特にぺスカデロ@磯野千尋は借金取りに追われる場末のマスターに身を堕とした姿が実に良い堕ち方で、納得の演技でした。
プログラムを見返さずにこれだけの役の名前が出て来る辺り、全体的にキャスティングが成功していると思うのですが、その最良手は、ドンニャ@西條三恵でしょう。正直決して美貌と言えないのですが、不思議な肉感があって、虚無的で、何とも言えずゾッとさせられます。二人の亡骸に薔薇を投げて「アディオス…」と言うシーンは鳥肌が立ちました 。

元がVHSビデオだけあって、DVD映像にしてはボケてますが、個人的には精度が良過ぎても夢が見られないと思っているので、あまり気になりませんでした。
ただ、「THE LAST PARTY」の時も同じようなことを言ったと思うのですが、重過ぎて何度も見返すのは辛いですね。等と言いつつ、今度はガラベエトオ視点で観たいかな、なんて考えています。

最近観たもので色々後から思い付いた事など。

花組「虞美人」の項羽。
真飛聖は熱演していたし、脚本上も「高潔過ぎて他人が付いて来られないタイプ」に変えられていて、主人公として成り立っていたと思います。そんな信念ある男が、その信念故に自滅すると言う筋書きは、私好みでもある筈。
その上で、でも項羽が格好良いとは思えなかったとつくづく感じます。
その原因を考えるに、恐らく、戦場で鬼神の如く強いと言う項羽の姿が、舞台上で示されなかったからではないでしょうか。何度も言葉では言われていたけれど、直接剣を抜いて人を斬るシーンは2回とも不意打ちだったし、後は見得を切る程度で、剣舞ダンスがあるわけでもなく、本当に強いと言う印象を受けなかったように思います。
このことは、「強いと何度書いても、描写でそれを見せないと本当に強くは感じてもらえない」と言う教訓として自作に生かしていきたいです。

「スカーレットピンパーネル」の役替わり。
龍真咲のショーヴランも、明日海りおのショーヴランも、それぞれの面白さがあったけれど、千秋楽を迎えた今思うのは、柚希礼音ショーヴラン(初演)と龍真咲アルマンの組み合わせが観てみたい、と言うことだったりします。
面白い取り合わせになるんじゃないでしょうか。

明日は宙組「トラファルガー/ファンキーサンシャイン」東京公演の初日。
残念ながら今仕事が忙しくなってしまい、観劇数は手持ちの土日チケット分以上増やせそうにありません。当然、初日も行けず。My初日はなんと10日後の19日です。
初見の時はショーに「通えないかも」と思ったけれど、しばらく離れて、公演写真などを観ていたらもの凄くリピートしたい気がしてきました。早く見にいける日がきて欲しい!
ライブ感を大切に、これから1ヶ月の公演を楽しみたいと思います。

月組公演「スカーレットピンパーネル」11:30回観劇(チケットセディナ貸切回)。
ショーヴラン役:明日海りお、アルマン役:龍真咲。
有難い事に、突然ですが観る事が出来ました。前日の公演SSが、実はこの前振りでした。

明日海ショーヴランは、マルグリットへの未練はあまり感じさせず、あくまで道具として彼女を利用する辺り、恋より革命、そして己の野心を見据えているように見えました。冷酷さの方が際立って、滲み出るような情念まではない、体温の低いショーヴラン。
やはり明日海は原作を読んで役作りに影響させているのかな?と勝手な印象を深めさせられます。
革命と恋を混同している龍ショーヴランより大人で、革命も恋も手に入れようとする柚希ショーヴランよりリアリスト、或いは諦めが良い。そんな印象でしょうか。
線は心配していたほど細くなかったですが、小柄なので、背を向けていると民衆に埋没しそうでした。かといって顔が見えると、今度は実年齢の若さが透けて見えて、序盤ロベスピエールと並んでの観劇シーンは、率直に言うと父子に見えました。
本人の実力、容貌に問題がなくても、一人芝居でない以上、カンパニー内の関係性って重要ですね。

Wキャストと言う事でどうしても比較になりますが、歌は全体に明日海の方が安心して聞けました。
歌唱力だけの問題でなく、キーの違いが出た結果かと思いますが、「マダムギロチン」「鷹のように」「栄光の日々」は明日海、「君はどこへ」「ひとかけらの勇気」は龍の得意範囲でしょうか。
逆に言うと、それだけ広い音域が求められる役だったと言うことで、難役だと改めて思います。
一方、台詞の声は不思議と龍の方が好きでした。何より「はっ」と言う低く深い受諾の一言が好みだったので。とは言え明日海も台詞は聞き取り易く、これは完全な好みの世界ですね。
この事で、話す声と歌う音域は必ずしも一致していないのか、と気付かされました。確かに、喋る声は低いのに歌うと高い、またはその逆と言うのはありますものね。勉強になりました。
動作は、明日海が歩く時は腰のサーベルを片手で固定して動かないようにしていましたよね。途中で指導があったのかも知れませんが、龍の時はブラブラさせてしまっていたような記憶があるので、その辺の細やかな気配りは観ていて嬉しいと感じました。全体に抑制が効いていたのは龍の方のようにも思えましたが、不思議ですね。
他の違いとしては、オペラボックスから出てくる時の身のこなしでしょうか。龍は長い足でひょいと一跨ぎした感じでしたが、明日海は登った塀から滑り落りるような印象。最後の蹴りもパーシーに届いていなかったから、この辺は身長差の問題ですね。
持って産まれたハンデは、今後諸先輩方を見習って克服して貰いたいです。

さて、役替わりで比重が大きいのは明らかにショーヴランですが、実は明日海ショーヴランより龍アルマンが面白すぎて、そちらに夢中でした。
全体の印象としては、同行のこたつきさんと「革命の最中に流れ弾で死んでいそう」だと合意。姉マルグリットが、あの馬鹿力でいつも弟を守っていたのかな。ピンパーネル団で唯一の平民なのに、なぜか一番貴族っぽい優雅な雰囲気がまた優男度を上げていました。
最高だったのは、2幕で鞭打たれたシーン。「あっ」と可憐な声を上げて物凄いオーバーアクションで床に倒れ伏したのには参って、思わず吹き出しました。明日海アルマンは、気を失うだけで、倒れはしなかったですよね。苦鳴も男らしかったし。
龍アルマンは台詞声が砂糖菓子のように甘く、弟全開で、ショーヴランを演じていた時のあの低音ボイスはどこへ消えたのか、と驚きました。
女装時はやはり三つ編みでしたが、明日海アルマンとは違うかつらに見えました。極太で男の女装感が強かった明日海に比べると、普通に可愛い娘仕様。
しかし、アルマンの髪型でフィナーレのサーベルは似合ってませんね。
また演技と関係ありませんが、サーベルダンスの途中、上手に待機するシーンで越乃リュウ組長と随分長いこと会話していて、今日の二人――ロベスピエールとアルマンでにこやかに話されると、その内容が気になりました。
それにしてもこのアルマン、気丈で自立したマリーと大変お似合いに見えました。娘役には、相手の男役の男ぶりを上げる娘役スキルなるものが取り沙汰されますが、同時に男役にも、組んだ娘役を可愛く見せるスキルがあるとすれば、正にその技を観た感です。

劇団の思惑に乗せられて、役替わりを思い切り楽しみましたが、やはり気になる事も。
パーシー@霧矢大夢が「ショーヴランを恋敵とは思ってない」という主旨の発言をしているインタビューがありましたが、確かに月組版ショーヴランは、ピンパーネル団の活動上の敵、というスタンスに納まってると思いました。
もっと存在感を出しても良い、出せる役だと思うのですが、パーシーとショーヴラン役者の経験値の差、そして役替わりと言う点からして、そこまで深まらなかったのかなぁと思ってしまいます。
機会を与えると言う意味では、役替わりも意義があると思いますが、ショーヴランはちょっと大役過ぎでは……。
どうせ役替わりするなら、星条海斗ショーヴランを観てみたかった気がします。

その他、役替わり以外で気になった事。
パーシー@霧矢大夢はちょっと声に掠れが。最終週突入ですから、最後まで喉の調子を労り整えつつ頑張って欲しいです。
一方マルグリット@蒼乃ゆきは、高音がもの凄く綺麗になってますね。ただ、一番肝の「貴方を見つめると」「忘れましょう」がまだ手子摺ってるので、もう一息と言う感じ。演技は前回感じたのと同様、キュートで好みです。
シャルル@愛希れいかは歌声の素朴さが味ですね。演技は初演と変わりありませんが、間違いない解釈で良いかと。
靴屋の妻ジャンヌ@美鳳あやが芝居巧者ですね。凄い恐さがありました。
結局個体認識できていませんが、ピンパーネル団の恋人たちがみんな可愛くなっている気がしました。
ラストシーン、グラフの写真等ではパーシーが黒手袋をしたままデイドリーム号に乗っていましたが、東京公演では手袋を取ってますね。二人が素手で握り合う様子は心温まるので、変更されて良かったと思います。

6/5公演アドリブネタです。


男はもう一度、手にした書状を読み直した。

――なお、本会は黒服以外の装いでご出席ください。

その一文は、プリンス・オブ・ウェールズ主催の仮面舞踏会の招待状の末尾に確かに記されていた。
事実を認めた瞬間、手にした招待状は、革命政府に対する挑戦状に変わった。
彼が負う極秘任務のためにも、祖国を代表する大使としても、この舞踏会を欠席する訳にはいかない。だが、公安委員である彼を招待しておきながらその制服を暗に拒絶する英国の卑劣さに、歯噛みしないでいられようか。
革命により国家としての体力を著しく消耗した祖国を、舞踏会に相応しい衣装も用意できないと嘲笑うつもりに違いない。そう思えば、耳の奥で嗤い声まで聞こえる。その声に眦を裂けば、あの不愉快な英国貴族の顔がはっきりと思い浮かんだ。
激しい怒りが全身を震わせたが、招待状を引き裂く寸前に理性が勝った。
英国と事を構えるのは今ではいけない。
いっそ、英語が理解できなかったふりをすることも考えられたが、それは彼自身の自尊心が頷くことを許さない。
ならば、誇りある制服を脱ぎ、場に相応しく、彼奴らが口出しできない衣装を選ぶことこそ、成すべきことだ。
ついに、彼は決意した。


かくして、総スパンのタキシードに羽根を背負った革命政府全権大使は、「あなた、本当にそんな服持ってたのね」とマルグリットから生暖かい眼差しを受け、パーシーの羽根の方が大きくて豪華なことに一層対抗心を燃やし……と言うもう一つの展開が思い浮かんだ貸切公演アドリブでした。
これに限らず、龍ショーヴランin英国はいじりたくなるキャラですね!
殿下絡みのネタもあるのですが、千秋楽までに書けるかな?