• タグ 『 宙組 』 の記事

大空祐飛さよなら特集4日目。
昨日の同時退団者発表を受けて、この公演イラストです。

10作目、中日劇場公演「仮面のロマネスク/Apasionado!! II」。
→公演詳細

捕食者

ヴァルモンとトゥールベル夫人は、お互いに捕食された関係なのかも知れないと思うようになりました。
勿論、最初はヴァルモンがトゥールベル夫人を「獲物」として選び、近付いたのです。しかしローズモンド邸の夜更け、トゥールベル夫人から懇願されたヴァルモンは彼女から離れようとして叶わず、夢中でしがみついてくる彼女の両手を優しく叩いて正気に返らせてやります。あの仕草は、「女を落とす」ための演技でなく、思わず出てしまった優しさのように感じます。
このトゥールベル夫人にしがみつかれた時から、ヴァルモンもまた彼女に捕われているのだと思います。だから、彼女が雲隠れすれば必死に探し、捨てた後も遣いを送り続けてしまう。
この舞台のヒロインはメルトゥイユ公爵夫人ですが、ヴァルモンにとって彼女は天上の女神であり、地上で心を預け合える半身はトゥールベル夫人の方だったのかもしれません……。

舞台上の時間が進むにつれて艶めくトゥールベル夫人と、その艶を引き出すヴァルモンの危険な魅力に目眩がする舞台でした。

大空祐飛さよなら特集3日目。

7作目、梅田シアタードラマシティ&日本青年館公演「ヴァレンチノ」。
→公演詳細

本日千秋楽を迎えた中日劇場公演ショー「Apasionado!! II」には、ルドルフ・ヴァレンチノをモチーフにした「熱視線」というワンシーンがあります。
そのことから、今回はミュージカル「ヴァレンチノ」に思いを飛ばすことにします。

震災による唐突な公演中止。そして、半年後の復活公演。
まるで舞台上で展開されるルディの死と再生のエンディングを思わせる、「奇跡」に彩られた舞台でした。

……なのに、描いたのがこのシーン(苦笑)。

10年前の男

DVD感想でも触れましたが、初日に反応に困ったシーンです。そして、描いてからアップする段階でも大いに躊躇させられました。

ところで、マフィアと言っても使い走りにされる街のチンピラ程度だった若造時代から、暗黒街のボスに上り詰めたデソウルが、当時の情婦を奪った男をそこまで恨んでいるものでしょうか?
ビアンカは既に彼の傍にいないようですから、もう終わった話のはず。
そして2人が顔を合わせたのは、10年前のほんの数分。普通なら、もう風化した記憶でしょう。ましてや、人の顔は年月で変わる物です。
実のところ、デソウルはこの10年、ルディのことなど意識していなかったと思います。
前日にクラブ21でテックスが気付き、デソウルも「ルドルフ・ヴァレンチノが来ていた」と知ったのでしょう。それで改めてルディの記事でも見た時に、ふと既視感があった。
……実のところ恨みなんてまったくないような、そのくらい偶然の接触がルディの人生を最後に谷に突き落としたのかもしれない。段々そう思えて来ました。

宝塚宙組東京特別公演「ロバート・キャパ―魂の記録―」15時回(千秋楽)を観劇。

中日への遠征と被ったため、この公演は見られないと思っていたのですが、千秋楽チケットが回って来たので観て来ました。
宙組の中堅以下の芝居巧者を集結させた感のある編成で、非常に手堅い作り。
好みは分かれそうですが、演出や1エピソードの長さなどもストレスなく観れて、充分佳作だと思います。
但し母親とのエピソードだけ、2回とも妙に唐突感がありました。特に1幕の「カメラマンなんて危険な仕事は辞めて」と言われるシーンは、その前に怪我をする等の前振りが必要だったのでは。
また「崩れ落ちる兵士」と「ゲルニカ」が力強い分、ラストは「これで幕切れ?」と呆気なく感じてしまうのが少し勿体なかったです。この辺は、伝記物の限界ですかね。

役は、主演コンビ以外のスターにこれと言った役がない状態で残念でした。
特にチーキ@春風弥里は勿体ない使われ方。
逆に、フェデリコ@鳳樹いちシム@星吹彩翔は、非常に美味しい役で、観られて良かったです。
フェデリコは全力で泣かせに来る芝居だったので、心の中で「死亡フラグ立て過ぎだよ!」と突っ込みつつも泣きました。シムは、花組「舞姫」での日向燦を彷彿とさせるドジっ子眼鏡男子で、非常に可愛かったです。
アンリ@蓮水ゆうやも良かったですが、シムとコンビ扱いなので、ちょっと割を食った感。

ピカソ@風莉じんマリー=テレーズ@愛花ちさきヴァンサン@蒼羽りくなどは、出番は限られていても芝居を楽しんでいるのが伝わってきました。
コーネル@桜木みなとは、少し体型が変わりましたね。「クラシコ・イタリアーノ」の時はしゅっとして格好よかったのですが……

ロバート・キャパ@凰稀かなめは、「自分」があるのかないのか、ちょっと分かり難い男。フェデリコやゲルダに言われて物事を決めてばかりで、意志が薄弱に感じました。まぁ、その辺は脚本のせいで、演技は主演として堂々としたものでした。
初ヒロインのゲルダ@伶美うららは、及第点かな、と思いました。脚本段階で既に知的で魅力ある女性なので、演りやすかったのではないでしょうか。
初めて台詞や歌を意識して聞きましたが、白羽ゆりに似てますね。良い声だと思います。高音が出ないのだけがネックですね。

フィナーレでは、男役群舞で4人口が春風、蓮水、鳳樹、蒼羽。誰を観るべきか迷って困りました。
蓮水除く「ダンサー」と称される3人が、みんな微妙に傾向の違うダンサーなので面白かったです。春風はタメて焦らして格好付ける踊り。鳳樹は、爪先の先まで力が入っていて、一番教科書通りというイメージです。蒼羽は優雅。例えるならば、1人だけ秒間60フレーム処理(笑)。そして秘かに顔で踊るところも好きです。

最後の曲に手拍子が入り、出演者個別に拍手が出来なかったのが残念でした。
ただ、カーテンコールで春風からの異動挨拶がありました。涙声になっていましたが、顔は最後まで笑顔で、10年育てられた宙組と宙組ファンから離れるのは寂しいが、花組でも頑張るという内容でした。
この時に盛大な拍手で送り出すことができて、ホッとしました。花組での活躍を祈っています。

最後に少し自分語りをしますが、私の身内にもカメラマンがいます。
仕事の報酬を受け取る為に客先へ出向く時に持ち金がなく、カメラを質に入れて電車賃を借りたという話を聞いたことがあります。そのため、冒頭のライカを質に入れるエピソードには少しニヤっとしました。

宝塚宙組中日劇場公演「仮面のロマネスク/Apasionado!! II」2/18 16時30分回、2/19 11時回を観劇。
2日連続で見て、遠征後に本稿を書いているため、1回目と2回目の感想をまとめることにします。また、プログラム未購入のため、記憶に頼っております。DVD発売後に詳しい感想を書きたいですね。

初めての中日劇場。
劇場のある中日ビルは古い構造ですが、入口前に待合所があることや、適切な手洗いの数と空室が分かる看板方式、豊富な売店など、博多座に通じるものがあって良い地方劇場だと思います。また、場内はステージに対して客席が比較的コンパクトで、端席でも見切れることが余りないようです。反面、音響は少し弱い気がしました。

で、肝心の舞台感想です。
まず、ミュージカル「仮面のロマネスク」。
原作が発禁本というだけあって、大幅に宝塚ナイズされても尚、耽美で退廃で妖艶の世界でした。
役が多いため下級生までフル稼働で、転換も多く、初見だと話を追うのに少し疲れましたし、多少話が飛んでいるような箇所も感じましたが、全体の展開が分かっている2回目は非常にのめり込めました。
最後は、メルトゥイユ公爵夫人の台詞「楽しかったわ」に気付けば涙が流れていました。ラストシーンで、1時間30分のドラマのすべてが昇華される感じがします。

ざっとしたキャスト感想は下記の通り。全体的に、隙のない配役でどのキャストも適役でした。
ヴァルモン@大空祐飛は、クールな放蕩児に見えて実は熱い血が流れているキャラクターでした。行動は酷いのですが、仮面と本当の自分が分からなくなっているような頼りなさもあり、許してしまいます。あんなに迫られたら、堕ちるわ。
メルトゥイユ公爵夫人@野々すみ花は、正直言って「貴婦人」「高嶺の花」という柄ではないのですが、演技で捩じ伏せた感。能面だけれど、瞳に情念があり、視線の動かし方で秘かな心の内が伝わって来ました。
豪奢なドレスが次々登場するのも楽しいところ。白ブラウスと朱色のスカートの衣装が少し女学生調で好きです。
ダンスニー男爵@北翔海莉は、ある意味いつもの北翔海莉。コメディリリーフとしてガンガン客席を笑わせていました。音響の悪さをまったく苦としない歌声に酔いしれました。
トゥールベル夫人@藤咲えり、最初は「あんな人」と言われるように地味な印象だけれど、ヴァルモンが迫る度に花が綻び、色気が出てくるのが素晴らしかったです。今公演で一番の功労者だと思います。
セシル@すみれ乃麗は、歌が大幅改善されて声量がついたので驚きました。
ジェルクール伯爵@悠未ひろの発言は、女性の視点で非常にムッとさせられて、役としては正しい感じ。
ロベール@十輝いりすは執事姿も麗しく、優しく有能な美味しい役。公爵邸を去る女中が言う「ロベールさんもお元気で」の台詞に、異動する十輝を配役している妙がありました。
ただ、プロローグで「登場人物の紹介をロベールから」とダンスニーから言われているのに、一切紹介していないですよね(笑)。
アゾラン@凪七瑠海は、等身大の役で似合っていました。ちょっと蓮っ葉だけれど、主人の事が好きなのも可愛かったです。
ベルロッシュ@鳳翔大の美貌を生かした役。台詞は非常に少ないのですが、メルトゥイユ公爵夫人への視線がすべてを語っていました。

ショー「Apasionado!! II」。
再演にあたって、新規参加役者にあわせた場面追加や変更がありましたが、基本路線は博多座版「Apasionado!! II」の通り。
歌で何人か苦言を呈したい人はいましたが、プロローグからフィナーレまで、とにかく最高の盛り上がりでした!

「熱視線」は「ヴァレンチノ」の配役を流用して、ナターシャ@七海ひろき。ちょっとしたファンサービスで嬉しかったですが、流石に後半の歌のキーが辛そうでした。
ソファに横たわったルディが、まるで膝を抱えてる子供に見えました。博多座公演の時は、寝そべってる大人だと思いました。その姿勢は変わらないのに、あの「ヴァレンチノ」のルディがもう一度現れたようでドキっとしました。
「熱帯夜」の女装軍団、初参加組のヴィオレッタ@悠未ひろは割と想像通り、ペンサミエント@凪七瑠海は思わずオペラでずっと覗き続けた愛らしさでした。ペンサミエントは博多座では珠洲春希が担当した箇所で、そちらもゴージャス美女でしたし、秘かな美貌枠だったんですね。カーネーション@鳳翔大も改良した乱れ鬘で色っぽさを増していましたが、個人的好みではペンサミエントに一票。
チューリップ@十輝いりすの髪型は2回とも猫耳でした。
黒薔薇@寿つかさの濃厚なウィンクは名古屋でも大ウケ。
そして女装のまま総踊りで客席に降りてくれるのは最高のサービスでした。
ちなみに、18日は純矢ちとせの赤い襟が外れるハプニングがあり、片手で押さえながら踊っていました。衣装関係のハプニングは珍しいですね。

新場面関係では、中詰め後、悠未ひろが客席から登場する新場面(ジャングル)。ホットだし、悠未ひろの意外に自在な声を楽しめて面白かったです。ここは女性陣も非常に挑発的な衣装と振り付けで、ドギマギしました。
フィナーレのデュエットダンスは、新曲に変更。少し攻撃的に挑み合うような2人の世界に変わっていました。尺が長めで、たっぷり2人の「演技」としてのデュエットダンスを堪能することが出来ました。

楽しい2公演、これが本公演でも良かったくらいの濃密な舞台でした。

大空祐飛さよなら特集2日目。

いきなり時系列を飛ばして6作目、宝塚大劇場&東京宝塚劇場公演「誰がために鐘は鳴る」。
→公演詳細

2番手・蘭寿とむとようやく組み合う芝居ができた、と思った1本。
持ち味、芸風の違いから「異種格闘」なんて言われていたらしいですが、私は大空&蘭寿コンビで観たいものが色々ありました。
観始めた当初は古典過ぎて退屈だと思ったものですが、どんどん深化して号泣させられた素晴らしい舞台でした。楽曲も気に入っています。

と言うわけで、イラストは当然このシーンです。

友情

ちなみにこの絵は、ロバート側から描き出してしまったため、描き終わる時には右手がこすれてロバートが黒ずんでしまいました。
御陰で、描いた時間より修正に割いた時間の方が長かったです。