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非常に涼しくなりました。
日誌に載せるつもりで、猛暑をネタにしたAKC小咄を書いていたのですが、オチが決まらないまま夏は過ぎ、肌寒くなってきたので、お蔵入りしました。
せっかくなので内容の一部を残しておくと、「行動シミュレーション」の一貫で、「ルクティ教室の面々が猛暑日の日本に合宿にきたが、合宿場にエアコンはない。どう過ごすか」というお題。


 外出から戻ったイクスが扉を開けると、廊下に行き倒れがいた。
 一人は天を仰ぎ、もう一人は顔を地に伏せ、苦しい呻きをあげている。
 このような局面では、二次被害を防ぐため原因を探りつつ、退避または救護をするのが教本通りの対応だと思いつつ、イクスは左手に提げた荷を軽く持ち上げた。
「……アイス、買って来ましたよ」
 途端、廊下で涼をとっていた二人は生き返った。
 寝そべった体勢から存外元気に上半身を持ち上げたフォウルへ買い物袋を渡すと、横着にも手だけ持ち上げたロアンを引っ張り上げてやる。一瞬だけ姿勢をただした後輩は、しかし手を離すと壁に寄り添う形でずるずると沈んでいった。
 その代わりに、言葉だけ投げてくる。
「教室長ってば、朝の体操に見せ掛けてコンビニ寄ってたの?」
 イクスは出席スタンプを取り出すべきか一瞬だけ考えて、唇の端で笑った。
 失礼な物言いも、単に不満を溢したいだけだと分かっていると、腹は立たないものだ。
 その不平屋の後輩は、買い物袋の中身を確認すると、信じられない、と呟いた。
「これはアイスって言わないよ。試験管で凍らせた氷じゃん」
「いらないならオレが全部喰う」
 言うが早いか、フォウルは二本目の包装を破っている。慌ててロアンも体を起こし、アイス——あるいは氷——を手に取った。
「あ、リートの分は残してくださいよ」


半ば、耐久レースの様相を呈しています。

ちなみに、リートはイクスと一緒にラジオ体操に行った後、近所の子供たちに誘われて遊びに行ったので不在。意外と元気です。レイヴは図書館に避難。詩乃は現地到着した瞬間、リタイアしました。
ルクティ先生? きっとその辺で溶けています。

以下は、やり取り部分だけ。


「イクスは暑くないのか?」
「心頭滅却すれば火もまた涼し」
 と答えた瞬間、イクスは隙を作ったことに気付いて身構えた。
 案の定、二人は跳ねる勢いで起き上がった。
「よーし、火を起こせ」
「アイサー」
「やめてください」
 日頃は意見が合わないくせに、人の嫌がることをするときだけ結託するのだから困ったものだ。
「半分冗談ですよ。痩せ我慢は死に至りますからね」
「半分、本気かよ!?」
 ロアンが悲鳴を上げると、再び床に引っ繰り返った。
「自分の世界や院に閉じ籠っていては味わえない空気を、楽しもうと思っているだけだよ」
「それ、帰ったら詩乃に言えよ」
 よほど悔しかったのか、フォウルが恨めしそうに呟いた。


詩乃がいて、イクスの受け答えに割と余裕があって、なんだか全体に楽しそうなので、たぶん長編終了後の時間軸ではないかと思います。

ジグとファズの関係を理解しようとしたら、こうなりました。
【注意!】終盤のネタバレを含みます。


「どんなに憎んでも、ジグなら許してくれるような気がしていた」
「……なめられたもんだ」

 どう反応したらいいか、ジグにはわからなかった。
 何者をも許すような聖人君子でないことは、ファズが一番よく知っている。鈍感だから傷付かないと馬鹿にされているのなら、今こそ怒るべきだろうか。
 ふざけるなよ、と心の中で呟き、腹に力を入れる。
 だが——

 ファズはいつでも正しい。

 確かに、ジグはファズから恨みをぶつけられ、戸惑いもしたし、苦しんだが、憎み返すことはできなかった。それどころか、自分を恨むことで頼っていたのだと、あのファズの甘えを知って、今は喜んですらいる。
 気を抜くと笑顔になってしまいそうな自分を叱咤し、ジグは瓦礫を持ち上げることに専念した。


ジグもファズもお互いを好きすぎる…。

密かに三周目、突入。さすがに飽きて来たので、ここで中途半端に中断します。
現在地:ダリルシェイド地下水道脱出


 偶然知り合った子供がスタンたちの息子だとは、いかなる運命の悪戯だろう。
 言われてみれば、収まりの悪い金髪や零れ落ちそうなほど大きい碧眼は、父親の姿形をそのまま小さくしたようだった。
 もっとも、巨大レンズを盗もうとして捕まったという話だから、中身の方は、金のためなら手段を選ばず猪突する母親の影響を多分に受けているようだ。
 ——残念ながら、ジルクリストの知的な面は受け継がなかったらしい。


カイルの性格などを把握したときのジューダスの心情は、こんな感じですかね。

今回のグレードショップでは、難易度・称号、使用回数、エンチャント、スロット、ステキアイテム引継ぎ、GRADEアップ、経験値10倍、ガルド引継ぎを購入。
称号は入手済みなのですが、ハロルドの「勝手にスペクタクルズ」発動防止のため、図鑑も引き継いでおきました。
次回に回った残りグレードは8132。

経験値10倍の効果は凄まじく、ボス戦1回でレベルが8くらい上がりました。
現時点で、1周目の時にリアラたちが仲間になった時のレベルに達しています。最終的に、どこまで上がってしまうのかなぁ。

花組公演「愛と革命の詩−アンドレア・シェニエ−」SS


ジュール・モランが、年下の同志を尊重するのは、彼を敬愛しているとか、信頼しているとか、そんな温い感情とは無縁の理由である。
同志ジェラールは美しい。
飾りを取り払い、生身一つで汚泥の中に立ってなお、白々と輝いている。
モランが思うに、その清廉な美しさこそ、革命の旗手として最も重要な資質であった。
民衆は、その美しさに革命の正義を見る。革命への期待が消え失せつつあるいま、ジェラールの美しさが革命政府に与える正当性は貴重だ。それゆえ――
モランは徴発した地下新聞を手に取った。見出しは、革命政府に批判的な詩人が書いた記事である。近頃、彼の詩を指して、民衆はこんなことを言うらしい。
すなわち、高潔、清逸、美麗。
刈り取らねばならない。民衆が知る美しいものは、ジェラールだけで良い。
粛清予定者の中に詩人の名を書き入れたモランは、新聞を破り捨て長靴で踏み潰した。


明日、千秋楽。

月組公演「ルパン」SS。


 狩りは英国貴族の嗜みである。
 オックスフォード公の私有地にも、広大な狩猟場がある。毎年狩りの季節になると、公爵家の男や招待客が足蹴く通い、哀れなキツネたちを追い立てるのだ。だが、公爵の長子エドモンドが足を踏み入れたのは、これが初めてのことであった。
 最後にならなければ良いが――と一瞬心に浮かんだ弱気を、カーペットは直ぐに振り払った。
 彼の主人エドモンドは、生まれつき身体が弱く、それ以上に精神が薄弱である。それを恥じた家族から遠ざけられ、ろくな教育も受けずにこの歳まで長じてしまった。
 カーペットは愚鈍な主人に幾度も暗然たる思いを抱き、同じだけ感謝の念も抱いた。
 爵位を持たぬカーペットでも、エドモンドという青白い人形を操ることで世の中を動かせるかもしれない。野心は人生に彩りを与え、才覚を試す緊張は快感を生んだ。これほど面白いゲームが、他の主人の下で味わえるだろうか。
 その主人は、車から降りた位置のまま、オドオドと辺りを見回していた。馬に乗れず、犬を恐れるエドモンドは、狩猟地に来るのにも自動車である。格好が付かないこと甚だしいが、無理をさせて、また喘息を引き起こすよりマシだ。
 カーペットが主人を狩猟地へ連れてきたのは、このエドモンドに自信を持たせるためだった。エドモンドが冴えないのは持病のためで、それさえ克服できれば他の兄弟に劣るものでない——と。
 そんな幻想は、カーペット自身が信じていなかったけれど、必要なのは事実でない。


……と言う書き出しで、オックスフォード公(爵位継承前)とカーペットのお話を書いています。しかし意外に長くなりそうなので一旦この辺で公開。ちなみに、永遠に後編が出来ない可能性もあります。

自分の婚約披露宴で「カーペットが生きてここに居てくれたら」と嘆き悲しむオックスフォード公があまりに本気で、色々考えさせられました。
カーペットは、打算前提ですが、味噌っかすにされていた主人をよく守り立てていたのだろうと思います。だとすれば、エドモンドにとっては良い部下、親友だったのだと思います。

転じて、「テイルズオブジアビス」のガイが根から腹黒かったら、屋敷時代のルークとガイの人間関係がこうなっていた可能性もあるのか?と妄想させられました。